三重県四日市市の特養で、利用者虐待が発覚した。

要介護度5で寝たきりだった母親の体にあざができていることに気づいた息子さんが、部屋にカメラをセットして職員が介護している様子を隠しどった映像には、50代の女性職員が夜勤勤務中に、1人部屋に入所する被害女性に対し、「早く死んだらいいのに」などと言いながらほおを平手で打ったり、枕で顔をたたいたり、枕カバーで顔を覆うなどの行為が映し出されていたという。

加害者は、施設の内部調査に対し、「魔が差した。ストレスが重なって、ついやってしまった。」と語っているというが、ストレスが行為の理由にされること自体に納得がいかない。そもそもストレスの全くない職業など存在しないし、介護の職業にストレスを持ったとしても、そのはけ口が物言えぬ利用者に向けられること自体が異常なことであり、本来それは理由として成立しないと考えるのが正常感覚である。

こうした報道から、介護という職業が、他の職業に比してストレスが異常に多いと思われて、そのストレスのはけ口が利用者虐待に結びつくのも仕方ないと考える風潮が生まれることのほうが恐ろしいと思う。

その恐ろしさに気が付かず、虐待も仕方ないと考えるような人は、即刻介護の職業の場から去っていただきたい。全産業で人手不足感があるのだから、そのような考え方の人が介護の場に固執する必要はなく、人が相手ではない商売の鞍替えすべきであり、そのことが世のため人のため、自分のためである。

介護の仕事とは重労働であることは間違いないが、正常の感覚の持ち主ならば、その中に人の幸せにかかわることができるるという誇りを感じ、人の笑顔を引き出すことに喜びを見出し、モチベーションが上がる職業だ。

そういう職業であるということを伝えるのが管理者の役割であり、そのための学びの場を創りだす責任と義務も管理業務の中に含まれているのだ。そういう当然のことをしないでおいて、数合わせの採用を繰り返すことが、虐待につながる感覚麻痺を生み、モチベーションとスキルの高い職員のバーンアウトを助長するのである。

人手不足の時代だからこそ、職員採用はより慎重に行い、向かない人には直接介護業務を行わせず、折を見て肩たたきがあってしかるべきと考えつつ、内部の教育体制をシッカリと構築する介護サービス経営が求めあっれるのである。

その中で心しておかねばならないことは、今回の虐待発覚のきっかけになった、家族による隠し撮りは確実に増えるということだ。振り返れば、昨年のアミーユ川崎幸町の暴言虐待も、家族の隠し撮り映像が確たる証拠となって存在しているし、過去にも何度か隠し撮りで虐待が発覚したケースがある。

スマートフォンや、デジカメが普及して性能もどんどん良くなっている今日、こうした機器を利用して、自分の家族が日ごろ、見えない場所でどんな介護を受けているのかを確認したいと思うのは人情であり、もっともなことだ。

それは虐待が疑われるケースのみならず、単なる確認という意味でも隠し撮られる可能性はないとも言えない。

僕たちはその様な映像を家族が撮って確認したいと考えることも受容して、むしろそのことは当然であると考えて、家族が隠し撮りをすることで安心できるならそれはそれでよいだろうと考えて、常に自分の職場での姿を撮影されても恥ずかしくない仕事をすればよいだけのことである。

僕は今年の3月まで特養の総合施設長という立場であったために、そこでは常に職場全体への教育的指導を行う立場であったが、その際には、「仕事をするときには、常に自らの心の中にカメラを取り付けて、心のビデオに自分を映して振り返って恥ずかしくない仕事をすべし」と指導していた。

今回の虐待の現場となった四日市市は、再来週僕が「本音の介護〜現状とこれから」というテーマで講演を行う場所である。
四日市トークバトル
上の画像は、その際のチラシであるが、たまたまその場所で、このような虐待事案が発覚した。10/16に四日市商工会議所ホールでお話しする際には、本音でこうしたことを繰り返さない介護を語らねばならないだろう。

介護の仕事は、直接介護の仕事であればあるほど、利用者と1対1の場面が生まれ、そこではどんなに若くて経験がない職員であろうと、自分の心ひとつで何事も蹴ってできるという場面が生まれる。神のごとく、悪魔のごとく、一人の判断で決定できるのが介護の仕事の一面でもある。

そのことの重大さを知りなさい。神のごとく決められることの恐ろしさを知りなさい。天使にも悪魔にもなれることを恐れ、謙虚になりなさい。

そんなメッセージが伝われば幸いである。
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