介護保険法第27条1項は、要介護認定に関連して、次のように定めている。

第二七条 要介護認定を受けようとする被保険者は、厚生労働省令で定めるところにより、申請書に被保険者証を添付して市町村に申請をしなければならない。この場合において、当該被保険者は、厚生労働省令で定めるところにより、第四十六条第一項に規定する指定居宅介護支援事業者、地域密着型介護老人福祉施設若しくは介護保険施設であって厚生労働省令で定めるもの又は第百十五条の三十九第一項に規定する地域包括支援センターに、当該申請に関する手続を代わって行わせることができる。

これは介護認定の代理申請に関する定めである。

介護認定の申請などを、本人に代わって行う代行手続きなどは、それを生業とする社会保険労務士によってされるもので、それ以外のものが「(なりわい)」として申請代行を行うことはできない。

しかし上記のように、介護保険法第27条1項で規定されている事業者は、この規定により「業」として介護認定の代行申請を行うことができることになっている。(介護保険法第27条1項はその事業者の定めである。)

介護保険法第27条1項で規定されている事業者とは、地域包括支援センター・厚生労働省令で定めた指定居宅介護支援事業者、地域密着型介護保険施設か介護保険施設である。よってこのこれらの事業者は、申請代行業務を業務として行うことにより、申請者に対する代行手数料(費用)の請求が可能である。(代行の費用は介護報酬費には含まれていない)
指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成十一年三月三十一日厚生省令第三十八号)の第八条では、要介護認定の申請に係る援助を規定しており、そこでは

指定居宅介護支援事業者は、被保険者の要介護認定に係る申請について、利用申込者の意思を踏まえ、必要な協力を行わなければならない。
2  指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援の提供の開始に際し、要介護認定を受けていない利用申込者については、要介護認定の申請が既に行われているかどうかを確認し、申請が行われていない場合は、当該利用申込者の意思を踏まえて速やかに当該申請が行われるよう必要な援助を行わなければならない。
3  指定居宅介護支援事業者は、要介護認定の更新の申請が、遅くとも当該利用者が受けている要介護認定の有効期間の満了日の三十日前には行われるよう、必要な援助を行わなければならない。


↑このような定めがあるために、代行手続きは義務であって、費用請求はできないのではないかと疑問を呈する人がいるが、それは違う。この規定は、あくまで申請手続きの支援を行う定めであって、代行手続きを事業者に義務付けたものではなく、本人や家族が申請手続きができるように援助することを規定しているだけで、本人や家族や、その他の第3者が申請手続きを行えない場合、居宅介護支援事業所として代行手続きを行う際には、代行申請料金を徴収しても構わないのである。

これは介護保険施設も同じである。

同時に介護保険法第27条1項で定められた事業者は利用者からの申請代行の依頼を、正当な理由なく拒むことはできないので、その際に、代行手続き料金などを徴収するか否かについて、重要事項として定めている必要がある。

ただし申請代行自体は、利用者からの依頼による無償行為であれば基本的に誰でも個人として行うことは可能である。それは家族のみならず介護保険法第27条1項で規定していない事業者に所属する個人でも可能ということになる。(保険者によっては代行申請の委任状を求める場合がある。)

しかしながら法27条第1項の規定以外の事業所が、日常的に代行申請するに当たっては、たとえ報酬を得ていなくても反復継続して業務を行っていることと見なされてしまい、つまり「業」と見なされるので、第27条違反及び、社会保険労務士法に違反となる。業であるかないかは、報酬の有無だけではなく、反復継続的におこなっているか否かも問題視されるということに注意が必要だ。

介護施設の相談援助職や、居宅介護支援事業所の介護支援専門員等にとって申請代行は、日常業務の中で、ごく当たり前のように行っていることであるが、その法的根拠などを常に確認する姿勢は、その他の様々な法令理解につながることで、業務に対する姿勢を考える上では重要なことであると思う。

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