介護事業者のリスクマネジメントの最たるものは、経営リスクマネジメントであり、顧客確保ができないリスクに対する備えが、最重要課題である。

それはとりもなおさず事業経営戦略に繋がる問題である。ここの意識の差が、これからの事業経営の明暗を分けるだろう。

要介護高齢者の、「暮らしの場」は、その環境の差異はともかくとして、確実に増えており、要介護者の選択肢は広がっている。

そんな中で増えすぎたサ高住の、空き部屋活用のための利用料ダンピングの動きや、訪問介護事業所などの顧客確保戦略として、老築化したアパート等を買い取って、そこに事業所を構え、要介護高齢者を住まわせ、アパート内で支給限度額いっぱいまで訪問介護サービスを提供するような動きが強まる中、後期高齢者や要介護者の数は増加しても、介護施設の入所者確保は容易ではなくなる。

つまり昨日書いた、「利用者確保に困り始めた特養」の内容は、他の介護保険施設も対岸の火事ではないという意味も含んでいるのだ。

特養の待機者が減り、空きベッドが生じてくるということは、老健において特養待機目的で入所する人がいなくなるということだ。

在宅復帰型老健は、特養待機するのが目的ではないから、そんなことは関係ないといっていられない。あらかじめ3ケ月しか入所できないという条件で在宅復帰型老健に入所してくる人の中には、当座は行き場所が無いから在宅復帰型老健に入所して次を探すという人が数多く含まれる。特養の空きベッドができるという意味は、当座の老健入所ケースが減るということを意味するのだ。

療養型医療施設も同様で、空きベッドを埋めなければならない特養の顧客確保戦略は、介護の差別化の方向に向かうのは必然だから、医療機関がバックにある特養などでは、経管栄養や点滴などの医療行為が必要な人を重点的に受け入れようとする動きが強まるだろう。それは特養の医療サービスがマルメではなく、介護報酬の外付けである点から考えても、バックボーンとなっている医療機関とのパックで収益を見込むという戦略として成り立つのである。
(※マルメではないことによって、介護報酬と診療報酬をそれぞれ算定できるために、医療依存度の高い人の特養入所=医療機関で診療報酬を算定できる外来患者の増加、という構図が成り立つのである)

居宅サービスは、これから軽介護者の給付抑制が進み、要介護1と2の人は、順次地域支援事業化され、そこから保険外自己負担サービス化されていく。

どちらにしても、要介護者の数が増える中で、介護給付費を抑制していくのだから、顧客一人当たりの単価は減ることになる。よって今後の事業継続のためには、顧客数をしっかり増やして、事業経営が成り立つ顧客数を確保していく戦略が必要不可欠となるのだから、今後は施設サービス及び居宅サービスを問わず、顧客の奪い合いが激しくなることは容易に予測できる。

その中で選ばれる事業者になっていくためには何が必要なのか。

その際のサービスの差別化とは、結局は介護サービスの高品質化に尽きると思う。

それは利用者確保ではなく顧客確保であることを忘れてはならないし、顧客を確保するために相談員は、営業周りをするのではなく、顧客に選ばれるケアの品質管理をする役割だということを自覚してほしいと思う。いや施設長がそれを理解しないとだめである。

そうであるなら、介護事業者は従業員の接客態度の向上にも努めて当然であり、僕が提唱する、「介護サービスの割れ窓理論」を積極的に実行しようと取り組む事業者が増えていることは、喜ばしいことである。

そういう事業者は、従業員の顧客対応意識を高めようと、日常的に使う用語の改革にも力を入れており、例えばショートステイのお客様に、より心地よく対応していただくためには、「入所・退所」という言葉は違和感があるのではないかとして、「チェックイン・チェックアウト」という言葉を日常的に使うようになったりしている。

その言葉がベストかどうかは分からないが、職員の意識改革という点からは有効である。

このように、お客様により良いサービスを実現するために、既存のあらゆるものの改革の必要性を自覚する事業者と、そうでない事業者には差ができ、それは生き残ることができるか、そうでないかの分かれ目にも繋がっていくだろう。

介護にほとんど興味の無い安定政権が、経済効果でしか社会保障費を見つめない現状において、介護サービス事業者に優しい制度改正などあり得ないわけだから、今後の介護事業経営は、より厳しいものとなり、運営しかできない管理者のいる介護サービスを利用する人は、いなくなるだろう。

サービスを利用する人は、単なるユーザーではなく顧客であり、お客様意識を持ってサービスの質を高めないと、誰も選んで利用してくれないという意識のもと、職員のホスピタリティ意識を高め、介護サービスの質を向上させていく事業者だけが生き残り、それ以外の事業者は野垂れ死にしていくしかないだろう。

そういう意味で今の時代、介護サービスの割れ窓理論は、企業倫理としてだけでなく、リスクマネジメントとして求められているという自覚が、介護事業者しいては介護経営者に必要とされるのである。

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