国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)が開幕し、日本の総理大臣も演説をしている。

その中で温暖化対策として、2020年までに官民合わせて年間1兆円から1兆3000億円に増額することを表明している。

温暖化対策費の中身は、気象観測所の整備とか地熱開発等であるが、そもそも地球温暖化は異常気象によるものではなく、気象変動によるもので、人為的にこの流れを変えることはできないという説も有力である。
(米国は、この説に依っているから、温暖化対策に本気で取り組んでいないのである。)

そのような対策費にかけるお金は、意味があるのだろうかと首をかしげたくなる。

国際貢献は大事だろうし、温暖化対策も重要だろう。しかしこうした国際会議や他国訪問のたびに、何兆円・何千億円という単位で国費が使われる状況を見ると、もっと内政にお金をかけることができるのではないかと思ってしまう。

これが国内にお金が余っている状況での支出なら理解もできるのだが、国民の命と暮らしを護るべき社会保障費の伸びを、毎年現状の1兆円から五千億円に抑える政策を取り、乱暴ともいえる介護給付費等の削減を実施する最中に、国際貢献の名のもとに、湯水のように財政支出がされる現状を、すべての国民が受け入れることができるのだろうか?

社会保障費の伸びに対する支出は、恒久財源が必要であり、一時的な支出増とは異なると言っても、超高齢社会の中で、国民の命と暮らしを守るための、年金・医療・介護を、必要悪のごとく処理して国家と言えるのだろうか。

それに超高齢社会の向こうには、人口減少社会が待っているが、同時にそこでは社会保障費にかかる費用も減っていく社会となる。そうであれば今現在の状況に適切に対応する政策なり、お金の使い方が求められようというものだ。

実質アベノミクスの恩恵は、地方には回っていない。そんな中で、社会保障費だけをターゲットにして、削減一方では、この国で生きる人の希望と誇りを奪いかねない。他国にだけ絹の衣装を見せびらかしても、国内の光の当たらない場所で、ぼろとわらをまとった国民が増えていくとしたら、それは亡国の施策でしかない。

そんな中で、新三本の矢なる政策では、介護離職を防ぐために特養やグループホーム、小規模多機能型居宅介護といった高齢者を支えるサービスを、2020年代初頭にかけて約40万人分(2014年度比)増やすとしている。

11/12に開かれた国民介護では、この数字を「50万人」に引き上げている。それは厚労省の持つデータ上、特養の待機者は2014年3月の時点で約52万人にのぼるという理由によるものだ。

しかしこの数字と、介護現場の実感には温度差がある。現に施設は存在するのに、空きベッドがいたるところにあるからだ。

その理由は、利用者がいないということにとどまらずに、職員が足りなくて一部のユニットを閉鎖せざるを得ないというものである。さらに厚労省のデータ数値には、複数の特養に重複申込みしている人の数や、今すぐには入所する気はないが、将来に備えて入所申し込みを早めに行っている人の数も含まれており、実態とはかい離している。

その中で箱ものだけ数を増やして、介護職員や利用者が集まるのかと考えたとき、それは絵に描いた餅であるとしか言えない。「介護離職」より先に、「介護者離職」を防ぐべきだという意見も多いが、それにも増して介護の職業に携わりたいという人が減ってきている現状を変えなければ大変なことになる。

そもそもこの施策には介護職員の給与改善財源を措置するという施策は含まれておらず、それは今後の検討課題とされている。そんな所に人が集まるわけがない。しかも仮に介護職員だけ給与をあげても、経営母体の運営体制が脆弱となれば、そんな場所にも人材は集まらない。

経営の基盤となる介護給付費を下げて、介護職員処遇改善加算だけを増やすという一時しのぎの施策には、限界と落とし穴が潜んでいることを、介護が崩壊してからこの国は知ることになる。

介護サービスの質は、介護職員だけによって保障されるものではなく、それを支える管理者や事務関連職員、その他の専門職が一体となった質である。そのことに視点を及ばせない施策の先にあるものは、安かろう悪かろうサービスでしかなく、しかもそれはいつも足りない、いつも及ばないサービスでしかなくなるだろう。

それは老後、健康を害したら野垂れ死にするしかない社会であり、一部の金持ちだけがそうならない社会であり、貧富の格差は、老後ますます影響が増大するであろう。

本来社会保障にお金をかけることは、社会のセーフティネットを構築するということで、このネットがずたずたに切り裂かれてしまう社会に、政治は存在しないということになる。

強い国家は、武器によってできるのではなく、国民の国家に対する愛と誇りによってできるものだということを、政治家は、今一度学習すべきである。

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