社会福祉施設は、地域住民の方々の善意と、奉仕の精神を拠り所にして成り立っている部分も多い。
当施設の日々の暮らしに潤いを与えてくれる各種行事は、大小合わせると様々なものがあるが、日本の古くからの風習に基づく季節行事などは、職員の手だけで行うことができるものと、そうでないものとがある。例えば盆踊りや餅つき、お祭りなどは地域住民の皆様のボランティア支援により行うことができているもので、職員の手だけで実施できるものではないのが実情だ。
また善意の寄付を受けることも日常的に行われており、それは金銭だけではなく、日常生活に係る物品など実にこまごまとしたものに及んでいる。
特養の場合、3大介護として排泄ケアは重要であるが、紙おむつや紙パットが普及した今日でも、排泄物を処理する際に、使い捨ての布が大量に必要となる。そのため各家庭で不要になった、タオルやシーツ類をきれいに洗って、30センチ四方くらいに切ってまとめた布類は貴重な日常生活上の必需品である。こうしたものを集めて寄付協力してくださる地域住民の方は非常に多い。本当に助かっている。
こうした支援行為を継続してくださる方は、施設側のお礼を求めているわけではないと思うが、せめて礼状という形で、感謝の意を示そうと思い、ボランティア活動や、寄付物品をいただいた際には、礼状を必ず書いて送るようにしている。
しかし昨今のように、コンピューターで文書を作成するのが当たり前になってくると、こうした礼状もフォーマット化して、あて名と日付だけを変えて、毎回同じ文書を送ってしまうことになり、そのことに何の疑問も持たないようになっている自分がいた。
奉仕してくださる人が、そのことを不快に思うことはないのかもしれないが、このことももしかしたら、奉仕されることが当たり前のように感じている施設側の感覚麻痺なのかもしれないと反省させられたことがある。
それは、ある職員が送っていた手書きの礼状について、市民から寄せられた感謝の言葉から感じたことである。
先日、僕の義父の知り合いと言う人から、施設に電話が入った。こまごまとしたご挨拶をいただいたが、なぜわざわざ施設に連絡をしてきたのか要旨がわからずにいると、「実は〜」という形で本題の話になった。
聴けば、その方の知り合いで、僕の施設に定期的に寄付をしてくれている方が、当施設から毎回送られてくる礼状に、いたく感激しているというのである。
ワープロ機能を使った印刷文が多い中で、毎回手書きで、丁寧な文字で礼状が送られてきており、それもいつも心のこもった内容で、礼状をもらうたびに、感激しているというのである。
しかしこの話を聞いた際に、僕はそれは何かの間違いではないのかと思った。礼状は送っており、その際の発送整理簿には、僕も決裁印を押しているが、そもそも礼状は、PCで作成したフォーマットがあり、それにあて名と日付を入れただけの文書になっているので、手書き文章の礼状に心当たりがなかったのである。
しかし電話してきた方が話されている内容も齟齬がないため、「担当の人に、是非手紙を受け取っている人の感謝と感激を伝えてほしい。」という希望については、一抹の疑問を持ちながらも、快く引き受ける旨お話しして電話を切った。
そのあと担当者に、そういう電話があったことを伝え、手書きの礼状を送ったことはあるのかと尋ねると、「普通に、いつも手書きで感想を書いて送っている。」とのことである。なんと僕は発送整理簿に決裁印を押してはいても、封筒の中身まで確かめていなかったので、そのことに気が付いておらず、印刷文を使っていると思い込んでいたのである。
しかし担当者は、ごくまれに一度きりの寄付の場合は、印刷文の方が読みやすくて良いと思うけれど、頻回に寄付をくれる人の場合、いつも同じ文章で日付だけ変えて送る礼状は、機械的に感じてかえって不快になるかもしれないと考え、毎回自筆で、その時々の感想を書いて送っているというのである。
そう聞くと、なるほどその担当者の言うとおりである。本来なら、日頃偉そうなことを言っている僕自身が気が付いてよいところを、実際には全く気が付かず、職員が気を使って対応してくれている状態を見せつけられて、そのことはとてもうれしく思うのと同時に、もうここでは、自分以外の誰が管理者をしても大丈夫だろうと思った。
礼状を手書きで送るという行為だけで、感動してくれる人がいるのだから、そうした真心を大切にすべきだし、そのことを教えてくれた職員には新ためて感謝したいし、そうした事を当たり前にできる職員がいることを誇りに思いたい。
地域包括ケアシステムとは、本来こうした真心で、市民と介護施設がつながっていくことから始まるのかもしれない。そんなことを考えている昼下がりである。
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