先日、医療・介護の専門誌「日経ヘルスケア」(日経BP社)の取材を受けた。同誌6月号に掲載する「看取り介護」に関連した記事のための取材とのことである。
担当記者の方は、この取材のためだけにわざわざ東京から当施設まで日帰り出張してきた。そして約90分の取材を終えると、とんぼ返りで新千歳空港に向かって帰られた。
こんな遠い田舎まで取材に訪れる理由は、僕がブログで、「看取り介護関連コラム」をたくさん書いているということにもよるだろうが、当施設の看取り介護の実践が、それなりに評価されているという証でもあろうと思う。そしてそれは当施設職員が真摯に日々の介護に取り組んでいる証でもある。なぜなら看取り介護は、日常の介護とかけ離れた特別なケアではなく、日々の介護で培った利用者と職員の人間関係が基盤としてあるもので、日常ケアの延長線上にあるものだからである。
そういう職員の実践のおかげで、僕も全国の色々な方々から、講演依頼を受けるなかで、「看取り介護」をテーマにした講演依頼もいただいている。そこでは実際に看取ったケースを紹介しながら、そこから学んだことや、浮き彫りになった課題や、それに対する新たな対処方法を紹介しているところである。そのことも他施設等の受講者の方々の学びにつながっているのであれば、それはやはり当施設の実践方法が評価されているという意味だろう。
看取り介護講演を行う研修会で、別に行われるシンポジウムやグループワークにも参加することがあるが、そこで他施設等の実践発表や、看取り介護に関する職員の悩みを聴く機会もある。すると、「そんなこともできていないの?」、「なぜそんな対応に終わっているのだろう?」と驚くことが多い。その時に、やはり当施設の取り組みは一歩進んでいると感じたりもする。
日経ヘルスケアの取材の中でも、担当記者の方から、他の施設の信じがたい看取り介護の状態を聴かされた。看取り介護には、安心と安楽な暮らしを支援するという考え方が一番大事なのに、ちっとも安心できず、安楽でもない方法を「看取り介護」と称している施設の実態がそこにはあった。それは考え方の根本が間違っていると指摘させていただいたが、その内容は6月号の記事になるかもしれないので、ここでは詳しく紹介しないことをご了承願いたい。
簡単に当施設の看取り介護の実践について、開始から終了までの手順を紹介してみたいと思う。
当施設は、「看取り介護加算」を算定しているので、算定要件である、「看取りに関する指針を定め、入所の際に、入所者又はその家 族等に対して、当該指針の内容を説明し、同意を得ていること。」という規定に沿って、入所の際、重要事項説明の中で看取り介護指針の内容を説明し、将来回復不能の看取り介護期となった場合に、当施設で看取り介護を受けるという選択が可能なことを説明している。当然その説明とは、当施設で看取り介護を受けないという選択もあるという説明でなければならず、その際には適切な終末期支援を受けることができる医療機関などを紹介し、受診支援なども行うことを説明している。ここまでを入所契約の際に行う。
次に「リビングウイル」の観点から、意思疎通が可能な利用者については、施設職員と利用者との信頼関係を得ることができた時点で、終末期の医療についてどうな希望があるのか、口から物を食べられなくなったらどうしたいのかなどを文書で確認しておくことが大事という考え方に基づき、入所後の一定期間経過後(信頼関係ができる期間であるから、個人により差が生ずる)「延命に関する宣言書」という文書に必要事項の記載をしてもらっている。
(参照:延命に関する宣言に関わる相談員の役割)
実際に利用者が看取り介護の対象となる場合、本人もしくは家族に対して医師より説明(いわゆるムんテラ)を行うことになるが、この際には看取り介護対象となったことを理解してもらった後に、当施設で看取り介護を受けるのか、医療機関へ入院するのかという選択が必要になるが、この選択には、当施設で看取り介護を受ける場合に、どのようなケアを受けることができるのかが分からないと選択できないので、事前に看取り介護計画を作成しておき、ムンテラの場に介護支援専門員が同席し、「看取り介護計画」の説明を行うこととしている。
その結果、当施設で看取り介護を受けるという選択がされた場合は、看取り介護計画の同意をいただき、看取り介護計画書を利用者又は家族に交付したうえで、「愛する人の旅立ちにあたって」というパンフレットを使って、最期の瞬間に近づくにつれて現れる身体変化についても説明し、利用者及び家族の不安を取り除くことに努めている。
(参照:揺れ動く家族の心)
その後は以下次のような手順となる。
・看取り介護計画の同意を得て、看取り介護開始
・相談室より各セクションに文書により看取り介護の開始を連絡
・毎朝の朝礼時に、看取り介護対象者の状態の報告と、訪室の促しを担当者より行う〜この報告内容は独自文書に記録しているので、この文書を家族への随時の説明と文書による情報提供にも使用
・随時説明は、基本的に家族が来園した際には必ず行うようにしており、看護職員から説明し独自書式に記録して、同意署名もいただいている。
・看取り介護終了(死亡)した場合は、看取り介護終了後カンファレンスに向け、介護支援専門医により各セクションに課題・評価の記録を行うように文書で連絡
・文書に記載された指定日までに、各セクションはPCの共有ファイルの書式に、課題と評価を入力。この際に担当セクションは職員の精神的負担の有無、その状況を必ず記入することとしている。
・遺留金品の引き渡し時に、遺族にカンファレンスの参加もしくは看取り介護終了後アンケートの記入を依頼
・介護支援船専門員が看取り介護終了後カンファレンスを招集し実施。介護支援専門員は全体の課題・評価をまとめ報告書作成。以上である。
4月からPDCAサイクルの構築による、看取り介護の新たな算定要件が求められているが、この過程の中で、それらの要件はすべてクリアするようにしている。
例えば、「療養や死別に関する入所者及び家族の精神的な状態の変化及びこれに対するケアについての記録」は、日々の支援記録に記載するほか看取り介護終了カンファレンスで話し合い評価するし、職員の精神的負担の把握と支援についても、カンファレンスの中で話し合い、記録しておくことにしている。
今後は実施が努力目標とされた、「看取りに関する報告会の開催」と「入所者及びその家族等、地域への啓発活動(意見交換)」について、終活セミナーを開催してその実施を図りたいと思っている。
近直では、来週金曜日(5/22)青森市で「看取り介護講演」・看取り介護の視点〜命のバトンリレーを支援する介護〜を行う予定になっている。張り付いたリンク先の開催要項を参照いただきたい。下記は、その際に使うスライドの一枚である。
なおPDCAサイクルの構築と、新しい算定要件に合致する方法論を含めた「看取り介護講演」のご依頼は、メールで直接お願いします。その際には、メールのタイトルに、「講演依頼」と書いていただければ、迷惑メールと間違えることはないと思うので、どうぞ宜しくお願いします。
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しかし、ご利用者にとっては、歴史がある施設や新設施設等関係ない問題だと思われます。
いつでも「看取り」ができる勉強だけはしておかないと・・・ご利用者に不利益をおかけすることになります。
と、頭では理解していても困難なこともあります。
施設は、チームプレーなので心ある数名では、何もできません。・・・・
職員との人間関係と職員教育からのレベルで葛藤しています。
ご利用者様には、ご迷惑をおかけすることと思いますが、
今日も、焦らず、慎重に丁寧に仕事をしたいと思います。