我が国においては、団塊の世代が全て75 歳以上となり、医療ニーズを併せ持つ要介護者の増大が見込まれる 2025 年(平成 37 年)に向けて、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される「地域包括ケアシステム」を構築していくことが喫緊の課題であるとされている。
そのため2012年度と同様に、2015年度も介護保険制度改正と介護報酬改定がセットで行われる。その内容は、特に介護報酬については厳しいマイナス報酬となり、事業運営に苦心する事業者が増えることが予測されている。
しかし我々は社会貢献を目的とする、社会福祉の担い手であるという矜持(きょうじ)を忘れてはならないと思う。厳しい経営の中で、利用者の暮らしをきちんと支える責任を忘れてはならないと思う。安定した事業運営がそこでは必要で、健全なサービスを提供するためには、必要な収益が上がるように運営視点が求められるが、それは決して利用者の暮らしを無視するものであってはならないし、利用者を札束としか見ないような運営であってはならないと思う。
建国記念の日である2/11(水)の祝日前日の夜に、恵庭市に於いて、仕事を終えたばかりの介護支援専門員のにみなさんはじめ、たくさんの関係者がお集まりいただいた中で、「介護保険制度改正に向けて〜居宅介護支援専門員に求められること〜」というテーマで講演を行った。貴重な時間を割いて集まっていただいた皆様に価値ある情報提供ができたろうか。
地域包括ケアシステムの強化という言葉で表されている我が国の介護保険制度では、介護支援専門員の役割がより重要になってくる。
地域包括ケアシステムの構築が急がれている背景には、団塊の世代が全て 75 歳以上となり、医療ニーズを併せ持つ要介護者の増大が見込まれる 2025 年に向けて、保険料と公費で支えられている介護保険制度の持続可能性を高めるために、限りある財源を必要な部分に効率的に投入するという意味がある。その中で医療と介護が役割分担し、連携を強化するという意味は、2014年度の診療報酬改定において、医療機関の病床区分を再編し、入院期間の短縮を図り、在宅復帰機能を強化したという流れの川下に、次期介護保険制度改正が位置し、介護においても在宅生活の限界点を更に高め、要介護度の高い高齢者が在宅生活を続けるための支援を強化するという意味だ。
地域包括ケアシステムとは、財源削減論と一体的に考えられるシステムなのだから、在宅生活の限界点を更に高めるという意味は、インフォーマル支援の限界点を高めるという意味も含まれ、軽介護者(要支援者含む)については、できるだけ公費をかけずに、自己責任という名の自助を求めていくシステムでもある。つまり地域包括ケアシステムとは、少子高齢社会において十分な財源確保が難しい時代において、必要最低限のサービスを担保するというシステムでしかないのである。
それは、国がすべての介護ニーズに対応する財源を確保することは不可能なので、地方自治体に一定の財源と権限を与え、その限られた財源の中で、地方自治体ごとに知恵を絞って最低限のセーフティネットを構築することを促すシステムである。よって地域格差は確実に生じるだろうし、限られた財源であるがゆえに、そのシステムの恩恵を受けることができない住民も増えるのである。
そうであるがゆえに介護支援専門員には、ケアプランを立てるだけではなく、総合的ケアマネジメントの延長線上に、ソーシャルアクションを見据えた活動を行う人であってほしいと願う。今後の介護支援専門員に求められる重要な役割とは、地域包括ケアシステムの実情を理解し、そこからこぼれ落ちる地域住民がいないのかを監視し、こぼれ落ちたニーズに迅速に対応することである。恵庭講演では、制度改正内容の説明に軸足を置くあまりに、このメッセージが十分伝えきれなかったのではないかと反省しているところである。だから今日のブログ記事で、そのことをあらためて書いているところである。
できるだけお金をかけないシステムの中で、零れ落ちた住民ニーズを、不必要な介護ニーズと決めつけない視点が介護支援専門員には求められ、利用者視点からの代言機能がより強く求められるだろう。例えば、法制化される地域ケア会議を、行政によるケアプランチェックの場と勘違いせず、行政機関と一体となって個別課題の検討を積み重ね、地域課題を抽出し、その課題を解決する社会資源を構築するソーシャルアクションにつなげていく役割も必要になってくるだろう。
地域包括ケアシステムによって、要介護高齢者は地域の中で手厚く支援されるという幻想を持たず、システム上の瑕疵をみつけ、その修正のためのアクションが介護支援専門員には求められていくだろう。
どうぞその視点を忘れないでほしい。「利用者本意」という言葉を単なるお題目にしないで、事実にする介護支援専門員であってほしいと思う。
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