改正社会福法を読むと、社会福祉法人にも、公益財団法人と同等以上の公益性の確保が求められていることがわかる。

そのことはガバナンスの強化策として示されており、従前まで介護保険事業のみしか行っていない法人に設置義務がなかった評議員会は、全ての社会福祉法人に議決機関として設置することが義務付けられた。

現在まで評議員会が設置されていない法人は、評議員を29年3月31日までに選任しなければならない。現在評議員会があって、任期が29年4月1日以降も残っている場合でも、改正社会福祉法附則第9条第3項の規定によって、従前からの評議員の任期は、平成29年3月31日において満了するとされているので、新たに規定された方法で選任しなおさねばならない。なお法人役員(理事・監事)や法人職員は評議員として選任できない。(※評議員の資格等は、改正法第40条に規定されおり、定数は理事の定数を超える必要があるとされている)

来年度以降は、定款の変更や理事などの役員の選任・解任、役員の報酬決定、決裁書類の承認はすべて評議員会の議決が必要になる。それに加えて法人の解散や吸収合併の承認も評議員会で行われることになり、これらの事項を仮に理事会の議決事項として定款で定めている場合も、改正社会福祉第45条8項規定によって、「その効力を有しない」とされ、無効な定めとされるため、理事会だけで議決することは不可能になる。

評議員の選任方法は定款に委ねられるが、改正法第31条第5項「評議員に関する事項として、理事又は理事会が評議員を選任し、又は解任する旨の定款の定めは、その効力を有しない。」としているために、現状の定款がそのような規定を入れていても無効となる。つまり理事会で評議員を任命できないことになり、個人商店的な運営の社会福祉法人の理事長の独断だけで、評議員を選ぶことが難しくされているのだ。(法律上は不可能ということだが、それでもワンマン経営の法人は存在するだろう・・・。)

ではどうやって評議員を選ぶのか。定款で評議員会で選任することを定めれば、評議員会で評議員を選ぶことは可能だが、改正法に即した最初の評議員は、この方法では選任できない。そのため厚労省が例示している方法は、「一般財団法人・公益法人の運用」である。ここでは、中立の立場の者が参加する「選定委員会」を設置し、理事会は評議員候補をここに推薦し、選任議決をしてもらう方法が示されているので参考にしてほしい。

ここで、あることに気が付く。

理事や監事は評議員会の議決なしでは選任できず、かつ評議員は理事会で議決できないという規定や議決事項をみると、評議員会の権限は非常に大きいことがわかる。

すると最初の評議員として、特定の団体の関係者が一定割合以上の勢力を持つ場合、定款で「評議員を選任する」という議決を評議員会で行うこととした場合に、その団体の勢力が悪意をもって、同じ勢力の評議員を増やし、法人役員を解任し、自分らの息のかかった役員を選任するという事態が想定される。つまり事実上の法人乗っ取りが、合法的に行われかねないのである。

よって評議員の選任は、厚労省の進める方式で行うとともに、「選定委員会」が適切かつ中立性を損なわない方法で機能する必要がある。

この方法が厳密化されることは、理事長ファミリーの個人経営的法人運営を防ぐ効果にもつながるかもしれず、社会福祉法人の私物化を防ぐ切り札が、新評議員会であるのかもしれない。

なお改正法第45条の20、第45条の21規定により、評議員は役員等と連帯して社会福祉法人や第三者に対する損害賠償責任を負うこととなるため、その責任を負ってくれる評議員を必要定数確保できるかどうかが、大きな課題となるだろう。

このことについては、所轄庁や社会福祉協議会などから、地域における人材情報を提供する仕組みが検討されているところである。

どちらにしても社会福祉法人は、、このことの準備を早急に進める必要があり、この改正内容を知らない管理者・事務担当者であっては、今後の厳しい社会情勢の中で、社会福祉法人運営は厳しいものとなるだろう。

なおこのことに関連して、大阪(8/25)仙台(9/15)、『改正社会福祉法から見た介護業界の将来像〜制度や現場を知らずして介護を語るな』と題したセミナーを行う。

このセミナーは、11月から始まる「介護経営戦略塾」のプレセミナーでもあり、どなたでも無料で参加できるセミナーなので、下記のリンク先のチラシから申し込みいただきたい。

8月25日(木)14:00〜大阪セミナー

9/15(木)13:30〜仙台セミナー

なお席に限りがあるために、定員を超えた場合、申し込みが終了となることをご了承いただきたい。

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