介護保険制度の運用では、しばしばローカルルールが影響することがある。

ローカルルールの存在は国も認めているところで、その意味は法律の運用上の解釈の大枠は国が示すが、地域の実情に応じた弾力的運用が必要な部分があり、それは地域の事情に精通した都道府県なり、市町村が判断すべきであるという意味である。

北海道の場合、この部分でおかしな判断はあまりないような気がする。道民及び道内事業者が、おかしなローカルルールを押し付けられて困ったという声をあまり聞くことはない。

しかし他県の状況を見ると、かつての「静岡騒動」や、「岡山のぼんくら指導」のような理不尽ルールをまかり通らせようとする地方役人が存在する。

このことに関して11/13に開催された、平成27年度指導監査対応室「全国担当者会議」において、厚生労働省老健局総務課介護保険指導室長の遠藤征也氏が、「指導監査のローカルルールに関しては非常に気にしている。残念ながら私たちの指導が行き届いていないことを、この場を借りてお詫びしたい」と述べ、、「指導監査職員研修では、事業者と行政がパートナーシップを結ばなければ、サービスの質の向上にはつながらないと強調して言っている。皆さんも地域の自治体職員と意見交換をしながら、お互いに目指すべきものや介護保険の本当の目的などについての意識を共有していただきたい」と訴えた。

小権力を握った地方行政職員の横暴な指導に対する嘆きの声と言ってよいと思う。しかしその声を、しっかりと地方行政職員にも届けてほしいと思うのは、僕だけではあるまい。

昨日も表の掲示板のスレッドには、「居宅サービス計画書にも通所介護利用時の送迎を明記するように」という指導を、通所介護事業者が受けたという情報が寄せられた。

しかしこれは筋違いである。居宅サービス計画上の記載漏れがあるとすれば、それは居宅介護支援事業所に対する指導として行われるべきで、居宅サービス計画作成に対して、何の権限も持たない通所介護事業所にそんな指導をしても、居宅介護事業所の担当介護支援専門が、「それは通所言介護事業所の計画に記載すべきことで、居宅サービス計画にそんなことを書く必要はない」と突き放されてしまえばそれまでである。

よってそんな指導を通所介護事業所に行うこと自体が大きな勘違いだ。

そもそもその指導内容は、正しいのだろうか。

通所介護の送迎費用は、基本報酬に包括化され、送迎を行わない場合の減算ルールが設けられた。それに関するQ&Aでは、「送迎減算の有無に関しては、個別サービス計画上、送迎が往復か片道かを位置付けさせた上で、実際の送迎の有無を確認の上、送迎を行っていなければ減算となる。」とされている。

ここでいう、「個別サービス計画」とは何か?それは明らかにサービスの処方を示すものだから、「通所介護計画」にほかならない。そしてなぜここで、通所介護計画と書かずに、個別サービス計画と書いているかと言えば、それはこのQ&Aが、通所介護と通所リハビリに共通するものだから、全体計画である居宅サービス計画に対して、通所介護計画と通所リハビリ計画が、「個別サービス計画」と表現されているという意味である。

このことは法令からも読み取れることで、「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」13条8において、「〜利用者及びその家族の生活に対する意向、総合的な援助の方針、生活全般の解決すべき課題、提供されるサービスの目標及びその達成時期、サービスの種類、内容及び利用料並びにサービスを提供する上での留意事項等を記載した居宅サービス計画の原案を作成しなければならない。」とされている。そしてここでいうサービスの内容とは、老企29号で『 「短期目標」の達成に必要であって最適なサービスの内容とその方針を明らかにし、適切・簡潔に記載する。』とされているのだ。その内容を読めば、送迎の有無やその方法などの詳細な計画ではないことは一目瞭然である。

一方で通所介護計画については、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」第九十九条 において、「指定通所介護事業所の管理者は、利用者の心身の状況、希望及びその置かれている環境を踏まえて、機能訓練等の目標、当該目標を達成するための具体的なサービスの内容等を記載した通所介護計画を作成しなければならない。」とされているのだから、「具体的な方法」として、送迎の有無や送迎方法を記載することになるものである。

勿論、通所介護計画は、居宅サービス計画が立てられている場合は、その内容に沿って作成する必要があるが、居宅サービス計画の総合的援助方針に沿った内容に通所介護計画の内容がなっておればよいだけの話で、サービスの処方である、細部の送迎の方法やその有無、機能訓練の内容や医学的リハビリテーションエクササイズの必要性を書く必要はない。
(参照:内容に沿うという意味を理解するために

どちらにしても、ローカルルールによって、法令解釈を狭く厳しくすることは、指導担当者の自己満足にしかつながらず、住民や介護サービス事業者に不利益しかもたらさない。そんな理不尽なルールが、人の暮らしを護るための制度の中にあってよいはずがない。

本来一定の行政判断ができる権限とは、一種の権力であるのだから、その力を握る人々は、そのことで人を傷つけてしまわないのかと言う方向で、権力の行使に謙虚になるべきである。

来年から定員18名の通所介護は、地域密着型サービスになり、指定権限や指導権限が市町村に移る。平成30年以降は居宅介護支援事業所も市町村の指定となる。権力に酔う小役人の自己満足ルールがまかり通る実態を変えていかないと、地域包括ケアシステムと言う名のもとに、小権力者狭量裁定が制度の精神をゆがめる結果につながってしまうだろう。

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