道の委託を受けた介護職員初任者研修を、登別市内で唯一実施しているのは、登別地方高等職業訓練校の、「介護サービス科」である。

平成12年度からホームヘルパー2級養成講座として始まった同研修について、僕は講座開設当初から講師陣の一人とて10年以上関わっていた。僕が担当していた授業は、介護保険制度や相談援助、職業倫理といった科目であった。

しかし公私とも多忙な身である中、平日の仕事の最中に数時間を割いて、授業のために訓練校に出かける時間をなかなか取れなくなり、平成24年度を最後に同講座の講師を降ろさせていただいた。

振り返ると、この研修の中で教えた生徒たちがたくさん僕の施設に就職している。それはある意味、僕の授業中の教えを、生徒が受け入れて共感し、僕の管理する施設で働きたいという意志に繋がっているという意味で、そのことは僕自身のひそかな誇りでもある。

僕の施設はヘルパー2級(初任者研修終了)だけでは正職員とはなれない規定となっており、同研修修了者は、常勤の契約職員として就職してくるが、その後、実務経験ルートで介護福祉士資格を取得して、正職員となった人が何人もおり、現在まで働いている人も多い。

そういう意味では当法人全体の人材確保に、この研修講師を務めていたことは、大いに寄与していると言えるであろう。

講師を辞めた後は、僕の教え子が僕を慕って就職することはなくなったものの、数人の研修修了者が就職している。しかしその数は年々減っていた。それは僕が授業を担当しなくなったという理由以前に、同研修を受講する人の数が減ってきたことと、そのためか研修修了者の質の低下もあって、職に就いてもも続かない人が多くなってきたという理由が大きい。

僕が担当していた当初は、年数回の受講生募集に対して、毎年定員を超える応募があり、試験で受講者を選抜するような時期もあったし、狭い教室はほぼ満員で埋まっていた。それが徐々に人集めに苦労するようになってきた。それでも年間の予定回数はすべて実施できていたし、受講者数が20名を切るようなこともなく推移していた。僕が講師を務めていた頃はそうした状況が続いていた。

しかしここ1〜2年の状況は、受講者数が10人にも満たないという状態で、講座を修了しても、実際に介護の現場で活躍できるような人材もなかなか集まらない状況だということを聞かされていた。

そうした中、昨日になって同研修の来年度の募集は停止され、研修は開かれなくなることが分かった。

理由は受講生が集まらずに採算が取れないからとのことである。下の表は、同講座の終了者数の推移であるが、今年度はこの状況に輪をかけて、受講者・終了者数が減っていると言うことだろう。

初任者研修修了者数
このように受講者数が減っているのであれば、訓練校の経営上、赤字部門として切り捨てるという判断はやむを得ないかもしれない。しかしそれは収益を目的とした団体であればの話である・・・。高等職業訓練校という公的機関が、それでよいのかという議論がここであってもよいだろう。

介護サービスを必要とする高齢者は、まだ増え続けるのだから、そうした人々を支える人材育成の場が、人口5万人を超える地域に一つもないというのは危機的状況だ。いくら地域包括ケアシステムを構築しようとしても、それを支える人材が枯渇してしまえば、システムがあっても、それは機能しなくなり、そのことはその地域に介護難民を多数発生させ、最低限の文化的生活が保障されない人が多数生まれるという意味である。

社会全体の利益という面で考えると、採算を度外視しても人材を育成する必要はあるわけで、介護職員初任者研修を行政直営で実施するなどの対策を考えていかないと、この地域の介護サービスは崩壊しかねない。

例えば社会福祉法人の社会貢献事業として、複数の法人がタッグを組んだり、社会福祉法人に限らずに、サービス事業者が複数で協力しあう形で、同研修を続けるなどの対策が考えられてよいだろう。介護サービス事業者が、この研修を行うならば、講師は自前で派遣でき、その分の経費は浮かせることができ、大きな持ち出しは必要ないと思えるし、かりに持ち出し費用が必要になっても、複数事業者でそれを賄うことで、人材を少しでも確保できるのであれば、それは経営上は大きなメリットにつながるものと思える。そんな対策の協議の場が必要ではないだろうか。

僕の場合は、4月以降この地域でない場所で、介護サービス事業に携わるので、職業訓練校の介護初任者研修終了問題に主体的に関わる立場ではなくなるが、この地域で暮らす市民の一人という立場でいえば、将来介護サービスを使う必要が生じた際に、今の状況は放置できないように思う。

また現在所属している法人にとっても、今後の職員確保という点を考えると、僕という職員確保のための人脈豊富な職員を失う中で、初任者研修修了者もいなくなるという状況は、大いに憂うべき問題だろうと思う。

特に現法人は、来年4月に地域密着型特養を新設オープンするにあたって、そのための人材確保が必要になるが、僕がいる限り、職員募集に応募したいと希望していた介護福祉士は、僕の退職願提出の知らせに触れて、すでにすべての人が応募を辞退している。現職の中にも、退職を考えている人が複数おり、その人たちには思いとどまるようにお願いしているが、自分が退職する中で、それは説得力のないものとなっているかも知れない。

そういう意味で、僕の後任者(まだ決まっていません。)には迷惑と苦労をかけるかもしれない。それは本意ではないが、現状はそのような方向で動いいているという事実は、正確に伝えておかないとならないだろう。地域密着型特養の運営は、採算面で厳しいものがあり、大甘のシュミレーション通りになることはないことを含めて、間違った方向に進まないように、この部分は勘違いしないように伝えておきたい。

僕の我がままで、いろいろな人に迷惑をかけるが、やりたいことを実現するために、生涯最大のわがままをお許しいただきたい。

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