社会福祉法人に対する批判の最大のものは、いわゆる内部留保に関するものである。

社会福祉法人が、行政事務の受託的な業務だけを行って、公費や介護保険料を財源とした費用を受け取っているだけで、大きな利益を得ているにも関わらず、1法人平均3億円とも言われる巨額な内部留保金を抱えているということは、収益を溜め込んで、社会に還元していないという意味であり、それは非課税の公益法人としての責務を果たしていないことになるとして批判されているのである。

そのため改正社会福祉法の29年4月1日施行部分には、「社会福祉充実計画の承認」(改正社会福祉法第五十五条二)が規定された。

これは内部留保金を社会に還元させようとする規定で、純資産の額が事業の継続に必要な額を超える社会福祉法人に対し、既存事業の充実または新規事業の実施に関する計画の作成等の義務付けを行うこととしたものである。

社会福祉法人は、その事業を行うに当たり、日常生活及び社会生活上の支援を必要とする者に対し、無料または低額な料金で福祉サービスを積極的に提供することに努めなければならないとされており、社会福祉充実計画に基づいて内部留保金を財源として、地域住民の福祉の向上に資する事業を行うことが規定されたというわけである。

具体的には、社会福祉法人は毎会計年度において、下記図の,粒曚△粒曚鯆兇┐董社会福祉充実残額が生じたときは、厚生労働省令で定めるところにより、「社会福祉充実計画」を作成し、これを所轄庁に提出し、その承認を受けなければならない。(※当該会計年度前の会計年度において作成した、「承認社会福祉充実計画」の実施期間中は、この限りではない。)

社会福祉充実残額
これは任意の計画ではなく、社会福祉充実残額が生じた社会福祉法人に課せられた義務ということになる。同時に計画さえ立てればよいというわけではなく、所轄庁の承認を得るということは、当然その実施を求められるということになる。

社会福祉充実計画により実施する事業は、第1種社会福祉事業および第2種社会福祉事業、公益事業、地域公益事業であり、計画の変更も所轄庁の承認が必要で(軽微変更を除く)、やむをえない事由により、社会福祉充実計画に従って事業を行うことが困難であるときは、所轄庁の承認があれば、同計画を終了することができるとされている。

この計画の内容については、後日別に論ずるとして、「社会福祉充実残額」について注目していただきたい。

前述したように、この規定は社会福祉法人の内部留保金批判に端を発して作られた規定である。しかし社会に還元するとして事業投下する資金は、内部留保といわれるもののすべてではない。それはなぜか?今まで批判対象となってきた内部留保金とは、留保しないと事業運営できない資産が含まれているという意味だ。

言い換えるとすれば、収益を溜め込んで社会還元していないとされ、その額は一法人平均3億円といわれた内部留保金の実態とは、社会還元できない資産や事業運営費が含まれていたということだ。

社会福祉法人の内部留保を批判している者どもは、この会計処理構造を理解したうえで、批判をしているのだろうか。知らないで批判していた輩は、的外れな批判を繰り返していた連中であり、知っていてなおかつ批判していた輩は、よっぽどの馬鹿ということになる。

先に示した図表を見ても分かるとおり、内部留保金には、僕が再三指摘してきた事業再生産に必要な建物の修繕、設備の更新費用や、支払いのタイムラグのため、会計処理上、繰越金に計上されてしまう運営費用などのほか(参照:内部留保批判に関する記事一覧)、僕がこれまで指摘してこなかった、事業運営に必須の活用不動産等が含まれているわけだ。

つまり特養を運営している法人であれば、その特養が建てられている土地や、実際に利用者が暮らしている特養本体の建物まで内部留保金といわれる金額に含まれて、それが一法人平均3億円といわれていたわけであるという。そんなもの社福の過剰利益であるわけがないし、市場に再投下できる資金であるわけが無いのである。

この不動産資産を差し引いてしまえば、実際の運営資金しか残らない社会福祉法人もたくさんあるだろう。つまり「社会福祉充実残額」がなく、「社会福祉充実計画」の作成義務を課されない法人がたくさんあるということだ。

減額された厳しい介護報酬のもとでは、単年度赤字の事業を抱えて、将来の設備更新費用も、建物の更新費用も捻出できない法人もあるといいうことを理解してほしいし、それらの法人が、施設の建て替えを計画しても、かつてのように建設費用の2/3もの補助がつくわけでもないという状況理解も必要だ。

実体の無い幻の3億という数字が先走りして、社会福祉法人は儲けすぎているというイメージだけが先行して繰り広げられている社福批判は正しい情勢判断とはほど遠いところにある。このことだけで社福法人の課税論を唱える人も、的を射た指摘とはほど遠いと言わざるを得ない。

会計年度ごとに、「社会福祉充実残額」を算出するルールが、その誤解を解くことに繋がることを期待したい。

ただ懸念されるのは、「社会福祉充実残額」のある法人は、この費用を使い切らねば、保険外の収益事業の展開に制限が加えられるという意味があることだ。社福法人以外の事業主体が、いくら大きな収益を挙げても、事業経営上の縛りが無いことと比較すると、今後介護保険外のサービスで収益事業を作っていく必要があることを考えると、社会福祉法人が存続していくために、事業経営規模を拡大するに当たって、この規定は大きな壁になる可能性もある。

社会福祉法人への課税議論は、無くなったわけではなく、今後も繰り返される間違いないが、このことと併せて議論していかないと、社福は2重の高くて重い壁に囲われてしまい、身動きが取れなくなるやも知れない。

※もう一つのブログ「masaの血と骨と肉」、毎朝就業前に更新しています。お暇なときに覗きに来て下さい。※グルメブログランキングの文字を「プチ」っと押していただければありがたいです。

北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。

介護の詩・明日へつなぐ言葉」送料無料のインターネットでのお申し込みはこちらからお願いします。

人を語らずして介護を語るな 全3シリーズ」の楽天ブックスからの購入はこちらから。(送料無料です。