地域包括ケアシステムの構築が急務であると言われているこのご時世で、多職種連携という言葉が飛び交い、診療報酬も介護報酬も、所属事業所や職種を超えた連携に関する加算が増えている。
餌を巻いて、何とか仕組みを創ろうとしているわけである。
しかしながら多職種連携の必要性を声高に唱える勧進元の連携は進んでいるのだろうか?
国にしても、都道府県にしても、市町村にしても、自らの組織の縦割りを何とかしてから、多職種連携という言葉を使ってほしいものだ。
地域包括支援センターの職員も、委託であろうと直営であろうと、市町村の機関であることに変わりはないのだから、市民に迷惑を及ぼす縦割りの弊害をなくしてから、「レンケイ」という言葉を使ったらどうなんだろうか。
硬直的な組織で、窓口が違えばわれ関せずという姿勢の人々が、特定の場所に立った途端に、「多職種連携」を口にして、「たしょくしゅ」は、多職種でもあり、他職種でもあるなんて、わかったような解説をしている姿は、滑稽さを通り越して、みじめでさえある。
この縦割りにメスを入れかけたのが、介護保険制度の当初の姿であった。日本式の居宅ケアマネジメント方式ともいえる、居宅介護支援のありようは、利用者と社会資源を結びつける窓口を一般化し、介護支援専門員という有資格者たる専門家を、一人一人の住民の担当者とし、利用者はその担当者を通じて、介護保険サービスをはじめとした、自分のニーズにかなう社会資源と結びつくことができるようになった。
まさにワンストップサービスが実現することになったわけで、これは利用者レベルまでは、直接的に縦割り行政の弊害である、「たらいまわし」の閉塞感が及ばない状況を生み出したといってもよく、介護保険制度を機賭けにして、そこに風穴を開ける可能性を感じさせた。
しかし財源論に振り回されつつ、走りながら考える制度であるがゆえに、平成18年の制度改正時に介護予防給付の設立という名の、「給付抑制」によって、要支援者と要介護者の、サービス利用の際の担当者が変わってしまうという弊害を生み、事実上ここで介護保険制度のワンストップサービスは崩壊した。
地域包括ケアシステムでは、町村の新総合事業への移行という形で、予防給付と介護給付サービスを利用する人をさらに削減するのであるから、利用者が直接利用する担当機関や、訪ねなければ窓口はさらに増えてくる。
認定を受け、非該当にならなければサービスを使えたはずの介護保険サービスは、要介護以状態区分と認定されても、軽度認定であれば、原則特養には入所できなくなるなど、保険料を強制的に徴収される義務によって生じたはずの、国民がサービスを利用する権利さえ奪われつつある。
古き悪しき時代への先祖返りが、介護保険制度改正の実態となっているのではないだろうか。
財源をかけないために取り入れられる地域包括ケアシステムでは、利用する権利を奪われた介護難民が、地域行政を頼って、地域をさまよい歩くシステムである。
その時に、そうした介護難民にどう手を差し伸べるかについては、市町村の責任と義務において考えなさいというのが国の姿勢である。
これは地域包括ケアシステム=地域丸投げケアシステムといわれる所以でもある。
介護支援の専門家はそうした中で、地域の様々な専門家との人間関係をつなぎながら、真の連携を構築していかねばならない。なぜならこのシステムの中に、そのような生きた連携を生むシステムは存在しておらず、個人のスキルと責任感に期待した部分が多い、大甘見込みのシステムだからだ。
縦割り行政から脱皮できない組織に所属する人間が、声高に叫ぶ「多職種連携」に嫌気はさすが、自分の仕事が社会に役立つためには、声だけでかくして、実行の伴わない役人の存在など無視して、自分なりの連携スキルを高めていくしかないだろう。
そこで必要なのは、方法論は違っても、誰かの赤い花になろうとする志を、共有しあい認め合うつながりだ。
そのことを心に、今日も明日に向かって歩き続けたいと思う。
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