アミーユ川崎幸町で、3人の利用者の命を奪った犯人の犯行動機は何なのかと問う議論の中で、介護支援の場のストレスが原因であるかのような論調が一部にみられる。

馬鹿なことを言うなと言いたい。仕事にストレスがあるからと言って、罪なき高齢者の命を、冷静で計画的に奪うという犯罪行為が、あれほど連続して行われるわけがない。あの事件の犯人は、サイコパスが疑われると思うし、機会さえあれば、どのような職業に就いていたとしても、犯行を行っていた可能性が高い。この犯罪と、介護ストレスを同じテーブルで論ずることはできない。それは間違った議論である。

一方でこの施設では、犯人以外の職員が、利用者に暴言を吐きながら介護を行っていたことが、家族の隠し撮りカメラ映像によって明らかになっている。それはストレスの結果なのだろうか。そうだとしたら、それはやむを得ない部分があり、情状酌量の余地があるとでもいうのだろうか。

確かに介護をはじめとした対人援助の職業は、他人の身体に直接アプローチするということにおいて負担感はあるし、他人の感情と直接向かい合わねばならないことが多く、その感情に巻き込まれたり、精神的負担を感ずることも多いだろう。

だからと言って、全国で約177万の介護職員が、ストレスのために多かれ少なかれ、虐待行為に走っているという事実はない。

多くの介護職員は、何らかのストレスを抱えていたとしても、それ以上に介護という職業の使命感や誇りを感じ、やりがいを感じて、対人援助の仕事を続けることに喜びを抱き、利用者の笑顔を求めて仕事を続けているのだ。マジョリティは、虐待行為と無縁の仕事をしている職員であり、それはごく普通の光景である。

隠し撮りビデオ映像に写っていた姿が、「氷山の一角」などというのも間違った考え方だ。我々が漕ぎ出している海に、そんな氷山など浮かんでいない。隠された部分に闇を抱いている職場では決してないのだ。

あの隠し撮りビデオ映像の姿は、介護サービスにも、お客様である利用者に対するマナーが必要であるという教育を受けていない結果であろう。しかしどのような理由があろうとも、あの行為は許されるものではないし、情状酌量の余地もない。

マナーを欠く不適切サービスの原因が、「感覚麻痺」であり、それは利用者に対する言葉遣いの乱れから生ずるものであるという、「介護サービスの割れ窓理論」であることは以前から主張してきている。

お客様である利用者に対する言葉遣いは、「丁寧語」であるべきだし、親しみやすさを理由にして、言葉を崩す必要はないことを何度も主張してきた。

しかし言葉遣いを正しくすることを、「気取っている」とか、「杓子行儀」だとかいう言葉で否定する輩がなくならない。それは低き精神に流れているだけで、学びの精神のかけらもない、スキルの低い人間のたわごとだ。

誇りある職業であるならば、気取りだって必要になる時があるだろう。それともそれらの人々は、自らの職業を卑下しているのだろうか。その精神の貧困さは救いようがなく、そうした精神構造はみじめでしかない。

介護サービスは、人の暮らしに直接向かい合う仕事である。そこでは人の暮らしに深く介入して、時にはもっともぱらいべーとな部分で、他人に知られたくはない部分にも踏み込んでいかざるを得ない。そうであるがゆえに、人の感情には敏感であるべきで、笑顔で対応したり、素早く対応したり、丁寧に対応するなど、我々の支援行為を気持よ利用・享受していただくための配慮は必要である。それができるのが対人援助のプロであり、できなければただの素人だ。そんな素人が、生活の糧をそこから得ていることがどうかしている。そういう人は、さっさと別な仕事を探しなさい。

そういう意味で、これからの介護には、「ホスピタリティ」の視点が求められてくる。求められる介護イノベーションとは、ポスピタリティが求められるということが、普通に考えられる介護である。

「ホスピタリティ」とは、「思いやり」「心からのおもてなし」という意味であり、「マナー」は相手に不快感を与えないための最低限のルールを守ったうえで、そこに「心」が加わると、「ホスピタリティ」になる。

目に見えない心が大切な介護という仕事であるがゆえに、マナーは当たり前、そこに心を加えてホスピタリティ意識を高めようというのは、至極当然の帰結であると考えるのである。

ホスピタリティ

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