10月21日に開催された「経済財政諮問会議」で、学習院大学の伊藤元重教授ら4人の民間議員が、最新のテクノロジーを活かした見守り機器やロボットを介護の現場に普及させるため、介護報酬に新たな加算を創設して導入を促すべきだと政府に提言した。
そして提言を受けた安倍首相は、具体化に向けた検討を進めるよう塩崎厚生労働相に指示したと報道されている。
この狙いはサービスの効率化や職員の負担軽減であり、今後の高齢化や人手不足に対応するために欠かせないとされているが、その見方は眉唾である。
介護ロボットの導入で、職員の負担軽減・業務省力化が図れるというエビデンスなど存在しない。何度か指摘しているように、実際の介護現場で、「使える」介護ロボットは驚くほど少ない。
(※参照:現状の介護ロボットに過度の期待を寄せてはならない ・ 介護ロボットとITは人材不足を補う手立てになるか ・ 介護ロボットによる業務省力化=人手不足の解消の図式は成立しない)
一番使える介護ロボットは、下肢筋力等が衰えた人自らが装着して歩行支援するロボットだろうと思うが、これとて使いこなせる人と、そうではない人に分かれてしまう。使いこなせない人にとっては、それは粗大ごみに過ぎない。
ましてや介護者が装着して、介護行為を手伝うロボットなど、ある特定場面の、ある特定個人に対して有効な場合があっても、そのマッチングを探すことのほうが難しいことが多く、機器使用に習熟する手間、それに伴うリスクマネージメントや機械の保管管理・メンテナンスなど、総合的に考えると、業務は省力化されるどころか増える可能性が高い。しかも使いこなせない場面が多々生まれるのは明白である。
少なくともロボット導入前に必要なかった業務が、ロボット導入後に増えることは確実なので、引き算だけではなく、足し算とセットで業務を考えないと、省力化できたかどうかは測定できない。
介護ロボットの分野では、日本が世界一のテクノロジーを持っているそうだが、それは世界中が様々な介護ロボットを製作して、性能技術を競っての結果ではない。単に日本が先行して介護ロボットの開発に取り組んでいるに過ぎず、介護現場でロボットが、人に替わって戦力になるというエビデンスを、この国が世界に先駆けて示しているという事実もない。
いうなれば周りの技術レベルが低いから、世界一という称号を得ているようなもので、人に替わるロボットを開発した結果ではないのである。
介護報酬の加算というのは、ある意味アウトカム評価であって、算定要件をクリアすることで、より品質の高いサービスが実現するという意味であるが、現状から言えば、介護ロボット導入による介護が、人手をかけて提供するサービスより優れているともいえない。
そんな不確かなものに加算を算定してよいのだろうか。しかもそうした加算が導入される財源は、ロボットを導入していない施設のサービス費から費用を差し引く可能性が高い。場合によってそれは、離職率が低い、人が集まる良いサービスを実現している職場かもしれないのだ。そういう施設が評価されず、ロボットを購入したという事実だけを評価する加算など本来あってはならない。
経済財政諮問会議委員も、自分が実際に介護現場でロボットを使って、利用者への支援ができるかどうか試してから提言しろといいたい。
反応が早い安倍首相に関して言えば、アベノミクスを成功に結び付ける経済対策として効果があると考えての対応だろう。もっと純粋に日本の介護の現況を鑑みる視点からの、介護報酬改定を考えてもらいたい。
現時点で必要なことは、介護ロボット導入に関する加算ではない。
今求められることは、介護ロボットが本当に、業務省力化に繋がるのか、繋がるとしたらどのような介護ロボットを、どのような場面で使用することが有効なのかという検証作業である。
そうであれば、そうした検証作業を介護現場で進めるために、この部分に補助制度を設けて、多くの介護現場で、実際にロボットを導入した介護サービスを展開することである。
それが行われてはじめて、介護ロボット導入による介護サービスというエビデンスが生まれる可能性がでてくるのだ。
それをせずした介護ロボット導入加算は、時期尚早であるし、介護サービスの品質に結び付かず、制度をいびつな形にするものでしかないといいたい。
※もう一つのブログ「masaの血と骨と肉」、毎朝就業前に更新しています。お暇なときに覗きに来て下さい。※グルメブログランキングの文字を「プチ」っと押していただければありがたいです。
北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。
「介護の詩・明日へつなぐ言葉」送料無料のインターネットでのお申し込みはこちらからお願いします。
「人を語らずして介護を語るな 全3シリーズ」の楽天ブックスからの購入はこちらから。(送料無料です。)
おめでとうございます
痺れました。
広島は中田の逆鱗に触れてしまいましたね。
それにしても、大谷君は凄すぎます。
決勝は広島球場で確定しましたね。