僕は登別市内で、様々な公的な役職を拝命しているが、その一つが民生委員推薦会委員というものである。

この委員会は、市内各地域を管轄する民生委員の定期改選や解嘱・欠員補充の委嘱について、民生委員としてふさわしいかどうか等を判断し、承認するための機関である。

委員会の事務局は市が担当するが、委員については登別市議会議員、町内会長、民生委員、市役所職員などいわゆる地域事情をよく知る有識者と呼ばれる人たちが専任されている。僕は社会福祉施設の施設長と言う立場で選任されている。

その推薦会が昨日も開催された。新たな民生委員の推薦の承認については問題なく行われたが、「その他」という議事に移ると、議長から事務局に質問が出された。

その内容は、「介護保険制度が変わって、29年度から介護保険が使えなくなる人がいて、その人たちのサービスは、町内会単位で行う必要があるとされているが、民生委員の担当地区は町内会の区割りとは異なっているので、制度改正に備えて、町内会単位に変えようという考えはないのか?」というものである。

その質問に対して、事務局である市の担当者は、「今のところ担当地域を変える考えはない。」と回答し、この質疑はそれで打ち切られそうになった。

しかしこの質問には大きな誤解がある。そもそも質問者が問うていることは、要支援者の訪問介護と通所介護が、市町村の新総合事業化されることを指していると考えられる。登別市の予防訪問介護と予防通所介護の移行時期が29年4月からであり、その時期に民生委員の地区割りを町内会単位に変える必要はないのかというのが質問の主旨と思える。

しかし29年の新総合事業実施時期に、要支援者は介護保険が使えなくなるわけではないし、新総合事業も町内単位で実施されるわけではない。そのグランドデザインを町内会役員が中心になって示すものでもない。

このまま質疑が打ち切られ委員会が終了すれば、民生委員推薦会という公的機関の委員が、新制度ルールを誤解したまま帰ることになり、そのことによって地域内でさらなる誤解が生じ、市民レベルで不安が広がる恐れがあると思った。そのためこのようなあやふやな理解のままにして帰すわけにはいかないと思い発言を求めた。

そこで、新総合事業は市町村単位で実施されるもので、要支援者が介護保険制度を使えなくなるわけではなく、介護予防訪問介護と介護予防通所介護が、市町村の事業に移行し、そのサービス形態は市町村ごとに異なって、ボランティアなどの活用も考えられる中で、町内会の社会資源の利用が模索されることにはなるが、町内会単位での新しいサービスを創らねばならないものでもなく、民生委員の活動地域を変える必要性もないし、そのことは直接制度のルール変更とリンクするものではないことを説明した。

委員会のあとに他の委員の方からも、「町内会や町内会長が、主体的に何かをしなければならないという噂もありますけど、違いますよね」というようなことを確認されたとして、基本的には新事業のグランドデザインは市の責任で構築され、そこに町内会として協力する必要が出てくるかもしれないが、町内会がそのことを主導するわけではないことも説明した。その中で、「混乱している情報に振り回されている部分があって、心配していたけど、安心しました。」という意見もいただいた。

このような委員会の理解レベルもこの程度であるし、市町村が実施する事業と言っても、担当課が違えば、その職員であるにもかかわらず、このことの説明や的確な質問への回答ができないのが現状であることを思い知った。

そうであれば、一般市民レベルで、「地域包括ケアシステム」とか、「地域支援事業、新総合事業」などと言っても、どれだけの人が、その正しい意味が理解できているかを考えると、それはほとんど理解されていないというのが実情だろう。

そういう実情を鑑みれば、この地域の地域包括支援センターの、市民に対する情報提供はまだ不十分であると言わざるを得ないし、今後どういう形で、地域包括ケアシステムというものを、市民に対して、「見える化」していくかが大きな課題であると言わざるを得ないだろう。

そのためには地域包括支援センターの職員全員が、そのシステムに対する正しい理解と、共通認識を持っていることが前提になるが、それは大丈夫だろうか?

このブログでは何度か指摘しているが、地域包括ケアシステムでは、保健・医療・福祉・介護の専門家のネットワークが求められるが、そのシステムを使って支援するのは、専門家ではない市民であるのだから、システムが地域の隅々まで浸透し、機能するに当たっては、市民の理解が不可欠になる。

生活課題を抱えている人が、何を目的にケアチームが動いているのかが分からないと、不安を抱えたままサービスを利用することになり、エンパワメント(個人が自分自身の力で問題や課題を 解決していくことができる社会的技術や能力を獲得すること)に結びつかないからである。

そういう意味で、民生委員や町内会役員といった人たちが、現時点でこのシステムで造ろうとしているネットワークとはなんなのか、市の新しい総合事業とはどんなものなのかを知らないというのでは大いに問題だろう。

そう多くの時間があるわけではない中で、地域包括ケアシステムのグランドデザインを明らかにしていかないとならいないという課題が浮き彫りになったと言えよう。

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