最近、講演依頼を頂く際に、「介護職が元気になるようなお話をしてもらえませんか。」と依頼されることが多い。それだけ介護の現場が疲弊しているという実態があり、何か煮詰まってしまって身動きが取りにくい人々が多いという現状があるのだろうか・・・。

志の高い人たちが、日々の業務に埋没して豊かな感性を失ってしまうのは大いなる損失である。そうならないために、元気にさせてほしいという要望には、出来るだけ応えるようにして、介護という職業の尊さを伝え、そこで生まれる様々なエピソードを重ねていくことが、いかにやりがいにつながるかというお話をするように努めている。

しかしその話が空虚な実態のないものであれば、その場では、「なるほどなあ〜。よい話だな〜。」という感想を持ったとしても、それを現場に持ち帰れないときには、「良い話だと思うけど、実際にはできないなあ〜。」ということで終わってしまう。それは机上の空論でしかない。

そうならないように、僕が実践論と称するテーマの話は、講演を聴いた後、その日が夜勤に入る予定の人がいたとして、その日の夜勤から実践できる方法論であるべきだと考え、実際にその日の夜からできることを話すことに心がけている。

そのためには、実際に行ってもいないのに、「こうしなければいけない」的な話は一切しなことにしており、僕の施設やサービス事業所で実際に行っていることを例にしてお話ししている。それは多くの場合、僕が必要だと思って、変化を介護サービスの場に求め、職員に求めて創り上げてきた方法論だ。だからその方法について、僕はその意味も根拠もすべて言葉で説明できる。だからこそ伝えられるのだろうと考えている。

そんな中、先日行った講演について、ありがたい手紙が届いた。私信だから講演地はマスキングさせていただいた。
御礼状
研修翌日の当施設、食事介助の職員が全員座って介助しておりました。研修に参加した職員から出席しない職員に伝えられ、変化が起こり始めたことに感動し感謝の言葉もありません」と綴られた文面を読んで、僕もうれしくなった。

もともと食事介助というのは、介護支援者が座って行うべき行為なのである。それは、立ったままの食事介助だと、利用者が落ち着いた雰囲気を感じられないという感覚的な問題だけではなく、嚥下機能の低下した人が多い高齢者施設では、誤嚥や窒息を防ぐ介助方法なのである。

厚労省は正確な数字を発表していないが、介護施設で日常の食事介助で窒息死した人がゼロになった年は、ここ10年間ではないそうである。毎年一人以上の人が、日常の食事介助中に、食事をのどに詰まらせて窒息死されている。それらの人は、餅のようにつまりやすい食材ではなく、ごく普通の食事を食べている最中に、誤嚥窒息事故で亡くなっている。ということはその死亡事故に関わっている介護職員が、毎年一人以上存在するということだ。その人にとっては、日常の食事介助場面で、普通に食事介助をしている最中に、目の前の人の命が、自分の「食事介助」によって命を失うショックは大きいだろう。そのことによって、介護という職業をっできなくなっている人もいるかもしれない。

しかし食事をのどに詰まらせる一番の要因は、嚥下機能低下ではなく、食事をつまりやすい姿勢で食事介助していることによるものだ。

個別座位アセスメントを強化しています」で紹介しているように、食事を安全に嚥下するためには、食事介助するものが座るということでしか解決できない問題もあるのである。

同時に食事介助する者が、座ることによって、自然と目線は食事介助を受ける人と同じになるから、実際にその食事を食べている人に、トレーの中身がどんな状態で見えているかも理解できて、いろいろな発見があるわけである。

本来、人の一番の楽しみであるはずの、「食事」について、利用者と同じ目線でトレーの中の食事を見つめたとき、食べ物にふさわしい盛り付けになっているかというだけではなく、そもそも利用者の目線で見直した時、器の中身がきちんと見えるのかということにも気が付くだろう。現在の椅子テーブルの高さは、現代人の身長に合わせて作られているが、大正生まれ、昭和食生まれの方は、想定身長よりかなり低い人がたくさんいて、子椅子とテーブルでは、食べずらいだろうなということは、実際に目線を合わせて考えないと理解できないことだからである。

どちらにしても、食事摂取介助のスタンダードは、座って介助することであるという考え方が浸透されなければ、食事を単なる栄養補給としか考えられない状態にし、その中で不適切な摂食姿勢を繰り返し、起きなくてもよい誤飲窒息事故が繰り返されてしまうという悲劇は、いつまでもなくならないだろう。

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