関係者の大ブーイングを覚悟の上で、僕自身が暴論を展開したい。読者は、そのことを覚悟したうえで、この記事を読んでいただきたい。
住めば都とはよく言ったもので、今住んでいる場所が一番暮らしやすいと感じている人が大多数を占めるだろう。
例えば北海道の厳しい冬は、ほかの地域の方から見れば著しい生活障害でしかないのかもしれない。事実、毎年のように雪や寒さで命を奪われる人がいる。そうした事を考えれば決して移住してまで暮らそうと思えるような地域ではないと言えるだろう。
それでも各地が「梅雨入りした」というニュースが聴かされるこの時期になると、梅雨のないさわやかな気候の北海道は住みやすいと感じている道民が多いのも事実だ。
僕の住む登別もそうであるが、道南と呼ばれる地域は、道外と同じように長雨が続き、陽が射さない日が続く、「蝦夷梅雨:えぞつゆ」という時期が存在するといわれている。しかし本州や四国・九州の梅雨を一度でも経験したことがある人は、「蝦夷梅雨」なんて言葉はあっても、それが道外の梅雨とは全く別物であることに気が付くだろう。
それは湿度・湿気の違いである。長雨が続いても、北海道のその時期は、道外の梅雨の時期の、あの肌にねばりつくべたべた感というものはない。それと比べると、蝦夷梅雨などかわいいもので、まださわやかな気候と言える。
夏の暑さも、30度になる日が数日あるかないかというレベルで、冷房器具のない一般家庭の方が圧倒的に多くても、熱帯夜で寝苦しさに悩むことのない北海道であるから、夏の過ごしやすさは言うまでもないだろう。
40度近くうだるような暑さの日に、入浴介助業務に就く介護職員の皆様の苦労は計り知れない。だからと言って暑い夏を過ごさねばならない地域の人が、北海道に移住したいなどとは思わないだろう。住み慣れた地域は、棲家であり、そういうものなのだ。
ところで民間有識者でつくる日本創成会議(座長・増田寛也元総務相)は4日、東京など1都3県で高齢化が進行し、介護施設が2025年に13万人分不足するとの推計結果をまとめた。そのため施設や人材面で医療や介護の受け入れ機能が整っている全国41地域を移住先の候補地として示した。その候補地の中には、登別市と生活権益がほぼ同じと言える、お隣の室蘭市も含まれている。
この提言に関しては、不評の声が渦巻いている。やれ現代版楢山節考であるとか、強制移住であるとか、人をものとしてしか見ていないとか、住み慣れない場所への移住は認知症発症リスクを増大させるとか、様々な意見がある。
それらの批判は、どれも正論であると言ってよい。
しかしそうであるからと言って、創生会議のこの意見を荒唐無稽であるとして、全否定してよいものだろうかという疑問が僕の中には存在する。乱暴な意見ではあるが、こうした議論の先に、地域住民全体の住み替え論が議論されるのなら、それは意味のあることではないかと思うのである。
僕が北海道新聞で書評を書いた、「老いてさまよう」(毎日新聞特別報道グループ編著)では、冒頭で訪問介護事業者が、賃貸住宅の空き室に高齢者を集め、自社のサービスを限度いっぱい使わせ、密室の中で実際には計画されたサービスさえ受けていない高齢者をリポートしている。(参照:5/3道新に書評が掲載されました)
書評でも紹介したが、著者は、「こうした事業者に頼らざるを得ない日本の介護の脆弱さに問題は潜んでいる」と訴え、自治体や国が必要悪に頼り、見て見ぬふりをしているのではないかと問題提起している。
つまり、現在版の姥捨て山は、実際にはすでに存在しており、そこに強制移住させられている高齢者が多数存在しているのである。この事実と、そうせざるを得ない実態の考察をせずして、高齢者の移住提言の批判論だけを展開しても、それはあまりにも無責任のそしりを免れないと考えるのは間違いだろうか。
そもそも我が国の人口減少状況を鑑みたときに、現在の生活圏域をすべて守っていくことが不可能であることは明白であり、都市再編・地方再編・生活圏域の再編の中には、コンパクトシティーの実現に向けた、「積極的な住み替え策」が政治主導で行われる必要性があるのではないだろうか。それなしで限界集落に住む人々にくまなく、保健・医療・福祉サービスは提供できるのだろうか?生活必需品を購入する拠点を、すべての地域に置くことはできるのだろうか?
そうしたマクロな視点からいえば、高齢者のみならず、すべての住民を対象にした、積極的な住み替えと、新たな生活圏域をコンパクトにまとめて創生していくという取り組みは必要不可欠と考えるのだ。
ただしその方法論は、今回の日本創成会議の提言内容と、僕の考え方は少し違っている。そのことは明日まとめてみたいと思う。(後編に続く)
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北海道がワースト1だったのは平成14年まで。それ以降はワースト1にはなっていません。
ちなみに昨年はワースト7位。
交通事故死を減らすために様々な努力をし続けている関係者の名誉のためにも、この表現を改めていただければ幸いです。
追記 明日の後半、楽しみにしております。