セミナー講師としてご招待を受ける会場で、他の講師の方とご一緒になることが多いが、その中には厚労省の方も居られる。
その場合、控え室等で雑談になることもあって、当然そこでは介護サービスの現況についての話題や、介護保険制度全般に関する話題に及ぶことも多い。しかしそれはセミナーで講義する内容より、ずっと砕けた話になることが常で、通り一遍ではない話になることがある。
そんな中で、厚労省老健局の方々が、今どのようなことを考えているのかということが見えてきたりして、僕にとってはそうした場面が、非常に貴重な場面となっている。
そのような中で感じることのひとつに、老健局の方々の、「小規模多機能型居宅介護」に対する評価は高いということである。それは、「小規模多機能型居宅介護のソフトは優れている。」という表現などで語られることが多い。そうであれば今後も様々な形で、小規模多機能居宅介護を広く普及させようとする対策がとられるのではないかという予測も立てられるわけで、少なくとも次期報酬改定で、小規模多機能居宅介護や看護小規模多機能居宅介護については報酬が削減されるという方向性にはならないだろうと予測している。
ところで「介護給付費実態調査」によると、今年4月の時点で、小規模多機能型居宅介護の事業所数は全国に4984ヵ所、利用者は8万5200人となっている。そして全体のサービス費用に占める割合は2.3%にとどまっている。これは厚労省老健局が目指すこのサービスの普及状況としては、かなり低い数字であるということが言え、あらたな普及対策が模索されることになることは明らかである。
その普及策のひとつが、今後介護給付費分科会で議論の遡上に載せられる予定になっている、小規模多機能型居宅介護の利用者のケアマネジメントを、外部のケアマネジャーが担えるようにする見直し策である。
その効果としては、他の居宅サービスを利用していた人が、小規模多機能型居宅介護サービスに移行しても、以前からの担当ケアマネが替わらなくてよければ、信頼関係をつくってきたケアマネが継続して関われるようになるため、利用者の理解を得やすくなるとされている。
さらに厚労省は、「現行の制度では、担当を続けられなくなる居宅のケアマネが紹介するのをためらってしまう」としている。
つまり居宅介護支援事業所からすれば、小規模多機能型居宅介護の適応である利用者が居た場合でも、そちらに移行すれば、結果的にそれは顧客を一人失うことになるために、小規模多機能型居宅介護につなげないケースもかなりあり、それが小規模多機能型居宅介護サービスの普及を阻害させる要素になっていると考えているわけである。
現行のルールでは、小規模多機能型居宅介護には介護支援専門員の配置義務があり、同サービスの登録者については、小規模多機能型居宅介護以外の居宅サービスを含めた「ケアプラン」の作成や、当該居宅サービスを含めた「給付管理票」の作成・国保連への提出など、居宅介護支援事業所の介護支援専門員が通常行っている業務を、小規模多機能型居宅介護の介護支援専門員が行う必要があることになっている。
その理由は、小規模多機能型居宅介護は、通いを中心として、利用者の様態や希望に応じて、随時訪問や宿泊を組み合わせてサービスを提供するという弾力的なサービス提供が基本であり、利用者はこれらに加えてケアプランに位置付けたサービスを利用することになることになり、利用者のケアプランと小規模多機能型居宅介護計画は密接に関連することから、両者を一括して作成する介護支援専門員の配置を義務付けて、その者が計画担当者になる必要があるとされているのである。
よって外部の居宅介護支援事業所のケアマネが、小規模多機能型居宅介護に移行した利用者のケアプランを引き続き作成するといっても、移行先の小規模多機能型居宅介護が、どのような弾力的サービスを提供し得るかということを具体的に理解できなければ、移行後の小規模多機能居宅介護計画作成は不可能である。
そのため、今回議論の遡上に載せられる見直し案とは、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが、小規模多機能型居宅介護の仕事を兼務できるようにするという内容だ。
つまり小規模居宅介護支援事業所に移行後も、従前の居宅介護支援事業所の担当ケアマネが継続して担当できるケースとは、居宅介護支援事業所と小規模多機能型居宅介護が、同一法人の事業所で、兼務可能な条件に限られるように読める。
そうであれば、その対象はずいぶん限られたものになるし、国がメリットとしている部分は、あまり効果としては実感できるものではないように思う。
それは単に、居宅介護支援事業所と小規模多機能居宅介護事業所の兼務CMという形態を奨励するだけで、小規模多機能居宅介護の普及策としては、ずいぶん的外れなものであるとしか思えない。
それだけではなく、全く法人が異なる外部の居宅介護支援事業所のケアマネジャーのケースについては、小規模多機能型居宅介護に移行後も、従前からの担当ケアマネが引き続き、小規模多機能型居宅介護計画を担当できるとすれば、それはそれで問題があるわけで、それぞれの事業所でサービス提供方法や対応能力に差がある小規模多機能型居宅介護サービスの細かな内容に踏み込んでプランニングする必要がある、小規模多機能型居宅介護計画を、所属事業者の異なる外部の介護支援専門員が計画できるのかといえば、それは困難だろうという結論しかみちびきだせない。
そういう意味で、この議論の方向性は、国と現場の思惑がかみ合わず、非現実的な議論とならざるを得ないような気がしてならない。
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