※まずはじめにお知らせを一つ。北海道新聞を購読されている方は、明後日5/3(日)の朝刊・「せいかつ・文化欄」(おそらくスポーツ面の前のページ)をご覧になって下さい。僕の書評(僕の本ではなく、ある本を僕が評したもの)が掲載される予定になっています。人生初の書評となります。さて話を変えて本題といきます。

特別養護老人ホームの関係者が知っておきたい通知に、「特別養護老人ホーム等における療養の給付の取扱いについて」という医政局通知がある。

あえてここで「知っておきたい通知」としたのは、必ずしもこの通知は、特養関係者が「知らなければならない通知」ではないからである。なぜならこの通知は、厚生労働省保険局医療課長から、保険医療機関、保険薬局、訪問看護ステーション等に向けて発出されている通知で、特養に直接通知されているものではないからである。(等に含まれるのは診療報酬を算定する事業者だけだろう。)

この通知では、特養利用者の診療について、保険医が配置医師でない場合については、緊急の場合又は患者の傷病が当該配置医師の専門外にわたるものであるため、特に診療を必要とする場合を除き、それぞれの施設に入所している患者に対してみだりに診療を行ってはならないことを規程しているほか、特養等で利用者の診療を行う場合でも、算定してはならない費用について通知している。

つまりここでは保険医療機関等の医療関係者の行為と診療報酬の算定方法について通知しているものであって、特養の業務を規定しているわけではないのである。

この通知の内容を知らずに何らかの行為が行われ、不適切な状況が生まれた場合に、行政指導を受けるのは、あくまで保健医療機関等なのである。例えば特養の施設長がこの通知内容を知らずに、「入所前のかかりつけ医師に診察を受けたい」という利用者もしくは家族の依頼を受けて、施設配置医師ではない医師に、施設長が直接診療を依頼して、受診したうえで診療報酬を算定しても、その不適切性を指摘され、指導を受けるのは、診療を依頼した特養の施設長ではなく、その依頼に応じた外部の医療機関と、配置医師ではない医師なのである。そしてこの場合に診療報酬の返還を求められたとしても(実際にそのような返還指導が行われたという事例を聞いたとはないが)、通知に基づかない対応をしていた医療機関の方に過失があるのだから、特養に損害補てんを求めることもできないと解釈されている。

そうであるがゆえに、特養の施設長や幹部職員が、この通知内容を全く知らずに、特養の運営を行っているというケースも見られるわけである。

だがこうした通知の規定に基づき、特養における診療が行われているのだから、特養関係者がその根拠を知らないというのは、無責任のそしりを受けても仕方がないと思う。なぜならそれは利用者の健康維持に直接かかわる診療のルールだからである。それに診療報酬の算定には自己負担があることと鑑みて考えると、算定ルールを知らないことは、間違いが起きたときに指摘ができず、それがそのまま利用者の不利益につながる恐れがあるため、やはりこのルールは知っておくべきである。

そのほかにも、我々介護関係者は、医療の様々なルールを知っておいて損はないだろう。

例えば通所介護では、通所介護サービス提供中の受診は緊急やむを得ない場合を除いて認められないし、前後の受診もサービス提供時間に入れられないだけではなく、機械的にそのような計画を組み入れることも不適切とされている。

しかし実際に利用者が通所サービスを受けている同時刻に、家族が利用者の代理で受診して、薬の処方を受けてくるというケースがあった場合はどうだろう。この場合でも、医療保険のルールを全く知らなくとも、通所介護事業者には、特段の問題が生ずるわけではない。

なぜならこのようなケースで、通所介護費を算定することには全く問題はないからである。事実として通所介護を利用者が利用しているのだから、そのことの費用を算定できなくなるなにものもないし、そもそも家族が代理受診をしているかどうかなど、利用者もしくは家族からの申告がないと、通所介護事業者は確認のしようもなく、いちいちそのことを確認するようなルールは存在しないからである。

しかしこれを医療のルールから見ると別の問題となる。そもそも代理受診で薬の処方を受けることができるのかということである。

その答えは介護関係者でも容易に想像がつくであろうが、不可である。

医師法第20条 医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。

つまり、診察なしで処方せんを発行することは禁じられており、違法した場合、50万円以下の罰金刑に処されることになるものである。
(※勿論、あらかじめ本人が受診して、処方箋を交付されているのであれば、利用者が通所介護を受けている同時刻に、その処方箋を家族が薬局に持って行って薬を受け取ることには何の問題も生じないだろう。)

だからあらかじめ利用者もしくは家族に、こうしたケースをどうすべきか相談された場合には、家族に無駄足を踏ませないように、担当ケアマネジャーもしくは通所介護事業担当者が、この法律をきちんと理解して、そもそもそのような代理受診ができないということを指導してあげないと、本来我々とは関係のないところであっても、何も教えてくれなかったと信頼を失うかもしれない。そういう意味で、ある程度の基本ルールは、畑違いの領域であっても知る努力をするべきである。

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