有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームなど、高齢者の住まいが多様化してくる中で、都市部を中心にそれらの施設が乱立していき、利用料の値引きをともなう利用者確保の競争が起きてきた結果、待機者を抱え、満床状態が常であった特養に、空きベッドが生ずる危険性が生まれていることについて、「特養を巡る景色が大きく変わりつつある」という記事を書いて解説している。

そこでは、「都市部における過当競争が生んだ状態が、地方に波及しつつある」ことににも言及している。

ところで今朝の北海道新聞では、特集を組んで、「地方の特養の欠員問題」を取り上げている。人口減少の進む地方の特養では、定員割れが常態化し、施設長をはじめとした職員が、札幌などに営業行脚しているというのである。

それらの施設では定員の1割以上が欠員になっているところもあるという。

確かに日本は人口減少社会になってきているが、道内の地方の特養の定員割れを、「人口減」が主因であるとする分析はいかがなものなのかと首をかしげる。記事に取り上げられた地域事情も、僕はよく知っているけれど、特養の定員割れをもたらすような急激な人口減少が起きているとは思えない。むしろそれらの地域の高齢化率はここ10年で、10%台から30%台へと急激に増加しているのだから、人口減をカバーするに余りある、特養入所ニーズが生じていてもおかしくはない。

しかし事実として、それらの特養には空きベットが生じている。その本当の原因とは何か?

北海道の事情でいえば、特養の建設誘致は、地方の方が熱心であったという歴史がある。広大な敷地があり土地が安く購入できる事情から、そこに経済対策・雇用対策として特養誘致の動きが生まれ、市町村が特養建設に対する独自の補助を手厚くしたことによって、地元の名士などが社会福祉法人を立ち上げて、特養を建設するという動きが広まった。

その結果、人口が数千人の町村部と、人口が数万規模の市部との、特養の収容人員がほとんど同じであるという現象も生まれたし、土地の安い郡部であるからこそ、施設を拡充してその数も増やすことが容易だったという事情も相まって、住民人口に比して、多すぎるのではないかと思えるほどの定員施設が創られた地域もある。

しかし介護保険制度創設以前や、創設直後までは、そうした地域の特養にも、居住地の施設が満床であった事情から近隣市町村の住民が流れてきたという背景があった。

その背景事情が変わってきているというのが、地方の特養の空きベッドを生じさせている最大要因である。つまり地方への人の流れが止まったという要因があるということなのだ。居住地域からは慣れなくとも、居住地域に、特養と負担があまり変わらないグループホームや有料老人ホームやサ高住があるという事情なのである。

さらに地方にも、グループホームをはじめとした、高齢者の新たな住まいの選択が増えているということも、特養の空きベッド問題に拍車をかけている。この背景を考慮せず、「地方の人口減が空きベッド問題の本質」であると勘違いして、「空きベッドを埋めるために、今でも待機者が多い札幌などの都市部への営業を強化しよう」と考えるだけでは、この問題は解決しない。

現に札幌に営業に出ても、空きベッドが全部埋まらないのはなぜかということを考えなければならない。

それは都市部には選択できる暮らしの場が、さらに多様化して増えているという意味なのだ。近くであると言っても、わざわざ土地勘も郷愁もない知らない街の施設に入る動機付けは生まれにくいのである。

札幌の特養の状況を見ても、事業者格差が生まれている。待機者を多く抱えて常に満床状態の特養もあれば、空きベッドは生じていないが、待機者が数人しかいない特養もある。地域住民の選択肢が増えるということは、特養もサービスの質によって利用者が選ぶという時代に変わりつつあるのだ。

そんな中で地方の特養が、札幌の待機者を営業行脚で取り込むためには、「空きベッドがある」というだけでは、「営業力」として不十分であるということだ。そこでどのようなサービスを受けられるのかという、サービスの質の差別化を意識しないと選択肢にはならない。そして今後ますます激しくなる利用者確保競争の中で、ケアの質を誇ることのできない特養は、住民からもそっぽを向かれることになるだろう。

ところで特養の空きベッド問題を語るならば、都市部、地方に限らない問題として、顧客がいるのに生ずる空きベッドの問題を語らぬ場ならない。それはまた来週の話ということで、今日のブログ記事は、ここで一旦終了させていただくとしよう。

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