介護保険法で規定される施設サービスには、介護支援専門員の配置が義務付けられている。
これは当然のことながら介護保険法が施行されて以後の基準であるが、それ以前の特養と老健には、それぞれ生活相談員と支援相談員という相談援助職の配置が求められていた。
介護保険制度施行以後は、それに上乗せする形で利用者100人に対して1名の介護支援専門員の配置が求められているわけであり、介護支援専門員を配置すれば相談員を配置しなくてよいというわけではない。しかし介護支援専門員は他の職種との兼務が認められており、例えば特養において業務に支障がないと認められれば、100人の利用者に対して一人の職員が、生活相談員兼介護支援専門員として配置しても良いという規定がある。つまり業務に支障がない場合、ひとりの職員だけで、生活相談員としても、介護支援専門員としても、それぞれ常勤専従配置1と認められるわけである。
このように一人の人間が二人分の職員配置基準を満たすという規定になっている理由は、介護保険法施行時、介護施設に介護支援専門員の配置を義務付けたにもかかわらず、その人件費を介護給付費に上乗せしなかったからであり、その理由はそもそも特養や老健では、介護支援専門員の仕事を相談員が行っていたという考え方に基づくものである。
僕はこのことを決して否定的にとらえる必要はないと思う。
利用者100人に対して一人の相談援助職でよいのかという議論は別にして(実際には少なすぎると思うが)、相談員と介護支援専門員の兼務は認めるべきであるというのが僕の持論である。むしろ2つの職種は区分できないと考える。両者はソーシャルワーカーであり、ケアマネジメントは社会福祉援助技術の中の関連援助技術であって、介護支援専門員しか行うことができない援助技術ではないからである。
しかし施設サービスの中では基準省令において、利用者に直接面接してアセスメントを行うことができるのは介護支援専門員だけと定めているだけである。ここは介護支援専門員の資格がない相談員が替わることができない部分だが、これもおかしなルールだとは思う。
もっと問題なのは、相談援助と全く業務内容や立ち位置が異なる看護業務や介護業務との兼務も認めている点で、このルールがあるから介護支援専門員の職務がみえにくくなり、その立ち位置があいまいになる。そのことがソーシャルケースワークのできないケアプランナーができてしまう最大の理由になっているのである。
介護職出身の有能な介護支援専門員が存在するという事実から言えば、介護支援専門員の受験資格となる実務経験に、看護業務や介護業務を入れるなと言う乱暴なことは言わないでおくが、せめて資格試験の段階で、ソーシャルケースワークの技術がない人は合格させないという試験水準の見直しが必要だと思う。
ほとんど相談援助を学んだことがない人が、出題範囲の狭い試験にたまたま受かって、そのあと寝ていても不合格とならない実務研修を受けただけで、相談援助の中心的役割を担う職務に就くということ自体が乱暴すぎるのだ。実務研修は筆記試験合格者に対してアリバイ作りのように実施するのではなく、様々な実務経験者が試験を受ける前のハードルとして、その研修を課して、その中で相談援助の基礎知識をしっかり教えて、その習熟度も筆記試験で問うようにすべきである。そうしないと相談援助ができない介護支援専門員がいなくならない。
「施設ケアマネ不要論」でも主張しているが、僕は施設サービスにおいて、ケアマネジメントが必要ではないと主張しているわけではないし、ケアマネジメント技術をもって、その援助技術を展開できる専門職は必要不可欠だろうと思っている。しかしそれは何も介護支援専門員ではなくとも良いという立場である。
なぜなら現行の介護支援専門員の資格付与の方法及び結果を見ると、相談援助職としてふさわしくない介護支援専門員が少なからず誕生しているからである。相談援助ができない有資格者が多すぎると思う。そうであれば施設の相談援助職は、介護支援専門員に限らないだろうと思うし、施設サービス計画作成責任者も介護支援専門員に限る必要はないと思う。
それより実務経験はなくても、大学で4年間社会福祉を専攻して学び、卒業前に社会福祉士の資格試験に合格して人材の方が、ソーシャルワーカーとして優れた仕事ができるという例は枚挙にいとまがない。そういう人であれば5年の実務を課すまでもなく、仕事に習熟した段階で、ケアマネジメントを展開して施設サービス計画実務に就いたって良いだろう。
施設サービスにおいて求められるのは、介護支援専門員という有資格者ではなく、ソーシャルワークの関連技術であるケアマネジメントを展開できるソーシャルワーカーなのである。
例えば特養の配置基準に、介護支援専門員を必須として兼務を認めている現在の基準ではなく、利用者50人に対して1名程度の相談援助職員を配置する規定にし、相談援助職員として配置でいるのは、社会福祉主事を基礎核とするのではなく、社会福祉士または精神保健福祉士としたうえで、加えて相談援助の実務という条件付きで介護支援専門員まで認めるという形の方が、利用者のとって適切な相談援助ができるだろうと思っている。
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