当施設は1983年開設の施設で、1999年に50床から100床の施設に増築した際に、既設施設部分も一部改築を行っている。しかしハード面はユニット型施設ではなく、既存型個室(36床)と多床室の特別養護老人ホームである。(通所介護と居宅介護支援事業所併設)

つまりハード面は、古いタイプの施設ということになる。改築に加えて、日頃からのメンテナンスや清掃に留意しているので、施設の中に入って、古めかしくボロボロであると感じることはないと思うが、それでも介護保険制度以後に建てられたユニット型施設などと比較すると、設備・環境面で見劣りする部分があることは否めないと思う。

ソフト面では、年々深刻化する介護職員の求人への応募が少なくなってきているという地域事情や、厳しい介護報酬の減額による影響などで、必ずしも十分な職員配置を常に行えているという状況ではなく、介護職員等にかかる負担も決して少なくはない。

そのような中でも、我々の法人は社会福祉法人という、公益性の高い法人であることを意識し、事業運営に当たっていかねばならないことを常に職員に呼びかけており、施設サービスの目的は、人生の最晩年期を過ごす方々に、最期の瞬間まで安心と安楽な暮らしを提供することであるとして、介護の品質向上に努めているつもりだ。

具体的には、全国に先駆けて「看取り介護指針」を作成して、その理念に基づいた介護サービスを実施するなどの取り組みを行ってきた。そしてその成果は着々と挙がっていると自負している。

その途はまだ半ばであると言ってよく、不十分な部分も存在していることを否定しないし、改善を続けていく必要も感じている。職員間の資質の個人差も課題があるし、全体的な資質向上にもさらに努めていかねばならないと思っている。そのための新たな教育システムや、人事考課の導入なども行ってきている。

そうした中で職員は、出来る限りの努力を続けてきてくれていると思う。そして30年以上に渡る取り組みの結果として、地域の人々から一定レベルの評価をいただいていると思う。

それはいろいろな場面で感じることである。

例えば、看取り介護の最終場面で関わりを持つことが多い地域の葬儀社の中で、当施設の職員対応は、「あそこの施設は、ほかの施設とは少し違う」と良い方向の評価を得ているという話が聞こえてきたりする。

ショートステイにおいても、他事業所の対応に不満を持って、当事業所を利用するようになった方が、利用者及び家族ともに納得できる結果を得て、継続利用してくれるケースも少なくない。

そのため、新しいユニット型施設等から、費用負担面の問題とは関係のない理由で、当施設に転入所希望がされるケースもある。そうした期待に応えるためにも、今以上の努力をし続けなければならない責任を感じている。

ところで、当施設では看取り介護を行ったケースについて、必ずその評価の事後カンファレンスを行っているが、その際には、遺族となった家族の方にカンファレンスに参加していただくか、あるいは参加できない場合でも、遺留金品引き渡しの際などに、看取り介護に対するアンケートに記入していただき、その意見を聴き、評価判断の一つとしている。

先週看取り介護終了後カンファレンスを行ったケースについて、事前に家族からいただいたアンケートには、このようなことが書いてあった。

【職員の対応について】→満足している
『他の施設から移ったので違いがすごくわかります。仕事量が多いなかテキパキと頑張っている様子が伝わりました。暖かく声をかけていただきました。』
【医療・看護体制について】→どちらかといえば、満足している
『医療の事はお任せするしかないので、説明されたら・・・・納得するのみです。』
【介護サービスについて】→満足している
『入る前から緑風園はいいところと聞いていました。行き届いた介護サービスです。』
【設備・環境について】→どちらかといえば、満足している
【全体を通して】→満足している
 『最期まで穏やかに過ごせた事に感謝します』


「入る前から緑風園はいいところと聞いていました。行き届いた介護サービスです」、「他の施設から移ったので違いがすごくわかります。仕事量が多いなかテキパキと頑張っている様子が伝わりました。暖かく声をかけていただきました。」、「最期まで穏やかに過ごせた事に感謝します」という言葉は非常に嬉しい評価である。今後もそうした声に応えて、より一層のサービスの向上に努めたいと思うのと同時に、我々が注目すべきアンケート結果とは、「医療の事はお任せするしかないので、説明されたら・・・・納得するのみです。」という部分ではないかと思った。

もしかしたらこの内容は、我々の医療サービスに関する説明が、専門的すぎて分かりづらいものではなかったか、家族がそのことに意見を言えない雰囲気ではなかったのか、もっと家族が疑問を投げかけることのできる関係性が必要だったのではないかということを、もう一度検証しなおしたい。また医療と同時に、設備・環境面の漢族度が、「どちらかといえば、満足している」とされている点についていえば、満足できない部分はどこだったのかという検証作業が不可欠である。この点も掘り下げておきたい。

家族アンケート結果は、ご家族の本音が書かれていると思うので、耳の痛い指摘があっても、反論する前に真摯にその思いを受け止めなければならないと思っている。

いくら我々が良かれと思っても、その結果がご家族にとって好ましいものではなかったならば、それは失敗なのだ。結果がすべてであり、負の評価にこそ、我々の目指す途を探すためのヒントが隠されていることと思う。

看取り介護に失敗は許されないが、個別の看取り介護の検証とは、次の方のより良い看取り介護へとつなげるポジティブな検証作業であることを忘れてはならないのである。

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