高齢者が病弱になっても、心身の障がいを持ったとしても、住みなれた地域で暮らし続けるために、地域住民のニーズに応じた住宅が提供されることを基本とした上で、生活上の安全・安心・健康を確保するために、医療や介護のみな らず、福祉サービスを含めた様々な生活支援サービスが日常生活の場(日常 生活圏域)で適切に提供できるような地域での体制を地域包括ケアシステムと呼ぶ。

ここでは住まい・医療・介護・予防サービス・生活支援が一体的に提供される必要があるために、それぞれの分野の関係者による、有機的支援体制が求められる。よって「多職種連携」の必要性が強く叫ばれるわけである。

じゃあ、その多職種連携を誰が大きな声で唱えているかと言えば、厚労省であり、都道府県の担当課であり、市町村の担当者であったりする。

そうした人たちが、介護事業者に向けた研修会やセミナー等で、声高に「多職種連携」という言葉を唱えるたびに、僕は鼻白く感じる。「あなた方は、過去において、あるいは現在も、多職種連携の実績があるのか?」といいたくなる。

介護事業者の多職種連携を促す前に、自分たちの縦割り行政を何とかしろと言いたい。縦割り行政と、その意識で凝り固まった役人の、鼻をくくったような対応がなくなれば、それだけで地域住民の福祉は、大幅に向上するのではないのかと言いたい。

まあそれはさておき、僕たちには、寄り添うべき利用者が目の前に居られるので、それらの人たちの暮らしが少しでも良くなるように、できることを粛々と行っていかねばならない。そのときに多職種連携が必要というのであれば、僕たちのできる限りの知恵と努力で、その関係を構築しながら、有機的に繋がる体制を作っていく必要があるだろう。

そもそも多職種連携が求められる理由は、様々な領域の専門家がいるとしても、それらの人々が世の中のすべての事柄に精通しているわけではないという、至極当たり前の理由によるものだ。

世に秀でた専門家であっても、別の分野のことは全く分からなかったり、特定分野からも物事を眺めても、見えてこない部分があるかもしれないので、様々な専門家が、それぞれの専門領域の知識と技術を持ち寄って、多角的に支援方法を構築しようという意味である。

そうであれば、そこではお互いの専門性を尊重しあって、吸収しあうという関係性が求められる。異なる専門性をもつ複数の者が、援助対象である問題状況 について検討し、よりよい援助の在り方について話し合うプロセスをコンサルテーションと呼ぶが、多職種連携には、まさにこのコンサルテーションというプロセスが重要になるのである。

そのプロセスの中に居る専門家には、他の専門職の声を聴く、「謙虚な耳」が求められるのと同時に、他の専門職に自らが持つ専門性に基づいて、自分が持つ知識や援助技術を、丁寧に分かりやすく説明するという、「誠実な口」が必要とされるのである。

勿論、専門家集団であるからこそ、分かり合うまで議論を尽くすという姿勢は必要で、他者の言葉を無批判に受け入れるだけではなく、疑問は素直に表出しながら、皆で答えを引き出していくという過程も忘れてはならない。

人間は誰しも完璧な存在ではないので、間違えることもあるが、チーム全体でその間違いを修正しながら、利用者に支援が届くところでは、考えうる最良の方法を構築していくという考え方が必要なのである。

多職種連携は、単なる仲良しチームではなく、実効性ある支援方法を作り上げる、専門家・実践家集団の活動プロセスに不可欠な関係性であるといってよい。

多職種連携は、利用者の暮らしの課題を解決するという結果責任を負うチームだということも忘れてはならない。連携するために頑張っているけど、利用者の暮らしはちっとも良くならない、というのでは何の意味も無いことだ。連携は目的ではなく手段である。

そんな難しい話は抜きにして言えることは、連携とは、わかりあうってことだ。わかりあうってことは、ゆるしあうっていうことだ。ゆるしあって、おぎなって、お互いを支えながら光を届けることだ。

そうしたお互いを思いやる心なしでは、つながりなんてできない。

人の暮らしを支援するということは、人としてのやさしさが求められる行為である。

そうした行為を行おうとするメンバーが、メンバーに対して優しさを失ってしまえば、そのチームの雰囲気は、殺伐としたものになるだろう。仲良しクラブでなくても良いとは言っても、殺伐とした関係性で、良い支援ができるとも思えない。

もちろん職業である以上、厳しさも、叱咤も必要だが、愛の無い厳しさは憎しみしか生まない。それは人を幸せにしない。

僕たちはどんな場面でも専門性を基盤に、自らの知識や援助技術が向上するための研鑽を続ける必要があるが、対人援助として、人に関わる職業である以上、常にそこには目に見えない、「愛と優しさ」というエッセンスを加えることを忘れてはならないと思う。

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