我が国では、団塊の世代が全て 75 歳以上となり、医療ニーズを併せ持つ要介護者の増大が見込まれる2025 年に向けて、「地域包括ケアシステム」を構築していくことが喫緊の課題とれており、その目指すところは、保険料と公費で支えられている介護保険制度の持続可能性を高めることである。

つまり限りある財源を必要なところに重点配分するために、制度改正が行われているという意味であり、通所介護の報酬引き下げは、今までそこにあまりに偏った報酬の重点配分があって、それを是正したと理屈づけられている。

しかし報酬は削減したものの、役割は新たに追加されている。それが以下の図に示された、「地域連携拠点」としての役割りである。
地域連携拠点としての通所介護のあり方
構築が急がれる「地域包括ケアシステム」の中で、通所介護の役割りは、医療機関や他の介護事業所、地域の住民活動などと連携し、通所介護事業所を利用しない日でも利用者を支える地域連携の拠点としての機能を展開することとされ、そのために生活相談員の専従要件を緩和し、事業所内に限った利用者との対話を主体とした相談業務のみならず、サービス担当者会議に加え、地域ケア会議や、利用者の地域生活を支えるための取組にも参加できるように基準変更されている。

これが、「相談員は街に出よう」というスローガンであらわされている新たな通所介護の役割りであり、求められる機能である。

介護報酬が減らされ、人員配置を増やすことが困難な状況で、役割だけ増やされても困ると考える向きはあるだろうが、通所介護と言うサービスの存続のために、その役割を果たしていくという努力は必要だろう。同時のそのことが、地域から信頼される事業者として、顧客確保につながっていくのであれば、それに越したことはないと思う。

ただ、「地域連携拠点」という重い役割は、相談員が頑張るだけで実現する機能ではない。通所介護の全職員がそうした意識を持ち、相談員が事業所から外へ出て活動することの理解と支援を行うだけではなく、自らが地域連携拠点としての役割を担った事業所に所属しているのだという意識を持ち、すべての職員がその責任を担うという意識付けが不可欠だろう。

地域連携拠点としての機能は、あくまで通所介護を利用する人を、利用日以外も支援できる機能であるが、利用者が暮らす地域に生きる人を、何らかの形で支援できるのであれば、それは利用者の生活の質にも必ずつながっていくのだから、現在の基準の中で、通所介護職員ができることを、新たにに見つけていくことは重要になる。

そもそも通所介護事業所には、相談員以外にも、多職種の人が配置されている。その中で送迎業務には、配置基準にはない職種の人も含め、様々な職種の方々が携わっている。現に街に出て業務をしている人は、相談員だけではないのである。

多くの事業所では、複数台数の送迎車を出しているだろうから、介護職員が送迎業務を行っている場合も多いだろう。そうであれば、街に出るのはそうだ人だけではなく、送迎業務の中で街に出る人たちが、そこで地域連携拠点として、どういう役割を果たすべきかを考えることが、地域包括ケアシステムが機能するためには重要になる。

例えば、運転業務に専従している職員もいるはずだ。例えば併設施設の営繕業務を主として、通所介護の送迎時間のみ運転手として関わっていたり、法人全体の運転業務の中で、通所送迎に関わっている人も多い。

このように介護業務の経験はないものの、利用者送迎の運転業務に携わっている人もたくさん居られるのだろうと想像する。

そうした人たちの専門性は、運転業務というものの中に求める専門性であって、安全運転に努め、送迎中、利用者の皆様に気持ち良く車内で過ごしていただくことや、そのための運行管理であることは言うまでもない。

しかし同時に、それは介護サービス事業の中での運転業務であるということを自覚して、地域連携拠点事業者に所属する職員としての専門性を意識し、その責任と使命を果たすという意味においては、別な役割もあるのではないかと考える。

このヒントは、岡山県倉敷市のYさんからいただいたものだ。過去2回倉敷市で講演を行ったことがあるが、その際に常にお世話になっているYさんは、介護事業運営やアドバイザーの仕事の傍ら、通所介護等の送迎などにも係ることがあるそうで、その際には、送迎地域にどのような高齢者が住んでおられるのかを把握することに努め、高齢者世帯の様子を常に確認し、そのお宅のカーテンが日中でも、閉まりっぱなしではないか、洗濯物がずっと干されたままではないかなどを確認し、異変があったら、そのお宅を訪ねて安否確認するようにしているそうである。

こうした意識は非常に大事なことだと思う。

地域包括ケアシステムの基盤は、保健・医療・福祉・介護に携わるそれぞれの専門家が、自らが地域福祉を形成する人的資源であることを意識し、ネットワークを作っていくことが重要で、まさにアクトローカリィーの精神と実践が求められてくるわけであり、そうした連携の拠点として位置づけられた通所介護の運転担当者は、運転業務だけではなく、運転する街で何が起こっているのかを知ろうとして、そこで自分自身が地域ネットワークの一員として、出来ることを実践していくという考え方が必要である。

今国が進めている地域包括ケアシステムは、お金をできるだけかけないシステムとして考えられているので、地域ごとの介護サービス事業者の意識の差が、地域包括ケアシステムを形骸化させるのか、実効性のあるものになるのかという分岐点になる可能性が高い。

地域連携拠点に位置付けられた通所介護事業所が、その役割を本当に担えるのかどうかによって、地域包括ケアシステムが機能するか、形骸化して単に地域丸投げケアシステムに陥るかどうかの分岐点になるのかもしれない。

こんな話も含めて、12/4(金)19:00〜札幌市手稲区渓仁会ビル(手稲区前田1条12丁目1−40)にて、「地域包括ケアシステムにおける通所サービスの役割と期待」をテーマに講演(手稲区通所サービス連絡会研修会)を行う予定がある。

受講対象は、「手稲区通所サービス連絡会会員」となっているが、非会員の方は、当日入会(年会費1.000円)してからの参加が可能だそうである。詳しくは貼りついたリンク先を参照のうえ、お申込みいただきたい。

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