介護保険制度のルールでは、施設サービス計画と居宅サービス計画は、目標を定め、目標は長・短期に分け、さらにそれぞれの期間を定めなければならないことになっている。その根拠は、厚生省令第三十八号及び老企第22号、29号、43号、44号、45号等である。
(※なお訪問介護計画等の、各サービス事業所の個別計画については、その規定と異なることについては、長・短期目標が必要な計画、必要のない計画とその根拠。を参照いただきたい。)

ところで、この際の長短期目標の達成時期を示した「期間」について、例えば短期目標は半年、長期目標は1年などと機械的に設定することは許されるのかという疑問に対し、目標とはそれぞれの目標内容に沿って、それを解決するために必要な期間を示すものだから、一律機械的な設定は問題であると指摘する向きがある。そういう人々は次のように指摘する。

・目標期間が画一的なのは問題であり、個別に考えるべきだ。
・一律機械的な目標とは、アセスメントが行われていない証拠だ。
・目標内容によって達成期間は異なるから、当然内容により期間も違ってくるはずだ。


そうした主張は、一見正論に聞こえるが、はっきり言ってナンセンスだ。

例えば短期目標は『解決すべき課題及び長期目標に投階的に対応し、解決に結びつけるものである。』とされており、ひとつの長期目標に対し、複数の短期目標を設置する必要がある場合がある。長期目標についても、『解決すべき課題が短期的に解決される場合やいくつかの課題が解決されて初めて達成可能な場合には、複数の長期目標が設定されることもある。』とされている。

そうであれば一つの計画書の中に、10種類以上の長・短期目標が設定される場合も少なくないであろう。その時、一つ一つの長・短期目標について、その内容をすべて精査して、それぞれ目標期間を別に定めるなんてことが可能なのか?実際にそうしている介護支援専門員が何人いるのか?いるとしても、なんとナンセンスなことだろうか・・・。

目標期間がバラバラならば、その期間終了時点においてサービス計画書は見直しが必要である。その時に期間延長だけ行って軽微変更対応するとしても、見直しの手間は莫大なものになる。そんなに暇な介護支援専門員がいるとでもいうのだろうか?そもそも期間延長の軽微変更を前提にしているなら、初めからその期間にたいした意味はないということにもなる。

そう考えたとき、居宅サービス計画書及び施設サービス計画書の、「目標期間」については、長期目標と短期目標について、それぞれ相応の期間をあらかじめ定めて、サービス計画書の中で、統一しておいた方が良いという考え方が生まれるだろう。

それはおかしなことなのだろうか。全然おかしなことではないと言い切ろう。なぜなら、目標期間のとらえ方は法令上、次のように示されている。

・「長期目標」の「期間」は、「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)」を、いつまでに、どのレベルまで解決するのかの期間を記載する。
・「短期目標」の「期間」は、「長期目標」の達成のために踏むべき段階として設定した「短期目標」の達成期限を記載する。

目標期間はそれぞれの生活課題ごとに検討して、それに応じたそれぞれの期間設定が必要だと主張する人々は、この期間を課題の内容に応じた目標の達成が可能な目安という意味の期間として設定すると考えているのだろう、そうであれば、それらの人は、「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)が、いつまでに解決するのか」という期間目安をどこに置いているのか?

アセスメントで、この期間が引き出せるというのだろうか?あり得ない・・・。

人の暮らしは様々であり、そこに解決すべき課題が存在したとしても、それを解決するための目標を達成できる期間など、本来それは人智の及ぶところではない。神の領域である。

目標を立てて、それに向かって本人が達成に向けて努力し、その頑張りを周囲の人々が手を貸したり、励ましたりしながら支えることで、その目標が達せられることがあるのだろうが、その期間を事前に推し量ることなど不可能だ。

そう考えると、「いつまでに、どのレベルまで解決するのかの期間」の考え方は、「達成目標期間として、あらかじめ定めた期間で、達成度を評価し見直す」という考え方ができる。そうであれば、目標の期間をあらかじめ固定し、それに応じた達成度の評価を行うという考えの方がわかりやすい。その方が、利用者目標の検証という意味では合理的で、方針も明確になる。

よって短期目標を半年、長期目標を1年と機械的に定めて評価することは、なんら問題はない。それは法令に違反することではないし、ケアマネジメントの手法として「あり」と言えるのである。

そのことを否定する介護支援専門員は、自分が神のごとくなんでも評価できる能力を持っていると、勘違いでもしているのではないだろうか。
(目標期間を固定して設定する場合の考え方の一例)
サービス開始が2015年2月7日であるとした場合で、認定有効期間が2014年12月1日から2016年11月30日だとする。この場合、2年後の2016年12月1日以降は、新たな認定になるのは確実なのだから、2016年11月30日までの計画書が、現在の認定期間における計画書の目標期間の一応の目安になる。

僕は基本的に、長期目標は1年、短期目標は半年と定めて、計画書自体は短期目標の半年に合わせ、半年ごとに評価と計画の見直しを行っているので、最初の計画書は長期目標を2015年2月7日〜2015年11月30日までの10ケ月とし、短期目標を2015年2月7日〜2015年5月31日までの4ケ月とする。

そうすると5/31までの短期目標期間内で、5月中に短期目標の達成度を評価して、新規計画を見直すことで、再作成した2回目の計画書の長期目標を2015年2月7日〜2015年11月30日までの10ケ月は変わらず、短期目標だけが2015年6月1日〜2015年11月30日までの6ケ月となる。

そして2015年11月30日に短期目標と長期目標の達成具合を再検証し、3回目の計画書は長期目標を2015年12月1日〜2016年11月30日までの12ケ月とし、短期目標は2015年12月1日〜2016年5月31日までの6ケ月となる。

さらに2016年5月中に短期目標の達成度を検証し、4回目の計画見直しで、次の計画書では長期目標の2015年12月1日〜2016年11月30日までの12ケ月は変わらず、短期目標が2016年6月1日〜2016年11月30日までの6ケ月となり、その次の計画書は必然的に、2016年12月1日からの認定更新に合わせた計画書と期間設定になるということである。

これは老企29号で「なお、期間の設定においては「認定の有効期間」も考慮するものとする。」と定めた規定とも整合性がとれる考え方である。

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