23日に開催された社会保障審議会・介護保険部会では、居宅介護支援費の特定事業所集中減算について、見直しを求める強い声が挙がり、厚労省も「介護報酬改定にあわせて検討する」と明言した。
つまり厚労省も、その見直しを議論の遡上に挙げたという意味で、現在のルールがそのまま継続される可能性は低くなったと考えてよいのではないだろうか。
もともと福祉系3サービスに限定して始まったこの減算ルールが、ケアマネジメントに質の担保になっているのかという議論も検証も行われないまま、前回の報酬改定時に、減算適用の基準となる事業所の偏りの割合(集中割合)を90%から80%へ引き下げたうえで、その対象を全サービスに拡大したことによって、一気にその不満が高まったといえる。
23日の部会では、日本医師会の鈴木邦彦常任理事が、「効果の乏しい非常に不合理な仕組み。廃止すべき」と厚労省に強い不満をぶつけたそうであるが、福祉系3サービスに限定適用されていた際には、このルールに何の関心も示さなかった医師会が、自らの領域に減算ルールが及んできたことではじめて不満の声を挙げているのは、いかにこの部会が、当事者意識によってしか見直しの視点が提起されないかという証明で、利害関係が異なったり、重なり合ったりする当事者団体の委員を選任して運営することの限界を露呈しているといってよいであろう。
もっと滑稽なのは、日本介護支援専門員協会の姿勢である。
当日、日本介護支援専門員協会の鷲見よしみ会長も、「現場を混乱させている。有効ではない」と断じて再考を求め、減算ルール反対の意見書まで提出している。
しかし平成22年8月30日の介護保険部会では、同協会の前会長が、その内容と正反対の、「減算ルール大賛成」の意見を述べている。
その発言内容は、議事録によると、「事業者併設サービスの集中減算についてでございますが、今は、90%で集中減算ですね。90%以上行きますと、集中減算を受けることになりますが、この90%をどんどん下げていくということで、例えば70%とか、会員からのアンケートをとりましたら、50%という意見もあったところであります。ただし、地域の実情に配慮する必要があると思います。また、関連して、集中減算対象サービスは、現在、訪問介護、通所介護、福祉用具貸与事業、この3種のみに適用されております。これを、もっとほかのサービスにも広げていって、地域のサービスをうまくつないでいくという、こういうことを考えるべきだと思います。」という内容である。
これは個人の意見ではなく、介護保険部会の委員としての発言なのだから、協会は決して無関係ではいられない。そうであればこうした発言を過去に展開していたという矛盾を明らかにし、謝罪した上で、あらためて反対論を唱えるべきである。そうしない限り、どんなに立派な意見書をだしたとしても、日和見主義との謗りを受けても仕方がないだろう。
この減算ルールについては、僕は福祉系3サービスに限定されていた当時から反対論者であり、1年以上前にも、「本末転倒の減算ルールは即刻廃止せよ」という記事で、廃止の提言をしていたところである。
そもそも、利用者にとってもっとも適したサービス事業所を選ぼうとすれば、ホスピタリティ意識が高いと思われる事業所を集中的に選択するのは当然で、それは当該減算ルールを適用しない、「正当な理由」としては通用しない感覚的な問題であることも多いのである。しかしそうしたフィーリングも、ケアマネジメントのセンスとしては重要な要素になるのであって、もともと縛りをかけなければ、ケアマネジャーはサービス事業者と結託して、利益誘導のために、利用する事業所が偏るだろうという性悪説ルールは問題なのである。
利益誘導を問題視するならば、特定事業所集中という事象のみを見るのではなく、中立独立で単独運営できない居宅介護支援費の構造自体を問題視すべきなのである。
利用者の意向を無視した、サービス事業所選びがいつまで続けられるというのだろうか。利用者もそれほど馬鹿ではないし、お人よしではない。
そのような当然のことを考えても、この減算ルールはなくして問題ない。
厚労省も、会計検査院の勧告を受けて、はじめて見直し機運を感ずることに恥を知ってほしいと思う。
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これは様々な意味で介護保険のあり方として考えさせられます。
さてさて