介護施設等の「看取り介護」・「ターミナルケア」については、PDCAサイクルの構築による実施が求められている。その詳しい内容については、「PDCAサイクル構築の具体的内容」で解説しているので、そちらを参照していただきたい。

リンクを貼り付けた記事にも書いたが、改善(Action)部分で求められている、「看取りに関する報告会の開催」と「入所者及びその家族等、地域への啓発活動(意見交換)」については、今回は「啓発活動を行うことが望ましい。」という規定となり、必須項目ではなく努力義務とされた。

そのためこの活動は、とりあえず棚上げして、近い将来の実施を考えるという施設が多いことだろう。

それはそれで構わないと思う。なぜなら一番大事なことは、地域住民を啓発することではなく、看取り介護対象者が最期の瞬間まで、安心・安楽に過ごすことができる支援を行うことなのだから、看取り介護の内部の体制づくりが優先されるべきであって、必ずしも啓発活動を同時進行的に行うということではないからだ。まずはしっかり基盤となる「看取り介護」の理念と方法論を構築することが優先されるべきである。

国もそのことはよくわかっているから、今回はこの部分を「行うことが望ましい。」という表現にとどめ、実施義務を課さず努力目標にとどめ置いたのであろう。

しかし同時に我々は、この努力目標に胡坐をかくことなく、地域住民に向けた啓発活動を行うことができる看取り介護の品質を築くべきである。特に社会福祉法人であれば、今後ますます地域貢献が求められていくのであるから、人生の最終ステージを安楽に安心して過ごすことができる方法論を具体的に地域住民に示すことで、地域社会に貢献するという意味でも、この部分の啓発活動をずっと努力目標で終わらせることがないようにしなければならない。

むしろ看取り介護の事例を重ねる中でノウハウを手に入れた施設は、そのことを積極的に地域に情報提供することで、地域の中でどのように安心・安楽の人生の最終ステージを迎えることができるのか、それまでに自分が何をしたらよいのかを考える機会を創るべきである。

ただ、その際に単純に「看取り介護報告会」を家族や地域住民に向けて行うとしても、それに対して興味を示してくれる人は多くないのではないかと思う。啓発活動は必ずしの大勢の人向けに行われなければならないということはないし、それは草の根的に小さな単位から始めることも重要なわけであるが、忙しい業務の合間を縫って行う活動であるのだから、そう頻繁に報告会が開催できるわけではない。そうしたことを踏まえると、できるだけ多くの方に興味を抱いていただいて、その場に足を運んでいただき、報告を聴いていただくという視点も大事になるのではないだろうか。

そうすると、「看取り介護」の問題を、自分の家族あるいは自分以外の第3者の問題と捉えるのではなく、自分自身にも関係することという観点を持っていただくことで、この報告会への参加意欲や動機づけにつながるのではないだろうか。

そう考えると、地域への啓発活動は、単に「施設での看取り介護の報告会」として行うのではなく、そうした報告も含めた「終活セミナー」として行うことが有効となるのではないだろうか。

終活とは、その言葉に明確な定義があるわけではないが、それは人間が自らの人生の最終章を迎えるにあたって行うべきことを総括した意味と考えらえており、自分がまだ元気で意思を伝えられる時期に、自分自身のための葬儀や墓などの準備や、財産処分の方法などを決めておくことや、終末期に意思を伝えられなくなったときに備え、リビングウイルの観点から、どのような医療を受けたいのか、口から物を食べられなくなったときにどうするのかなどの、具体的な希望を第3者に伝えておくことなどを指している。それらを総合的に考えるセミナーが「終活セミナー」である。

こうした終活セミナーを一法人単独で行うと言うことにとどまらず、地域の社会福祉法人がいくつか協力し合って合同で行うことができたならば、地域全体の介護の品質向上にもつながっていくのではないだろうか。

またそうしたセミナーを開催する際に、「終活」または「看取り介護」の具体論を話すことができる講師をお探しなら、是非お気軽に声をかけていただきたい。突然メールで問いかけていただいて構わないが、その際は迷惑メールを間違えないように、タイトルにしっかりと講演依頼と書いていただければありがたい。

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