先週6/30(木)、新聞各紙が一斉に「特養の待機者減少」というニュースを流した。

その中には、「急減」という言葉を使っているものも見られた。

待機者の減少の理由は、各誌とも特養の入所要件の厳格化により、原則要介護2以下の人が入所できなくなったことと、サ高住など他の入所施設という選択肢が広がったことによるものと分析している。

しかしこのような報道が今されだされるというのもどうしたものだろう。

もともと入所要件の変更ルールの議論では、特養の待機者のうち要介護1と要介護2の人の割合は、全国で13パーセント以上となっているという数字が出されていたのだから、少なくとも昨年4月以降、特養待機者の1割以上の減少は織り込み済みだ。しかも入所要件の変更により、待機者の要介護度の確認と、その意向の再確認の過程で、とりあえず申し込みをしていただけという人が何パーセントか零れ落ちることも想定されることであって、待機者が減少することが、ニュースになるほうがおかしいと思う。

いやそうではなく、待機者の割合が想定より多すぎるのだという人がいるとしたら、それこそ見込み不足だ。

既に存在している空き箱(その1)」という記事は昨年10月に書いたものだが、ここではすでに特養が売り手市場ではないことも、相談員の業務として、「顧客確保のための営業周り」が求められてきていることも指摘済みである。

僕から言わせれば、6/30日に一斉報道された記事内容など、数年前から予測された範囲の現象でしかなく、報道するに値するものとは思えないのである。

しかも報道内容の中には、国の施策によって要介護2以下の認知症の人の行き場所がなく、漂流を余儀なくさせられているかのような指摘が見られる。

しかし、「国の施策」面からそのことを論ずるなら、それは誤った指摘であり、「特例入所」という形で、要介2以下の認知症の人は、特養に入所できる仕組みは残っている。この特例入所が機能していないとしたら、それは国の責任ではなく、そのルールの運用を任されている市町村の責任である。

このように真実とはいえない報道内容が、ある日一斉に流されるのはなぜだろう。

そこには国、あるいは政治の意図が隠されているのではないかといううがった見方をしてしまう。

この報道に触れて僕が感じたことは、安倍首相の、「新三本の矢」という経済政策の中で掲げた、「介護離職をなくすための特養整備」の軌道修正が図られているということだ。

特養に入所できない人の家族が、そのことを理由に辞職を余儀なくされることがないように、待機者の解消を狙った特養整備の施策と、そのための補助事業については、声高らかに唱えたものの、巷の評判は芳しくない。やれ箱物だけ整備して介護職員はいったいどうするのか、やれ介護離職より先に介護者の離職をなくす施策が先だろう等々、思った以上に評判が悪かった。

そんな中で骨太の改革を実行して、社会保障費の自然増分を含めた伸びを、現行の1兆円から五千億円に抑制しなければならないときに、特養のベッド数を増やす政策は、それと大きく矛盾することである。そうであるなら、そのような無理を、評判が芳しくない中で続ける必要はないと考え、待機者大幅減という現象を理由に、政策変換を図ろうとするものではないのだろうか。

それはそれでよいとして、これによって安倍政権は、ますます介護にそっぽを向いて、介護保険制度や介護報酬など何のことやらという方向で、政権運営されるのではないかと危惧するものだ。

どちらにしても、この報道が単純な社会現象をあらわしているものというような、能天気な読み方をしてはならないと思う。

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