改正社会福祉法では、社会福祉法人の経営組織のガバナンス強化が求められている。

しかしその意味を取り違えてはならず、ガバナンス強化そのものが目的であるといことではなく、ガバナンスを強化することで、より地域社会に貢献する社会福祉法人となることが期待されているわけであり、その先に強固なコンプライアンス意識が不可欠になるものである。

昨今の社会福祉法人批判とは何かということを考えると、理事長一族の身勝手経営に代表されるような個人商店的な経営で、事業規模零細な社会福祉法人が過剰利益を得ているというバッシングであるということを念頭に置くべきである。

いわゆる「内部留保批判」にしても、それは社会福祉法人が行政事務の受託的な業務だけを行って、公費や介護保険料を財源とする費用を受け取っているだけで大きな利益を挙げているにもかかわらず、収益を溜め込んで社会に還元していないという論理展開の結果である。

つまり社会福祉法人といっても、介護施設運営をするだけで、法人経営をしていないじゃないか=社会貢献していないじゃないかという批判なのである。

そうした批判傾向は、社会福祉法人が過度な利益を得ているかのような偏向報道によっても助長されているが、何度か指摘しているように、それらの偏向報道が指摘する、一法人平均3億円とされている内部留保金には、本体事業に使っている建物や土地の資産額や、介護給付費が2月遅れで支払われるために、あらかじめ2月分の運営費としてプールしている法人の自己資金も含んでの金額なのである。

つまり内部留保とされる額は、決して余剰資金でもなく、過剰利益でもなく、本体事業の運営費そのものであるという実態があるのだ。このことを知らずして批判している馬鹿学者が、幅を利かせているというのが内部留保批判の実態である。

報道機関にしても、この金額が何を意味するかきちんと理解しないまま、財務省の示した数字だけを報道しているだけだ。それは情報の垂れ流しで、悪意のある報道といっても過言ではない。

ではなぜ財務省は、こうした実態とかけ離れた数字を垂れ流し、あたかも社会福祉法人が過剰利益を得ているような印象を世間に与えようとしているのだろう。

それはとりもなおさず、社会福祉法人が非課税法人であり、収益事業以外から生じた所得を除いて法人税も非課税であり、そこから財源を得ることができないという「非課税憎し」に他ならない。

よって社会福祉法人への課税議論は、いったん休止しても、またぞろ復活することは間違いなく、非課税である限り内部留保批判は繰り返されることも間違いない。

内部留保金に限って言えば、社会福祉法人より医療法人のほうが多額に抱えていることは明らかなのに、医療法人の内部留保金が批判対象にならない理由は、医療法人が法人税を負担しているからに他ならない。

そうであるがゆえに社会福祉法人関係者の方々は、世間一般的に言われている一法人平均3億円という内部留保金とは、本体事業に使用している土地や建物や運営資金を含んだものであって、それらを含めるとそのような金額になることは当たり前であることを広くアピールした上で、組織ガバナンスの強化に努め、改正社会福祉法で定められた、「社会福祉充実残額」がある場合には、社会福祉充実計画に基づいた社会貢献に努めていく必要があるだろう。

そういう意味では、この改正法ルールは、社会福祉法人の内部留保金が、世間で言われているほど多くないとアピールするチャンスでもある。なぜならば、「社会福祉充実残額」とは、下記の画像に示した計算式によって算出される額なのだから、一法人平均3億円などという額には到底及ばない。

実際には「社会福祉充実残額」に該当する残額が無い法人もあるだろう。「社会福祉充実残額」がある場合でも、それは医療機関のように、経営者や管理者が年俸数千万円を得ているという状況とは異なり、特養の施設長の平均年収が700万円程度の年俸レベルの中で生じている残額であることもアピールすべきである。

この残額は決して世間から批判を受けるような筋のものではないのである。

逆に言えば、本体事業の中で品質の高いサービスを実現し、社会貢献をしている社会福祉法人が、特養の施設長を始めとした管理者の給与水準を低く抑えながら生み出した利益が、一定額を超えた場合には、それを地域貢献事業等で吐き出すまでは、一般企業と同じ土俵で保険外の事業を展開できないというのが、社会福祉充実計画の実施ルールでもある。

社会福祉法人関係者は、非課税法人であるからといって、ここまでがんじがらめのルールで縛られて良いものかどうか、十分検証した上で、ソーシャルアクションにつなげていく必要があるのではないだろうか。

どちらにしても社会福祉法人の母屋ともいえる、非課税法人を守るためにも、ガバナンスを強化し、フルセットコンプライアンスを確立して、地域社会へアピールする意味も含んだソーシャルアクションは、三位一体的に確立していくべきものである。

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