僕が住む登別市及び生活圏域がほぼ同じと言ってよい室蘭市に、現在まで地域包括ケアシステムは存在していない。
そしてこの地域に、どのように地域包括ケアシステムを創ろうとしているのかという具体的な動きは全く見えない。
地域包括ケアシステムが機能するためには、新しく法制化された「地域ケア会議」が重要となるが、その新しい5つの機能を発揮するように、地域ケア会議が実施されている節もない。だから地域包括ケアシステムの基盤となる、保健・医療・福祉・介護の包括的ネットワークの構築の取り組みは全くなされていない。
そんな中で制度改正に沿った新総合事業への準備などが進められているわけであるが、新しい制度上のルールに変更するだけで、地域包括ケアシステムが自然発生するわけではないということを指摘する人もいない。だからあえて今日はこのことを指摘しておきたい。
地域包括ケアシステムは、人的ネットワークが基盤となり、そこでは地域を拠点に、様々な人々の生活課題に対応した支援システムを機能させるのが目的なのだから、その共通理解と、具体的活動を創りだしていかなければならない。
しかしながら、この地域でそのような動きはほとんど見られず、地域包括支援センターが躍起になっていることといえば、11月11日の介護の日に向けたアリバイ作りのようなイベントであったり、とってつけたように「地域包括ケアシステム」をテーマにした講演会を行っているだけである。そこでは実効性のあるネットワークづくりは全く行われていない。
地域包括ケアシステムをテーマにした講演会にしても、そもそも講師が地域包括ケアシステムは何かということを理解していないと思われるような講演ばかりである。少なくともそこでは、国が当初示した概念や、後に変更された概念(平成25年3月地域包括ケアシステム研究会報告書による)が示されることはなく、単に地域内で多職種が協力し合おうね、というような結論で終わっている。
地域包括ケアシステムの概念自体が、在宅で支える〜早めの住み替えが基盤となる、に変更されていることに気が付かない人が講師役を務めて、果たして地域包括ケアシステムが機能するのだろうか。
そうした講演では、受講者もきちんとした概念が示されないので、受講後もその理解には幅がある。それぞれの違った概念の「幻想的地域包括ケアシステム」が誰かの頭の中だけに生まれる結果しか生んでいないのが、登別市や室蘭市の現状である。
地域包括ケアシステムをテーマに語る講師であるなら、少なくとも地域包括ケアシステムとは何かということを正確に理解しておらねばならず、そうであれば国が「地域包括ケアシステム」という言葉を正式に文書において使ったのはいつで、どの文書であったのか、その時にモデルとしたシステムとは、どこのどのようなシステムであったのか、そしてその概念はどのように示され、どのように変えられてきたのかを説明できなければならない。
予防通所介護等が、新総合事業に移行するだけで、国の財源負担が減る構造の理解もない人が、地域包括ケアシステムを語ってよいのだろうか?
そんな基本理解もない人が、地域包括ケアシステムを語る先に、何が生まれるというのだろうか。
地域包括ケアシステムの目的の一つは、慢性疾患があり、日常的に医療支援が必要な高齢者を、できる限り入院しないで、地域(自宅ではない)の中で支えていくのだから、日頃から健康を管理し、適切な医療支援を行う、「かかりつけ医師」の存在は大事である。そして介護予防や、自立支援につながるケアマネジメントも重要だろう。そんなことはわかりきったことだ。
問題は、それらをどうやってつなげていくのかという具体策である。多職種連携を個人の資質や、個人のネットワークに頼らないところで、有機的に結びつける具体策がなければならず、その基盤となる「地域ケア会議」の在り方を議論し、機能する会議を徹底的に創り上げていかねばならないのに、地域包括支援センター内に、そのことを理解して実施しようとする動きは皆無である。リーダー役となる人材がいないのではないかと疑わしくなる。
僕はこの地域以外では、「地域包括ケアシステム」について解説する機会をたくさんいただき、そのアドバイスもしているが、そうであるからこそ、他の市町村で、地域包括ケアシステムを実効性のあるシステムとして運用しようと頑張っている人たちに実際に逢って、そこで実際に動き始めている新しいシステムが存在していることも知っている。
それと比べると、当市や隣市の動きは鈍いし、そのことに関する危機感も見えない。
自ら暮らす地域の現状が、口先だけの地域包括ケアシステムになりつつあることには大いなる不安を持っている。それは単なる「地域丸投げケアシステム」というだけのもので、保険者である市が権限や一定財源を持っているだけで、支援システムの実情は、制限するシステムにしかならないからである。僕達の老後は、この地域の中でどのようなものになるのだろうかと不安しか感じられない。
よって現状で、登別市や室蘭市の行政関係者(地域包括支援センターや社協を含む)が、地域包括ケアシステムを語るとしても、絵空事としか思えないのである。
そうなると地域包括ケアシステム研究会報告で示されている、「ニーズに応じた住宅が提供されることを基本とした上で、」=「早めの住み替え」とは、自分の身体・精神機能に応じた住み替え以前に、地域包括ケアシステムの機能のある市町村への住み替えということが現実的になるかもしれないと考えてしまう。
どちらにしても、日本の新たな格差社会とは、市町村ごとのケアシステム能力の格差とイコールになっていかざるを得ないのだろうと思ったりしている。
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