全国各地の介護施設で頑張っておられる職員の中には、素晴らしい理念と知識と介護技術を持たれている方がたくさんおられる。本当に素敵な方々は、対人援助の場でも輝いている。

それらの人々は、まさに「名もなき達人たち」と呼んでもよいだろう。

その一方では、理念も知識も技術も持たない素人が、介護サービスに携わっているという現状もある。それが人材不足を通り越した、人員不足という現状となってしまっている介護サービスの抱える闇である。ここを教育で変えていくことができるのか・・・。僕はそのことに大きな希望は持てない。

所詮、種は種以上の別のものにはなれず、きゅうりは茄子になれないのだ。人にも能力というものがあり、それは向上するものだと思うが、もともとそのキャパには個人差があって、対人援助に向かない人や、対人援助に携わるべきスキルに達しない人は、必ず出てくるからであり、介護人員の裾野を低いところに広げ過ぎた結果が、Sアミーユ川崎のような状態を生む大きな要因なのである。

「他に仕事がないから、介護でもやるか。」という考えの人が、簡単に就業できる状況が変わらなければ、虐待や不適切対応は増えることがあっても、決してなくならないだろう。

ともかく人手を集めるのではなくて、対人援助にふさわしいスキルを持った、有能な人材が集まることのできる職業にしていく必要がある。それは施設の数だけを増やして、人材を確保する手立てをしない施策では実現しないのである。この国の社会保障政策は一体どこに向かうつもりなのだろう。本当に心配である。

そんな中で、僕たちはアクトローカリーの精神から、自分の身の回り、自分の手の届く場所で、有能な人材を集めて、正しい教育を行い、利用者本位のサービスの実現を目指すだけである。

しかしその時大きな障壁になってくるのが、介護施設のトップが旗を振って、職員を洗脳するかのようなおかしな教育を行い、利用者本位などという言葉が存在しないかのような、「施設本位」の異常なサービスを日常化している実態である。

特に異常なやり方と言えるのが、個別のアセスメントをせずに、利用者全員に1.500ml/日以上の水分の強制摂取させることを、「科学的介護」と称している状態である。
(参照:異常な水分強制補給の実態に関するブログ記事一覧

そこでどのようなことが起こっているのかは、リンクを張った記事へ寄せられた、数々のコメントでも明らかである。例えばそれは、下記のようなものである。

・スプーン1口のゼリーですら、首を横に振って涙目になられ 浮腫で全身腫れあがっている利用者様に、どうしても無理強いする事が出来ず・・いつもユニットリーダーから叱られます。

・「水分摂取表」に、いつも当然のように「全量」と書き込む先輩介護福祉士の水分摂取介助の方法とは、「密室の中で、スプーン2本を使って無理やり口を抉じ開けていました・・・。」

・(無理やり口を開けさせられ水分摂取させられていた)利用者の、開いた唇の奥に異変を感じました。「少し、もう少し口を開いて頂けますか?」自分が大きく口を開けて、同じようにして頂くようお願いしたら・・・・舌の裏。血豆だらけでした。(涙が出ました)早出だったユニットリーダーに報告しても「そう。」とだけしか返事はなく。

・私が辞めれば、もうそんな光景を見なくて済む。けれど、私が居なくなった後もその光景は続く。毎日が本当に辛いです。そこまでして、一体何の意味があるのか?私には、どうしても理解できません・・・。


施設の方針で、無理やり利用者の口をこじ開けて、利用者の口腔内に血豆を作り、毎日苦しませているリーダーと、そのことをおかしいと涙する職員のどちらが正しいかは、一目瞭然だろう。

しかしこの施設では、利用者の口の中に血豆を作り、毎日口をこじ開け、苦しませる職員の方が評価されるのである。この状態を一部の職員の努力で変えられるだろうか?それは無理と言うものだ。

意見を異にすると罵声を浴びせられかねない研修会で、ひとつの方法論が正しいと思い込み、施設長のお墨付きをもらって、施設全体でそのことに取り組んで、他の意見を一切取り入れない状態では、正論もどこかに吹き飛んでしまう。

それはまるで洗脳された集団の中では、正常な感覚の持ち主が迫害を受けるのと同じ状態である。

残念ながらこういう場所では、正論はつぶされるだけなので、正常な感覚の持ち主は、そこから飛び出すしかないと思う。この状態が異常と思える人は、一刻も早くそういう洗脳集団から抜け出して、まっとうなケアに努める施設に再就職すべきである。

施設の財産ともいえる、才能も技術もある正常な感覚の持ち主が、櫛の歯が欠けるように、いなくなったときに初めて、異常な感覚の持ち主たちは、自分たちの間違いに気づくのかもしれない。

いやむしろ、辞めていくしか気づかせる方法はないだろう。だから介護を良くしたいと思う志の高い人は、そのような職場から一日も早く離れることをお勧めしたい。

※もう一つのブログ「masaの血と骨と肉」、毎朝就業前に更新しています。お暇なときに覗きに来て下さい。※グルメブログランキングの文字を「プチ」っと押していただければありがたいです。

介護・福祉情報掲示板(表板)

介護の詩・明日へつなぐ言葉」送料無料のインターネットでのお申し込みはこちらからお願いします。

人を語らずして介護を語るな 全3シリーズ」の楽天ブックスからの購入はこちらから。(送料無料です。