先週末にかけて熊本県で3つの講演を行ってきた。(山都町、嘉島町、八代市)。

このうち山都町と嘉島町は、介護支援専門員の職能団体が主催する研修会であったため、地域包括ケアシステムの中でのケアマネジメントや、介護サービスのあり方について、山都町では居宅介護支援事業所の立場から、嘉島町では介護保険施設やサ高住、グループホーム、特定施設などの立場からお話ししてきた。

地域包括ケアシステムの目指すものは、日常生活圏域の中で、「医療・介護・予防・住まい・生活支援サービスを一体的かつ適切に利用できる提供体制」であるが、それは医療制度改革の中で実施された、病床区分変更の影響を色濃く受けており、病気や怪我によって入院した高齢者が、入院期間をできるだけ短くして地域の「暮らしの場」に戻ることを可能にするというシステムであり、円滑な退院支援や、退院直後からの暮らしの支援が不可欠になるという意味である。

熊本山都町講演3
このことを理解した上で、医療と介護の連携というものを考えていく必要がある。そうでれば医療関係者は、医療や看護の専門的な視点のみならず、「暮らしの視点」をも併せ持つ必要があり、ケアマネジャーを含む介護関係者には、暮らしの場の総合的視点のみならず、基礎的な医療知識(少なくともその知識を得るために、医療の専門家の言葉を通訳なしで理解しうる知識)を備えることが求められてくるのである。

そのうえで地域包括ケアシステムの基盤は、「ニーズに応じた住宅が提供されることを基本」とされることを理解し、住み慣れた地域で暮らし続けるという意味は、自宅ではない居所への適切な時期の「住み替え」が必要となることも多いということを理解した上で、「居所選び」を伴う総合的・専門的支援が求められるのであることを意識する必要がある。

熊本山都町講演2
そうであれば、選択される居所とは、サ高住などのほか、グループホームや特定施設も考えられるし、特養もそこに含まれるし、医療ニーズの高い人については長期療養施設(療養型医療施設や療養型老健等)も居所として選択されるべきであるということになる。(参照:居宅サービスと施設サービスの区分はなくしたほうが良いのでは?

そのために山都町で行われた、「山都町介護支援専門員連絡協議会研修会」では、居宅介護支援事業所の介護支援専門員に向けて、「施設入所することを、居宅サービス計画の敗北と勘違いしないでほしい」と呼びかけ、「熊本県介護支援専門員上益城支部施設部会研修会」では、介護保険3施設をはじめとした居住系サービス事業者に対しては、施設種別がどこであろうと、そこが利用者の個別ニーズに照らして、適切な暮らしの支援を行うことが可能な居所になることを求め、それを実現するための具体策を提言してきた。

熊本山都町講演
地域包括ケアシステムによって作ろうとしている地域社会とは、次の6つの仕組みが求められている。

・医療が必要な高齢者や重度の要介護高齢者についても、可能な限り地域(住まい)で生活できるよう支える仕組み
・一人暮らし高齢者や、虚弱な長寿高齢者を地域(住まい)で支える仕組み
・認知症の高齢者を地域(住まい)で支える仕組み
・入院しても、円滑に退院が可能となる仕組み
・在宅での看取りができる仕組み
・利用者や家族のQOLの確保 ができる仕組み

それが目的であって、地域包括ケアシステムはその手段であり、仕組みを作り上げる機能を有しない形だけの幻想的な連携図を描いても意味がないのである。関係者はそのことを十分に意識して、地域ケア会議に求められる、「ネットワーキング」という機能を意識して、有機的な連携を築き上げる必要があるだろう。(※このことも山都町講演ではお話ししたが、このブログでもまた別の機会に具体的に論ずる予定である。)

山都町と嘉島町の2会場の受講者からは、すでに次のような反響の声が届けられている。

・今回の研修でニーズに応じた住宅として、特養も含まれることが確認できた。今回の研修を受け、もう一度介護とは何か?見つめ直し、明日の一歩につなげようと思った。

・私は介護施設の事務員で、直接的に利用者と関わる事はなかなかありません。でも必ずいつか自分も介護する時があると思います。その時には、今回の講演を思い出し、この施設で良かった、家族にも良い最期を過ごしてもらえる介護をしていきたいと思います。

・今回、masaさんの講演を聴き、本当に感動し、心にくるものがありました。改めて、介護っていいなと思える機会となりました。

・masaさんの講演を聴かせていただく度に、心が熱くなります。

・日常的なケアこそが大事だということがわかりました。

・感じの良い介護者・・・最後の映像には涙が出ました。

・今回は初めて菊地さんの講演会に参加させていただきました。内容においては、看取りについて取り上げてあり、特に命のバトンリレーに関して心に残りました。座学だけでは学べない「気持ち」について学ぶことができました。(鹿児島国際大学学生)

・今まで感じた事のないような研修でした。もっと今回の研修のような考え方にふれていたいです。

・聞きやすく、分かりやすい話であり、参加して良かった。是非、施設長や他の職員にも聞いてほしい内容だった。

・明日から、忙しいから中止していた食事時のイス使用を再開したい。

・介護職という仕事の責任の重さと同時に、やりがいある仕事だと、フツフツとやる気が出ました。

・この研修で、自分が今やっていること、進んでいく方向は間違ってないなと感じました。すごいバックアップを頂いた気持ちです。ありがとうございました。

・介護に対する未来が明るく感じた。


最終日の八代市の講演は、『介護の未来を創る会』の発展的解散のための最終回の講演をお任せいただけるという栄誉をいただき、様々な事業種別の全職種の集まる場で、介護の実践論をお話しし、100年後につながる介護のスタンダードを作るための提言もさせていただいた。受講者のおひとりから、表の掲示板でご意見をいただいている。

とても温かい方々にご声援をいただいた熊本講演は、僕の心に残る最高の思い出となったように思う。熊本でお逢いした皆さん、ありがとうございました。

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