看取り介護を実施している最中は、担当ユニットごとに様々な工夫をすることになる。その中には、フローチャートで決められたもの以外の工夫も見られることもある。それは、看取り介護対象者の個別性への配慮の結果であり、常にベストの結果を求めようとする職員の意欲の表れでもある。
誰から強制されなくても、そういう工夫をしてくれる僕の施設の職員は、本当に素晴らしいと思う。そこには業務に対する使命感や誇りがあるのだろうが、同時に、この施設でお世話させていただいている利用者への、深い愛情があるのだと思う。それはとても大事なことではないかと思う。

本ケースの看取り介護対象となった方については、皮膚状態が非常に脆く、発赤、皮むけ、褥瘡などのリスクが高い方であった。そうであるがゆえに、担当者の一番の懸念は、看取り介護中に、皮膚障害ができて安楽ではない状態になることであった。それを防ぐために、様々な工夫を行う過程で、他の担当ユニットの職員や、介護職員ではない他職種にも、こうした協力を求め、それがうまく機能したものである。こうした工夫は、次の看取り介護に必ずつながっていくものだと思う。
本ケースの「看取り介護終了後カンファレンスの報告書」から一部の記録を抜粋してみたい。
(担当ケアワーカーの評価・今後の課題)
担当として私自身、看取り介護開始当初「何でこんなに早く看取りになったのだろう」と疑問に思い、受け入れるまで少し時間がかかりました。担当ユニットは、看取り介護の経験がない・経験が少ないスタッフが半分で、どうしたら担当の思いが全スタッフに伝わるか考え、看取り介護開始すぐに、「看取り介護になりましたノート」を作成しました。
ケアプランはもちろん、担当としてスタッフにしてもらいたいこと・環境整備のお願いや、家族への状態の説明に役立てばと思い、毎日の様子を簡単に記入しました。副主任と一緒に、使用する体交枕・クッションの種類を考え、側臥位も身体の拘縮に合わせて左右で枕の使用の仕方を変えたので分かりやすいよう図にしてノートに記入しました。皮膚が非常に弱く傷や変色等皮膚トラブルが多い方でしたが、そのことが「最期まで絶対に傷を作らない」とスタッフの気持ちを一つにし、体位変換や皮膚の観察・マッサージを指導し合い、看取り開始から最期まで皮膚トラブルなく援助が出来て良かったです。担当としての思いを他スタッフにも汲み取ってもらえたと思うので、今後、ノートという形ではなくても看取り介護を実施するうえでプラスになればいいと思います。
元々、家族の面会の頻度は多くなく、来てもすぐに帰られてしまい、普段の様子を説明する程度にとどまり、関係性が薄いままで看取り介護開始となりました。家族も「こんなに悪いと思わなかった」と看取り介護になったことを受け入れられず不安を抱いていた様子で、初めは表情が硬く、思っている事をあまり話してくれていなかったと思います。3日に1度、面会に来られ1時間以上付き添い過ごされていた為、家族とのコミュニケーションも多く取れ笑顔で帰られるようになり、良い関係性を築くことが出来たと思います。
誕生日を目標にし、日にちが近づいて来ると「どんな誕生会にしよう?」「目を開けて見てくれるといいね」「休みのスタッフも全員参加の会にしよう!」とスタッフそれぞれが口にしてくれ、一緒に考えてくれましたが、迎える事が出来ず残念でした。
夜間は1名体制の為、排泄援助に回っている時間や他利用者の対応中に急変していたらと夜勤者の負担や不安は大きいです。そんな中、夜勤F者の存在は大きく、最期の時も夜間だったので「F者が頻繁に様子を見に来てくれ、心強かった。一緒に看取ることが出来て良かった。」と夜勤者から聞いています。最期の瞬間も家族に手を握られ主も寂しくなかったと思います。
(家族の評価)
対応や介護についてすべて満足しています。このような機会に直面する事が初めてで何もわからない事ばかりでしたが、こういう最期の迎え方もあるのだと感じ自分自身も含めて色々考え勉強となる機会でした。本当はもう少し長くここで生活できると思っていましたが、人の寿命はそれぞれなのでしょうがないですよね。最期も看取る事ができたのでよかったと思います。
(総合的な評価と今後の課題)
評価
・皮膚が弱く看取り介護になる前は皮膚トラブルや傷が絶えない利用者であった。看取り介護になり主任ケアワーカーが傷を作りたくないと言う思いが各介護職員に伝わり、褥瘡や傷を作ることなく最期を迎える事が出来た事を評価する。
・傷や褥瘡を作らないために 新人職員が対応しても同じ対応が出来るように体交等のマニュアルを作成し、いつでも確認できるように、主のキャビネットに置いていた。また、『看取り介護になりましたノート』を作成することで介護職員間の意見交換を行う事ができた。それにより、〇〇さんの思い添った看取り介護が出来たと評価する。
・亡くなられた時間も関係はするのだが、当日のF勤務者が本館2階の主任ケアワーカーという事もあり、息を引き取られまでの間、ご家族と一緒に過ごす事ができた。また、その際に主の状態についてご家族に話をすることで家族が安心された様子があった。主の最期に家族と職員が付き添えたことを評価する。
課題
・家族とのコミュニケーションについて、ご家族は月1回〜2回 面会に来られる家族であった。看取り前は介護職員と殆ど会話をする事がなく経過していた。看取り介護になる事で来園も多くなり、家族とのコミュニケーションを取れるようになった。いつも課題に上がる事だが看取り介護になってからではなく日頃から職員が積極的に家族に話しかける事の重要性を改めて感じた。
以上である。施設職員が、いくら看取り介護に熟練・精通しようとも、看取り介護の対象となる人は、生涯それがたった一度の初体験であり、不安をもって当然である。家族の方々も、そういう場面に慣れているわけではなく、様々な不安を抱えていることだろう。惰性ではなく、心からの気持ちを込めたコミュニケーションは、その不安を和らげる重要な要素になる。
我々は、そうした状況で、大切な命が燃え尽きる最後の瞬間まで、かかわりを持つことの意味を考え続け、その人にとって、ベストの環境を整えて、お見送りするという謙虚で真摯な態度を、決して失ってはならないのである。
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その方は、「北国の春」がお好きな方なんですね。キット、聞こえているでしょうね。
★私は、5月末までの勤務先、機能訓練指導員の業務が嵌った様で、自宅で毎日、ピアノの練習し楽しんでおります。
明日は、先日、リサイクルショップで購入した「キーボード」を施設に持参します。
入居者ご家族と共に何か「楽しい事」をやろうと検討しております。
私の老後の趣味の為に購入した「1500円のキーボード」が、早速、約に立ちそうです。
★私の勤務先は、まだまだ、「看取り」ができる状態ではありませんが、・・・・
ご利用者の笑顔がみられるよう、できる小さい事から、始めたいと思います。
上手にできるようになれたら、前勤務先へ「ボランティア訪問」で音楽療法ができればと思っています。
今まで、色々な方々に育てて頂いたので、何が恩返しがしたいと思っています。
実は、長女が実習帰省しておりますが、気分転換に弾く「ピアノ」が素晴らしいんです。
長女にとっても、いい経験ができればと思います。
長女も、理学療法士の勉強を沢山の方々にお世話になり、一人前になる訓練中です。
有難い事です。