研修会の講師としてお招きを受ける際に、同じ研修会で別の講演を行う予定の方とご一緒することがある。

時にはそれが厚労省の方であったりする。そんな時に、介護業界の人材難対策として国として取り組みをきちんと行ってほしいという話をすることがよくある。

数年前までそこでは、「上には伝えておきます。」という話で終わることが多かったが、経済政策とも絡んで、具体的にいくつかの対策が取られてきたことも事実である。しかし目に見える形で、その効果は挙がっていないというのも事実だ。

それはなぜかと考えたとき、来年度予算の概算要求の中に見える、人材確保策にその失政の理由も見えてきているような気がしてならない。

例えば、介護福祉士の資格を持ちながら、仕事に就いていない「潜在介護福祉士」の情報を登録するデータベースの整備に乗り出すことにしているが、ここの部分には3.9億円の予算をかけようとしている。

しかしこのデータベースが、人材確保策として有効かと言えば、それには首をかしげざるを得ないことについて、「国の介護人材確保対策は機能するのか?」で指摘しているところだ。

そのほかに厚生労働省は、1年以上介護の仕事をした経験がある人が施設などに再就職する際、準備金として20万円を貸し付け、2年間継続して勤務すれば返済を免除する、新たな制度を設けるとしている。さらに介護福祉士の資格の取得を目指す学生に学費などを貸し付け、5年間介護の現場で働けば返済を免除する制度も拡充するとした。ここには261億円の予算組みをしている。

これは安部首長の掲げる新三本の矢の中の目標である、「介護離職ゼロ」を実現するための方策と言う意味ではあるが、このことで介護人材の確保に少しでも対策がされることは悪いことではない。

しかし国費負担を伴う新たな対策に、実効性がなければ、それは無駄でしかなく、結局のところ失政の付けが現場に回されることになりかねない。だから我々はその結果を注意深く見守って、検証すべきであるが、先を見通すとどうもこの対策の効果も怪しいと言わざるを得ない。

わずか20万円の就職準備金(2年の就業で偏在しなくてよいということを含め)が、就業の動機づけになるかと言えば、その効果はほとんどなく、もともと介護への就業動機のある人にとって、やや魅力的な金銭補助制度と言う程度の効果しかなく、これにより新たな人材確保につながる効果は薄いだろう。

介護福祉士の資格の取得を目指す学生に学費を貸し付け、5年間就労で返済義務をなくす制度は、一見魅力的に映る。

しかし介護福祉士の養成校に通う学費がないから、介護の職業に就けないという人が果たして何人いるだろうか?現実には、そういう人はほとんどおらず、そうであればこの対策はなんの効果ももたらさないのではないかと言う疑問が生ずる。

そもそも介護福祉士養成校の入学者が著しく減っている原因は、少子化の影響だけではなく、高校の進路指導担当教員が、過去の介護職ネガティブキャンペーンの影響によって、「介護の仕事に就いても、将来飯が食えない」という思い込みが強く残り、学生に一生の仕事とするならば、介護以外の職業を選択するように指導しているからである。

そうであれば、介護という職業の労働対価を上げる対策なしに、介護福祉士と言う資格を取るための学費だけを補助したとして、その状況が劇的に変化することにはつながらないだろう。

それに対しては、処遇改善加算で労働対価は上げているというのだろうが、どこの世界に、事業運営と切り離して職員給与だけを見て、職業を選択する人間がいるだろうか。そもそも加算で改善した給与とて、他業種の年収にはるかに及ばない事業者が多く、しかも3年間給与アップしない事業者があるのだから、魅力的な改善策とは言えないのである。

介護報酬の大幅引き下げで、一時的に給与が上がっても、長いスパンで給与改善の見込みはなく、むしろ事業継続の見込さえ怪しい職場で、自分が将来にわたって就業し続ける見込みが見えないという不安感を持ちながら働く場所に、たくさんの人材が張り付くわけがないではないか。

介護現場の人材難は、志のある有能な人材でも、将来の不安や実際に家族を養う給与ではないことにより、他業種に流出してしまう人材が多いことも一因なのだ。独身の間は、何とか暮らしが成り立っても、結婚して子供が生まれたら、自分の給与だけでは暮らしが成り立たないような待遇の職場がまだたくさんあるという現実は、そういう人件費でしか成り立っていかない事業経営の実態があるという意味である。

何も高給を求めているわけではないのだ。つましくても幸福な家庭を築ける程度の給与を、経験と能力に応じて手渡し、それでも事業経営が可能な基本報酬体系にしていかないと、介護の人材難・人員不足は解決しないだろう。

それはこの国の福祉政策を成り立たなくするという意味で、政府がその責任を果たせなくなるという意味である。一億総活躍など夢のまた夢になるという意味である。

そもそも予算とは、もっとも効果的に使う方法を考えるべきであり、人材難の一番の原因・理由に対策できる部分に集中的に予算を回すべきなのである。

一番効果が薄いのは、兵力の逐次投入と言う方法であることはわかりきっていることで、とりあえず予算措置ができる規模のところに、少ずつ予算を回すというやり方が、一番効果が薄く、ムダ金を垂れ流す結果にしかならないのである。

そう考えると、現在の人材確保対策は、まさに兵力の逐次投入で、各個撃破される垂れ流し策でしかないと言え、そこに期待できるものは何もないと言ってよいだろう。

アリバイ作りの政策決定は、いい加減にしてほしいと思う。

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