指導的立場にある人の見識が高くて、包容力も豊かで、リーダ-シップがあるというのは理想である。
しかしそれが理想であって、実際にはそんな人はいないなどと、悠長なことを言っていられないのが、これからの介護事業の厳しい現実であり、理想的な指導者像に限りなく近い現場リーダーを、いかに確保していくかが経営戦略上の重大な要素となる。
次期介護報酬もマイナス改定の可能性が高く、事業経営がますます厳しくなる。そんな中で財源の重点配分・効率的配分の観点から、要介護者が増えることと反比例して、介護サービス利用者は減らしていくという給付制限が行われる。
その中で求められるのは顧客確保の戦略であるが、そのためには高品質サービスは不可欠である。
だから働きやすい職場環境づくりのリーダーとなってくれる指導者は不可欠で、そうしたリーダーの存在が人材確保につながり、そのことによってサービスの質を高めることが可能となり、利用者に選択される事業所になり得るのである。だから現場指導者の確保・育成は、重大な経営戦略なのである。
介護事業経営者は、見識やリーダーシップを備えた指導者を探し、育て、護っていく必要がある。
しかしいくら有能な指導者を育てたとしても、それで終わりではない。設備にメンテナンスが必要なように、指導者に対しても、常に心のメンテナンスが必要と考えておかないと、知らず知らずのうちに、指導者の心が壊れ、気が付いたときにはバーンアウト直前となってしまうことがある。
有能な指導者を突然失うことがあれば、それは大きな経営リスクである。だから事業経営者には、様々なことを想定して、目配りしてリスクを少しでも減らしていく視点が求められる。
例えばリスクの一つには、事業者がどういう職員を、どのような基準で採用しているかが問われるという問題も含まれている。
指導を受ける側が、すべてそれに応えるように学び取るかといえば、そうとは限らない。
特に介護サービスの現状は人手不足で、求人に応募した人は、とりあえず雇ってしまうという状況が無きにしも非ずだ。その中には正論が通じないレベルの、社会人として不適格な人物も混じっているので、スキルの高い指導者もそれなりの覚悟が必要である。
と同時に、事業経営者や管理職には、現場指導者が、職員としての適正に欠けるモンスター社員につぶされないように、指導的立場の人が何に困っているか常に気を配り、適時に助言・指導していく必要がある。それがないと、指導的立場にある人が、指導の通じない不適格職員につぶされて、その職場は教育機能を失っていくからである。
昨日とあるSNSで、排泄介助方法が明らかに不適切であることを注意したところ、逆切れされただけではなく、そのまま職場放棄して帰宅してしまった職員がいて困っている方が、「もう疲れた」と、バーンアウト寸前の近況を書いておられた。
本当に困ったことである。しかしこうした非常識極まりない不適格職員に、現場指導者がつぶされては、サービスの品質管理など絵空事になり、事業経営そのものが立ち行かなくなる恐れがある。
僕はその人に対して、「そういう人は毅然と解雇しましょう。人手不足でも、長期的に見ればそういう人がいるデメリットの方が大きいです。」とコメントを書き込んだが、考えてみれば、このコメントは少し的外れだったと反省している。
なぜならこのコメントは、人事権がある人に対して書くべきことであって、人を採用したり、解雇する権限が無い立場の人に言っても始まらない身からだ。
スキルのあまりに低い不適格職員に幻滅して、心を壊されそうになっている人に対しては、もっと的確なアドバイスが必要だった。
こういう問題でバーンアウトしかかっている人は、不適格人物に幻滅しているだけではなく、そうした人物がいるという職場や、職業そのものに幻滅してしまうことが多い。あまりに非常識な人物が行う信じられない行為は、それだけ心に強くのしかかり、それまで仕事で得てきた喜びや、やりがいなどすべてをむなしいものに変えてしまうからだ。
とくにこうした思いを持ちやすいのは、感性の鋭い人であることが多い。しかし指導とは一面、人に嫌われることであるという一面もある。当然愛情を持って叱る場面もある。その際に叱られる意味が分からずに、反抗する人も出てくるだろう。そんな反応にいちいちかまってはいられないし、そんな感情に心を寄せる必要もない。
その場合、意識した鈍感力が必要なのだ。気にするなといっても、気にしてしまうのが人間の性である。考えないようにしても気になっちゃうのは仕方ないが、馬鹿はどこにでもいると無視したほうがよい。そういう人間には、言いも悪いも無く、嫌だという感情さえ寄せるのがもったいないとして、無視して鈍感になろうとする力が、自分を強くし、自分を護ってくれるのではないだろうか。
僕自身は、こうした鈍感力を持った人間だと思う。全国にたくさん僕を応援してくれる人がいて、僕の考えに共鳴してくれる人がいる反面、僕のことを大嫌いな人も多い。そいつらの中には、このブログに繰り返しアホなコメントを寄せてくるやつもいるが、そういうむなしい作業を鼻で笑いながら、無視している。
そういう手合いは、いるのが当たり前として、何も感じない。そのことが僕の強さの要素の一つであるのかもしれない。
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デイの管理者をしており、まさしく今回の内容と同じ状態で、あまりにも自分の心情と近い内容だったので、コメントさせていただきました。会社のパソコン故、メアドは控えさせていただきました。
職員の指導だけでなく、会社への不満も強く、バーンアウトが頭をよぎり、昨夜も携帯で転職サイトを見ながら、「トラックの運転手もいいかな…」なんて、考えてました。自分が有能でないだけかも知れませんが…。
masaさんのような上司がいたら、どれだけ救われるかと思ってしまいました。
いつどうなるか分かりませんが、これからも拝見させていただきたいと思います。