下記の図は、関係者には見慣れた(あるいは見飽きた)地域包括ケアシステムのイメージ図である。

ここの右上の方に、「施設・居住系サービス」として、特養と老健が、特定施設やグループホームなどとともに記されている。
等と記されているが、この中には、「介護療養型医療施設」も入るのだと思える。この施設が表記されていない理由は、同施設が法律では、2017年度(2018年3月末)までに廃止されることになっているからであろう。(※ただし、現在の方向性は、何らかの形で存続させるというところに向かっている。)
このように介護施設も地域包括ケアシステムを構成する要素であり、その意味は介護が必要になった人が、地域で暮らし続けるための機能を持つという意味である。
特養の場合ならばその意味は、身体介護が必要になり、その状態が重度化した後に「住み替える」ことのできる、「暮らしの場」であり、できればそこは、看取り介護も提供できる終生施設としての役割りと機能をもつことが期待されている。
老健の場合は、基準省令第一条の二において『介護老人保健施設は、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことにより、入所者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにすることとともに、その者の居宅における生活への復帰を目指すものでなければならない。』と定められているのだから、在宅強化型老健に限らず、在宅復帰機能を持つ施設であることは言うまでもない。
地域包括ケアシステムの中でもこの機能は重要で、住み慣れた「住まい」に復帰するために、リハビリテーションを提供し、身体機能の向上を図ることが求められていることも間違いない。しかしそこになぜ「ターミナルケア加算」という算定単位が存在し、ターミナルケアの機能が同時に求められているのかをも考える必要がある。
これに関連しては、第105回(H26.8.7) 社保審−介護給付費分科会に面白いグラフ資料が提出されている。

老健のターミナルケア加算は、全体的には算定率が低い状況ではあるが、資料グラフからわかるように、在宅強化型老健の方が従来型老健より算定割合が高いことが読み取れる。
これはなぜか。在宅強化型老健は、在宅復帰率とベッド回転率が一定割合を超えていなければならない施設である。そうなると個別リハビリテーションを充実させて、在宅復帰を視野に入れた利用者が入所してくることになり、特養の待機のための利用と言う人が少なくなり、利用者の入所期間は自ずと短くなる。その中で在宅復帰していく人が多くなるという状況が生まれる。
在宅復帰した人に対しては、老健からの訪問リハビリなどで退所後のフォローもしている場合が多いが、それでも退所された人が、ずっと身体機能を維持できるわけではないので、一定期間自宅等で過ごした後に、老健に再入所し、再び在宅復帰を目指すというケースが増えてくる。こうした利用を複数回繰り返すことで、ずっと施設入所したまままではなく、一定期間は自宅等で過ごすことができる人がいるわけである。
そういった利用者が、最終的には老衰などで回復不能な終末期になった時点で、なじみの職員がいる老健で終末期を過ごすことを求め、老健に入所してターミナルケアを受けるというケースが増えているのだ。
つまり老健で行われるターミナルケアは、老健で過ごしている人がそこで身体状況が変化して終末期を迎えるというケースにととまらず、何度か老健を利用しながら在宅で生活していた利用者が、自宅等で終末期の状態になり、その対応が自宅等では難しいことを理由にして、ターミナルケアを受けることを目的に、老健に入所するというケースが多いのである。
特養の看取り介護では、このようなケースはほとんど見られない。そういう意味では、老健のターミナルケアの特徴は、繰り返し老健を利用しながら在宅生活を維持していた人が、最後はターミナルケアを受けるために老健に入所することであり、それは地域包括ケアの中で求められる役割ではないだろうか。
現に今年度の介護報酬改定時に、老健のターミナルケア加算のついては、「老健でのターミナルケア・看取りは、利用者の長期間の在宅療養支援の結果として行われるものであり、このような観点からターミナルケア・看取りを評価。」と解説されている。
そうであれば、このコンセプトは既存型老健にも通用するものなのだから、在宅復帰した人が、繰り返し老健施設を利用しながら、最終的に老健で最期の時を過ごすというところまで見通しながら、利用者の暮らし全体を支えていくと考える必要があるだろう。老健の支援相談員の意識も、そこに向けて関係構築していくという視点が必要ではないだろうか。
このように、老健の在宅復帰機能と、ターミナルケアの機能は、相反する機能ではなく、在宅復帰を目指す先に、高齢期の終末をも支える機能を併せ持つという意味で、両者は矛盾しないと考える必要があるのだ。
そして地域包括ケアシステムの中では、老健と言う施設の中だけで完結するサービスに陥らないように、最期もきちんと対応できるターミナルケア機能を持つからこそ、地域の中で利用者を支援できるのである。
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