本年4月の介護報酬改定時に、特養・老健・療養型共通で、経口維持加算の見直しが行われているが、この見直しは、介護報酬が減額された中では、数少ない収益増につながる改訂であった。
(参照:施設系サービス(共通)の口腔・栄養に関する報酬は何を示唆しているのか?)
リンクを貼った記事にも書いたが、この加算は、経口摂取を続けることで可能となる自立支援や、経口摂取を続けることができる生活の質を評価した加算であることは間違いがない。そのために安易に経管栄養に移行しないというケアの方向性を創るという意図が含まれていることも間違いないだろう。
同時にその先には、経口摂取できなくなった場合の選択について、機械的に経管栄養を行うということではなく、対象者の状態像を精査したうえで、そのまま看取り介護に移行するという選択があることも示唆したものではないかと想像する。
当然そこでは、利用者本人の意思を確認しようとする基本姿勢が求められるべきであり、経験栄養の適応を、施設と家族のみで判断するということではなく、利用者自らが終末期をどう過ごしたいのかという意思を確認する方法やシステムの構築が検討される必要がある。
つまり本年4月の施設報酬改訂の中には、利用者のリビングウイルをどう尊重するかという考えが盛り込まれてきているのだ。
そしてそれは相談援助職にこそ求められる利用者支援であると言え、介護施設のケアマネジャーや相談員は、利用者から信頼感を得て、「死について語ること」をタブー視せず、利用者に自身の死について考えておく必要があることを伝え、その際に必要となる情報と選択肢を示したうえで、もっとも自分にとって望ましい終末期の過ごし方を、あらかじめ選択しておくことができる支援を行う必要がある。
当然そこでは、食事を経口摂取できなくなった場合の選択として、胃瘻を増設するのか、経鼻経管栄養を選択するのか、どちらも選択せず、点滴などの医療行為も必要最低限にとどめ、自然死を望むのかという選択が含まれるであろう。
そのことが日常支援として行われることによって、利用者の終末期に対する意思を確認する役割と、認知症などでその判断ができない人の立場に立って代弁者となる役割がより強く求められるという意味である。
そして人生の最終ステージを安心・安楽のうちに過ごすことができる体制整備をしていく必要がある。そこでは、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)の頭文字を取ったPDCAサイクルの構築が求められている。それは看取り介護に関してだけではなく、すべてのサービスにおいて求められてくるものであり、根拠に基づいた計画実施と、その振り返るによる検証作業、地域貢献の視点も含めた実践後の地域住民への傾啓蒙活動というアクションサイクルを繰り返していくことが必要とされるのである。そのサイクルを構築し、検証を重ねる現場リーダーが、施設サービスにおける「頭脳」の役割を担う相談援助職に求められることは明白である。
このように地域包括ケアシステムの中で,多様化せざるを得ない高齢者の「暮らしの場」の選択肢の一つとして,介護施設の存在意義を考えていく必要がある。
自宅介護の限界を肩代わりして、何とか命を繋ぐケアを行うということが施設サービスではなく、自宅で生活困難となった人々の「暮らしの再生」を目指すケアの品質が求められ、結果としてより良い暮らしを介護施設という住まいの中で実現する視点が必要だ。場合によってそれは限界点に達した家族介護によって、崩壊した家族との人間関係を紡ぐことであったり、身体機能や健康状態を向上させる取り組みであったり、生活環境の改善により暮らしが豊かになることを目指すものとなるだろう。
生活課題を解決し得ない状態で、自宅で生活し続けている人々が、介護施設という新たな居所を得ることによって、そこで自らの暮らしを再構築し、自宅で暮らしていた以上の状態で、豊かな暮らしを営むことが求められている。
つまり在宅生活が困難になった人が、介護施設に入所さえすれば問題解決するという考えは間違っており、施設という器の中で限局的に問題発生があっても、家族等のインフォーマル支援者に迷惑にならなければ良いという考えも間違っており、利用者自身が施設内でいかに豊かな暮らしを送ることができ、家族等との関係が途絶せず、幸福感を持って暮らし続けることができるかという結果を求めなければならないということだ。
それを目的としなければ、介護施設の存在意義は極めて薄くなるだろう。
それは地域包括ケアシステムの中で、特養などの介護施設も、「暮らしの場」の選択肢の一つになっていくという意味であり、そう考えると、介護保険制度は近い将来、居宅サービスと施設サービスを区分する必要性はなくなり、住み慣れた自宅以外の「住まう場所」の選択として様々な生活が考えられてよく、「在宅介護の重視」は形骸化した概念とならざるを得ないだろう。
その中で安心と安楽の暮らしを創り、それを護るコーディネーターとしての施設相談援助職は、施設を拠点に街に出て、地域福祉をコーディネートする役割を担うことになり、その重要性はさらに高まるだろう。
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ご無沙汰しています。
今日、ブログのタイトルを変更したご報告と、明日、東京にお越しとの連絡をいただき、お誘いを受けたので、お邪魔しますというご報告です。
東京は予定どおりでしょうか。
まぁ大勢のようなので、ゆっくりお話しする時間もないと思いますが、楽しみにお待ちしています。
では。