通所介護の新加算、「認知症加算」については、「認知症介護指導者研修」、「認知症介護実践リー ダー研修」、「認知症介護実践者研修」のいずれかの修了者がサービス提供時間を通じて1名以上配置されていなければ加算算定できない。

つまりこの研修受講者が通所介護事業所に一人いたとしても、その職員が休みの日には加算算定ができなくなってしまう。そうであるがゆえに、この加算を算定する事業者は、複数の職員がこの研修を受講して、算定できない日がないようにしたいと考えるであろう。そのためまだ受講していない職員については、出来るだけ早くこの研修を受講させたいとして動いていることだろう。

このため今年度、上述した研修には、申込者が殺到すること必至で、いつから受講申し込みが開始されるのかということに気をもんでいる事業管理者が多いそうである。

国もうまいことをやったものだ。報酬減額を補う加算を算定するために、受講料収入が増えるわけであるのだから・・・。

研修を受講して学びの機会を得ることは決して悪いことではないので、それは否定されるべきではないのだろう。しかし果たしてそこで、認知症の理解に対する適切な講義や演習が行われているのかという検証作業は欠かせないし、受講料は適正価格であることを願うのである。

ところで以前にも指摘したが、認知症加算にしても、中重度者ケア体制加算にしても、体制要件だけに気を配るのではなく、その体制におけるサービス提供方法にも気を配らないと、加算算定事業者と同じサービスで単価が高いということになり、そのことが理由で逆に顧客離れが起きるということに注意が必要だ。加算算定事業者は、そういう意味で利用料が高い分、こうしたサービスを利用できますというアピールができるサービスメニューの提供が必須となろう。そうしなければ、「うちは同じサービスでも、加算しない分安く利用できます」って事業者に客は取られてしまう。

この二つの加算については、利用者要件を考えたとき、小規模通所介護事業者が加算算定事業者の大半を占めることになるのだろうと想像する。そうであれば来年度から、その事業者は定員18名以下にして地域密着型サービスになるか、定員を19名以上として都道府県指定事業者として残り、通常規模型の低い報酬を算定しながら、顧客数を増やすことで収益を確保するかという選択を迫られることになる。

後者の場合は大規模型報酬の算定ができる可能性が出てくるくらい顧客数が増えるのであれば、選択肢としてありだとは思うが、そうでないのであれば現在の小規模型通所介護費の費用を算定できる地域密着型サービスを選択すべきだと思う。

そのとき、職員に複数の研修受講者を配置して加算を算定してするか、職員は最低限の人数で抑え、研修受講者も特段配置することなく、加算算定を行わずに運営するかという選択もしなければならない。

僕は後者の選択もありだと思っている。加算にこだわると、配置する職員数も規程数より多く配置する必要があるし、研修を受講させる費用だって個人負担というわけにはいかず、事業所で負担して受講させるのだから、その費用も必要だ。

しかもせっかく研修受講させた職員が、ほかの事業者に引き抜かれないとも限らない。加算算定事業者が多い地域では、実際にそういうことが起こり得るだろうし、そのことで人件費の高騰も想定される。そうであれば定員が18人以下という地域密着型通所介護で、ほかに収益事業を持たない事業所が、通所介護事業だけで収益を出せるのかは非常に難しい問題である。

地域密着型に移行する通所介護事業者は、利用者が18名と限定されているだけに、出来るだけ少ない人員配置で、サービス提供日の全ての日に、定員いっぱいの18人利用の実現を図っていくことが必要とされるだろう。

そのためには二つの新加算を算定せず、サービスメニューは多様にという戦略もありだと思う。

もちろん要介護者の方々から選択されて、なおかつ最小限の人員配置でということになれば、それ相応の能力ある人材配置が必要で、その部分の人件費コストは必要なのだろうが、単に研修を受講したという経験だけの人員を配置基準以上に配置して、加算算定した経営を考えるより、少数精鋭の職員にコストをかけて運営する方が、職員の定着率も高まるし、後々の運営にもプラスになってくるのではないだろうか。

どちらを選択するのかは、地域事情も左右してくる問題であり、一概に言えるものではないが、2つの新加算に限って算定するかどうかを考えるならば、あえて加算事業所ではない選択肢もあり得るのだということを指摘しておきたい。

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