介護保険3施設のうち、一番介護報酬が低く設定されている介護老人福祉施設(特養)にだけ、夜勤者とは別に夜間の宿直者の配置が義務付けられていることについて、約7年前に「特養の宿直職員配置義務撤廃の提言」という記事を書いて、夜間職員配置加算を算定できるレベルで人員配置をしている施設であれば、当直者の意味はほとんどないのだから、配置基準を撤廃してほしいと全国老施協の「老施協110番」に意見を書き込んだことを報告している。

しかしその後の報酬改定でも、制度改正でも、このことは全く議論にならず、今回の制度改正と報酬改訂時にも全く話題にさえのぼらなかった。

ところが先々週3月3日、介護保険全国課長会議で示された「基準省令に関する通知案」特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準について、を読んでいると、この宿直配置規定が変更されていることに気が付いた。

現行基準
職員の勤務体制を定めるもののうち、介護職員の勤務体制については、「社会福祉施設における防火安全対策の強化について」により、3交代制を基本とするが、入所者の処遇が確保される場合は、2交代制勤務もやむを得ないものとすること。併せて、同通知に定める宿直員を配置すること。

新基準
職員の勤務体制を定めるもののうち、介護職員の勤務体制については、「社会福祉施設における防火安全対策の強化について」により、3交代制を基本とするが、入所者の処遇が確保される場合は、2交代制勤務もやむを得ないものとすること。併せて、同通知に定める宿直者を配置すること。(介護保険法(平成9年法律第123号)に定める介護老人福祉施設又は地域密着型介護老人福祉施設であって、厚生労働大臣が定める夜勤を行う職員の勤務条件に関する基準(平成十二年二月十日 厚生省告示第二十九号)第4号ニ又は第5号ハを満たす人員を配置し、かつ夜勤者のうち1名以上の者を夜間における防火管理の担当者として指名している施設を除く

↑このように変更された。(緑色で示した部分が追加された。)厚生労働大臣が定める夜勤を行う職員の勤務条件に関する基準、第4号ニ又は第5号ハを満たす人員とは、夜勤職員配置加算を算定できる職員配置という意味である。よって新基準では、夜勤職員配置加を算定しておれば、夜勤者のうち一人を日誌等の記録で「防火管理の担当者」として指名することで宿直者は置かなくてよいということになる。これはまさに僕が7年前に「老施協110番」に寄せた意見の通りとなる改正である。

今回の報酬改定では、年額1.500万円以上の減収で、これを補うような加算もないため、単年度赤字にならないためには、ショートステイの稼働率を高めたり、入院者を減らしたりする対策が必要だが、それに加えて経費削減が必須である。しかし経費の中で一番大きな人件費は安易に減らすことはできない。介護職員処遇改善加算を算定するためには、実際に給与アップが必要だし、その一方で加算対象にならない介護職員以外の報酬を下げることは職場のモチベーションの面からも難しい。人件費を減らすために、必要な配置職員を削ってしまえば、現場の職員が疲弊し、介護サービスの質も低下するということにもなりかねず、頭の痛い問題であった。

しかしほとんどかかってこない電話番という意味でしかない宿直(夜間の事務当直という形が多いだろう)を廃止しても、夜勤職員を加配して加算算定している施設にとっては、ほとんど支障はないだろう。当施設の場合は、登別市のシルバー人材センターへの委託によって宿直員を確保しているが、その委託契約を継続しない方向である。

このことに関して表の掲示板のスレッドでは、「救急搬送等の緊急時に宿直者が協力することがあり、それができなくなる」という心配の声も出されているが、そもそも一人以上の配置が求められている宿直者が不在となるような救急搬送の付添いを行っていること自体が、運営基準違反である。当施設ではその場合、夜勤および宿直者以外の緊急当番制で対応しているので、そのことも支障にならない。

夜間帯人手が少ない間の火災や事故対応などを考えた場合の、宿直廃止を懸念する声もあるが、逆に言えば宿直者が1名加配されているからと言って、非常時にどれほどの安全性が高まるかということ自体が議論される必要があるだろう。むしろスプリンクラーなど安全設備にお金をかけて、それを充実したほうが夜間の安全性は高まるのではないだろうか。

宿直配置を廃止することによって年額250万円程度の人件費は削減できるのではないだろうか。この厳しい情勢下で、その削減額は大きいと言わざるを得ない。

そうした観点から、先週4日に担当職員を集めて緊急協議を行い、宿直を廃止しても業務上の支障はないことを確認して、宿直職員の廃止に向けた指示を出した。

ところが後に出された介護報酬改定に関するQ&A Vol.1

(問137)夜勤職員配置加算を算定していれば、宿直員を配置しなくてもよいか。

(答)夜勤職員配置加算の算定の有無にかかわらず、現に夜勤職員が加配されている時間帯については、宿直員の配置が不要となるものである。

↑このように加算算定とは関係がないとされた。この意味は、夜勤職員配置加算は夜勤帯の全時間の職員の合計勤務時間数が1を上回った場合に加算できるもので、早出や遅出の職員の勤務時間が含まれるため、深夜帯などでは定数+1となっていない時間帯もある。この場合定数+1となっていない時間帯は宿直者が必要だという意味になり、当施設では宿直員の配置が継続して必要であることが分かった。

なんとも人騒がせな改正であった。残念。

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