介護保険法の中に、施設入所者の住所をどこに定めるかという規定はない。

しかし特養の場合は、措置時代からの規定に基づいて、原則特養に利用者の住所を定めるのが原則とされている。その根拠は、とても古い通知であるが、昭和47年3月31日付け国民健康保険課長通知「住所の取扱いについて」である。

1(3)児童福祉施設以外の社会福祉施設に入所する者の場合
 それらの施設に、将来に向かって1年以上居住することが当該施設の長によって認められる場合(文書によることを要しない。)を除き、原則として家族の居住地に住所がある。ただし、老人福祉施設に入所する者については、通常当該施設に1年以上居住することが予想されそこに住所があると考えられるので、当該施設の長の認定は必要がないこと。


↑これに基づき特養は1年以上居住することが当然予想されるので、原則施設に住所を移すというふうに取り扱われてきている

ただしこれはあくまで原則であって、特養利用者の住所を施設に定めおくような積極的な指導が行われているわけではないので、もともとの住所地など特養以外に住所を置いている利用者は、実際には存在するわけである。しかしその数は少なく、特養に住民票を移動している人の方が多いと思われる。

一方、老健や介護療養型医療施設は、居所ではないと考えられており、そこに住所を移すということは行われないのが通常の取り扱いだ。ほかにまったく住所を置く場所なない場合に限って、例外的に住民票を施設に移すことがあっても、それは極めて異例な取り扱いとされているものと思える。

そのため老健施設の入所者については、老健の住所地以外の市町村に居所を置きながら、老健を利用している人が珍しくない。よって行政手続きも、施設所在地のみならず、広域的な対応が必要となり、老健の相談援助職員は、顔見知りではない遠隔地の行政職員とやり取りをする場面が、特養よりははるかに多くなる。

そのため老健の相談援助職員は、各地のローカルルールや、その市町村独自の考え方にに触れる機会が多く、時にはその対応に戸惑うことが多いともいえる。

先日道内のとある行政機関から、生活保護の「保護券」の発行に関わる連絡があり、介護保険証が更新された場合、その写しがないと新たな保護券が発行できないので、写しを送ってほしいという依頼があった。

その依頼自体は特段の問題となるものではなく、写しを送ることも別段手間ではないが、たまたまその利用者の保険証は、更新手続き中で、認定が下りたという連絡はあったが、保険証はまだ送られてきておらず、保険者の発行を待っているところだった。

ということは、その保険証が送られてくるのを待って写しをとり、生活保護担当課に送るより、問い合わせのあった行政機関の同じ庁内なのだから、保護課から介護保険課に問い合わせて処理することはできないのかと尋ねた。するとそういうシステムはないので、できないとあっさり断られた。

こうしたことでいちいち腹を立てたり、ごねたりするのは時間の無駄なので、そうですかということで、その後その行政機関の介護保険課から送られてきた保険証をコピーして、FAXで同じ行政機関の生活保護課に送ったが、何とも無駄なことをしているなと感じたものである。

介護保険制度を持続するために、求められている地域包括ケアシステムの構築には、多職種協働の取り組みが不可欠で、それを推進する役割りを持つのが、各市町村の地域包括ケアセンターであると思うが、それは一部門の取り組みで終わるわけがなく、地域全体でそのシステムの構築に協力して取り組んでいかなければならない。

その中で旗振り役の地域行政は、他職種協働の連携体制の構築のために、行政組織を挙げて取り組んでいく必要があり、「先ず隗より始めよ」ということから鑑みると、行政組織の縦割り行政を打ち破った取り組みが求められるのではないだろうか。

そんな時代に、このような杓子行儀な対応に終始し、縦割りの対応が住民の不利益ではないかと考えることもなく、システムとして当たり前に考え、自分の視野範囲の中だけで、淡々と事務的処理に終始する行政職員が存在することにうすら寒さを覚えたりする。

地域包括ケアシステムは、システムだけでは運用できず、多様な職種の連携が求められ、そこにおける他職種連携は、システムではなく人間関係が基盤になる。そうした中でその旗振り役が、いつまでも縦割りである限り、このシステムの運用はうまくいかないだろう。

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