介護保険制度以前から、この業界にかかわっている僕の場合、措置から介護保険制度への移行や、介護保険制度の中のルール変更などの流れをつぶさに見ているので、現行の制度のルールが、なぜそうなっているのかは、ごく自然に理解できている。

しかし、途中から介護保険制度の中のサービスにかかわることになった人にとっては、理解できない不思議なことが、この制度の中にたくさんあるのだろうと思う。

次期制度改正でなくなる可能性のある、居宅介護支援費の、「特定事業所集中減算」にしても、そのルールができた経緯を知らないと、なぜ当初は、福祉系3サービスだけに適用されたルールであったのか、それが途中(前回の制度改正)で全サービスに広がったのかを理解できないと思う。

ただしこのことは、制度の変換だけ見ても理解不能で、裏の職能団体の政治的動きを知らないと理解できないだろう。下記参照願いたい。
(参照:日本介護〇〇〇〇〇協会は医療系利益団体にしか過ぎない、と思う。)

介護報酬についても、不思議がられるものがあるが、よく指摘されるのは、施設サービスにおいて、多床室の保険給付額が、個室の単価より高くなっている点である。アメニティの低い多床室のほうが、なぜ単価が高くなっているのか理解できないといわれることがある。

しかし介護保険制度当初から、施設サービスにかかわっている人にとって、この単価設定はまったく不思議ではなく、むしろ疑問を持つ人が多いということに驚きの気持ちを持っているのではないだろうか。

一番の誤解は、この単価設定部分には、住環境(アメニティ)に関する費用は一切入っていないということなのである。

施設サービスにおいては、もともと多床室と個室による保険給付額の違いはなかった。多床室に入所しようと、個室に入所しようと、給付される保険額は同じであり、当然1割自己負担額も同額であった。それは施設サービスにおいて、部屋代(居住費)を別に徴収するという発想がなかったことによるもので、施設サービスは、そこに住むことが前提であり、給付費は滞在費用をも含めたパッケージ報酬であるという前提があり、介護サービス自体は、多床室であろうと、個室であろうと、提供するサービスに変わりはなく、部屋の形態によってサービス費に差があるのはおかしいという考え方がされていた。

ところが新型特養が制度に位置づけられた際に、個室ユニット型の施設なのだから、在宅者と同じように家賃相当分の費用を自己負担してもらった上で、サービス利用をしてもらうという理屈から、他の介護老人福祉施設とは別体系の報酬設定となり、居住費を自己負担してもらうことにした。

この流れが2005年10月の施設サービスにおける居住費と食費の自己負担化につながったわけである。

この際に、居住費を自己負担するのであれば、アメニティに大きな違いがある多床室と個室の自己負担額が同じであるのはおかしいという議論となり、そもそも4人部屋が中心となっていた多床室については、家賃相当分の費用を自己負担させるには、あまりにアメニティが低すぎるということになって、多床室の自己負担額は、家賃分を含まない高熱水費相当分のみということになって、その金額が設定され、従来型個室の場合は、高熱水費+家賃相当分として設定された。

ここでわかりやすくなるように、現在の実際の標準金額ではなく、例として端数のない架空の金額で、このことを説明したい。

居住費の自己負担がない2005年9月までの施設サービス費が、多床室・個室に関係なく、」200.000円だったとしよう。

そして10月以降、自己負担化された居住費については、アメニティの違いを考慮して、多床室は20.000円、個室は50.000円にしたとする。そうなると介護報酬は、この10月時点で改定がなかったために、単純に施設サービス費は、それまでの介護報酬から、自己負担を差し引いて、多床室は20万円−2万円=18万円、個室は20万円−5万円=15万円とされただけの話であり、この部分で施設の収入は減りも、増えもしないようにしたわけである。

だから多床室の保険給付額より、個室の保険給付額が低いのは当然なのであり、部屋の形態によるアメニティの違いは、この報酬額には含まれておらず、その差は、利用者自己負担額によって差別化されているのが本来だ。

ところが以後の報酬改定では、この過程や当時の議論をまったく無視して、アメニティが低いという理由で、多床室単価の下げ幅を個室より大きくして、保険給付額+居住費自己負担額の合計額は、多床室より個室のほうが高くなると言う形で差をつけた。

これは単なる給付制限であり、個室のサービス費が高くなったわけではなく、多床室のサービス費が安くされたという意味である。

しかし多床室であろうと、個室であろうと、介護サービスの提供方法が異なるわけではなく、居住空間の形態によって、施設の収入に差がつくのは問題であり、基本サービス費+居住費自己負担額の合計額が、多床室で暮らしているのか、個室で暮らしているのかによって異なるのはおかしいことなのである。

介護の手間という面で見れば、人間関係に気を使う必要にない個室より、多床室のほうが手間がかかるのだし、介護そのものも、同室者への配慮が必要な多床室のほうが、手間と負担が大きいのだから、基本サービス費+居住費自己負担額の合計額に差をつけるとすれば、それは本来、多床室利用者の合計額が高くなる必要があるといってもよいだろう。

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