4月から改定された介護報酬によって、施設サービスを巡る状況は非常に厳しいものとなっている。

今までと同様のことを行っていると、施設経営は近い将来必ず破たんせざるを得ないだろう。そのため新たな収入源を求めるとともに、しっかりしたコスト計算をしながら、削減できる費用はぎりぎりまで削減しなければならない。コスト管理意識はより重要となってくる。

しかし僕たちが護るべきものは利用者であり、利用者の皆様の暮らしである。コストカットは重要であるが、そのために利用者の生活の質を低下させることは、施設サービスの本来の目的を失わさせることにもなりかねない。

僕たちが携わっている職業は、利益追求だけを目的とした事業ではなく、社会福祉事業であることを忘れてはならない。社会福祉とは、支援を必要とする人々の生活の質を維持・向上させるためのサービスであり、福祉とは、「しあわせ」や「ゆたかさ」を意味する言葉である。そのことを実現し護るという矜持を持ち続けたいと思う。

それは決して綺麗ごととして言うのではなく、最後まで護り続けるべき根源的問題と思う。なぜならそこを見失った先にあるものは、人の暮らしを軽視する介護サービスであり、それは他者を不幸にするだけではなく、将来の自分や、自分の愛する誰かの不幸となって返ってくる問題となるからである。

以前の記事にも書いたが、今回の介護報酬改定では、施設サービス共通事項として、経口維持加算の充実の方針が示され、経口維持加算については、摂食・嚥下障害を有する入所者や食事摂取に関する認知機能の低下が著しい入所者の経口維持支援を充実させる観点から、多職種による食事の観察(ミールラウンド)や会議等の取組のプロセス及び咀嚼能力等の口腔機能を含む摂食・嚥下機能を踏まえた経口維持支援を充実させる方向性が示された。それはあらためて食事を経口から摂取することの重要性を示したものであり、それは単に健康維持や介護予防という側面のみならず、食の楽しみを持ち続けることの重要性をも鑑みたものであると解釈したい。

そのため経口維持加算の算定はしやすくなり、この部分に限って言えば、わずかとはいえ収入アップにつながっているわけである。それは全体の報酬引き下げ額から見れば、「焼け石に水」と言えるものでしかないが、そうであったとしても、加算分の一部負担をする利用者に、僕たちは何らかの形で応える必要があると思う。そしてそれは食生活の楽しみを維持し、その部分でのQOLを向上させることではないかと思う。

単に経口から食事摂取をし続けられるというだけではなく、その時に経口から摂取するものが、食事の楽しみとなり得る状態のものなのかという検証は、より強く求められてくるだろう。食べやすく刻んだ形態が、本当に食事の楽しみにつながっているのか、ミキサーにかけたものは、自分が食べたいと思える食事と言えるのかを問い直していく必要があるのだろう。

当施設では、この部分の工夫が足りないという反省があり、現在より食を楽しめる嚥下食を研究中である。完全実施に至っていないが、その一部を紹介したい。

常食
普通食である。鮭の塩焼き、出し巻き卵焼き、筍の煮つけ、きんぴらごぼう、漬物、みかん。
ソフト食
歯ごたえを残した刻み寄せ食。普通食と同じメニュー。
嚥下食
ソフト食。ムース上になっているが、すべて普通食と同じ味と風味を残したメニュー。

僕の講演では、オリジナル動画「LOVE〜明日につなぐ介護」を上映させていただいているが、その中で介護の常識が世間の非常識という状態をなくすために、「食事は栄養以前に、人のもっとも楽しみな行為であることを忘れない」というメッセージを入れており、その実現のためにも、嚥下食の改良は近喫(きんきつ)の対応が求められることだろう。

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