再来年の報酬改定時に、現在全額保険給付されている居宅介護支援費に、利用者1割自己負担が導入されることが既定路線化されつつある。
このとについて僕は、利用者に自己負担が生ずることで、より質の高いケアマネを求める結果にはならず、より自分の言うことを素直に聞くケアマネを求める傾向が強くなると予測している。
それは、デマンドではなくニーズを重視するケアマネジメントが疎まれ、利用者への「媚を売る」介護支援専門員が選ばれる傾向が強くなるという意味であり、そのことによって、利用者の言うがままに、不必要なサービスも含めてプランを立てる「御用聞きケアマネ」を増やす結果となり、ケアマネジメントの質担保には結びつかないと指摘してきた。
しかも1割負担分の費用を徴収する業務(請求業務と現金受領にかかわる業務)が、あらたに居宅介護支援事業所の業務に加わるが、確実に発生するであろう自己負担金の滞納を考えると、滞納者に対する督促業務が介護支援専門員の業務に加えられ、かつ回収率が100%となることは不可能であると予測され、居宅介護支援事業所の収入は減る可能性が高い。つまり業務負担は増えるが、給料は増えないどころか下がる可能性があるということだ。
ところで、居宅介護支援費に自己負担が導入されるということは、利用者負担額は、加算を除いた基本サービス費だけで、要介護1及び2の人で月額1.042円、要介護3以上の人で、1.353円の負担となる。この負担増は決して軽くはない。
そこで考えられることは、お金のかからないセルフプランが増えるということだ。
そう言うと、セルフプランが作成できる人なんて少ないだろうという反論が聞こえてきそうだが。、セルフプランは、何も利用者が自分ひとりで作成するものとは限らず、第3者が作成支援と称して、実際には作成代行したものを利用者が市町村の窓口に提出するというものが含まれてくる。
誰がその様な作成支援をしてくれるのかというと、訪問介護事業所などの居宅サービス事業者である。無料で作成支援する代わりに、その事業者のサービスを優先的に利用するという条件を付けるケースが増えるだろう。
無料でセルフプランの作成を手伝うという行為は、保険給付とは関係のない行為で、そこに資格は必要とされないし、作成代行ではなく、作成を手伝うためのアドバイスの体裁を整えれば、代行業務ともならず違法性も問われることはない。
セルフプランの給付管理は、市町村が行うことになるために、市町村の窓口レベルで、そのようなセルフプランは受理されないのではないかという意見もあるが、市町村は利用者本人がセルフプランを作成すること自体を拒否する権限はなく、提出されたプランが、アドバイスを受けただけで、自己作成したものだと主張されれば、それを受理しないわけにはいかない。
これによって市町村業務は大幅に増加するが、その部分に予算を手当てしようとしても、給付管理したからと言って市町村に保険収入が入ってくるわけではない。
市長村は、果たしてこのことを想定しているだろうか。その状況を諾として、黙々と給付管理業務をこなす職員を手当てできるだろう。
そう考えると、この問題は、市町村業務の問題としても、もっと深く議論される必要があるはずだが、そのような視点からの議論は皆無である。
また、このことによって、居宅介護支援のサービスの質云々ということとは別に、顧客の絶対数が減ることによって、経営が厳しくなり、人員削減や給与引き下げをしなければならない居宅介護支援事業所も出てくるという結論にもなる。
今後、介護保険給付が、要介護3以上の中重度者しか使えなくなるような政策誘導と相まって、居宅介護支援事業は非常に厳しい逆風を受けざるを得ないだろう。
転職を真剣に考えなければならない介護支援専門員が増えるというのが、次期制度改正・報酬改定の示す方向でもある。
本来ならば、そうならないために、介護支援専門員の職能団体等は、もっと反対の声を高く上げねばならないはずなのに、そのようなアクションはまったく見えない。呑気この上ないと思うのは、僕の杞憂だろうか。
自分の仕事が奪われるかもしれないという状況に、これだけ大人しい職種というのも、何とも珍しい限りである。
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