4月からの介護報酬大減算は、一方では利用者の1割負担が減るという意味である。しかし実際に利用者負担額が今より低額になるかというと必ずしもそうではない。特に既存型施設の多床室利用者の多くが、この改正によって負担額が増えることを知っておいてほしい。
下記は4月以降の特養(既存型)多床室の介護報酬である。

このように4月に大幅な減算を強いられた後、8月にさらに一律47単位の報酬が削られる。しかし4月の減額と、8月の減額はまったく意味が異なるものであるという理解が必要だ。
4月は純粋に報酬削減であり、施設の収入が一人につき示された数字分だけ減らされるというもので、その額は要介護状態区分ごとに、40単位〜51単位の幅がある。これは施設にとって運営を厳しくさせる大幅減算である。この分は利用者負担も減り、ひとり40円/日〜51円/日の自己負担減となる。
しかし8月の変更は、施設に入る収入を減らすための減額ではなく、7月まで自己負担のなかった特養の多床室の室料相当(いわゆる居住費:ショートステイの場合の滞在費)を利用者自己負担として、その分介護給付費を減らすものである。その額が47単位である。
特養の多床室については、これまで住環境面を考慮し、居住費負担はなく光熱水費分として約1万円/月のみの自己負担であったが、これを変更し部屋代も自己負担にするということになった。そのため8月以降470円/日の自己負担額が増えることになるので、4月に減額した額より自己負担は419円〜430円の負担増ということになる。しかしこの費用は減免対象者は塩負担増とせず、特定施設入所者サービス費(補足給付)から支給することになり、自己負担が増加するのは減免のされない第4段階の対象者のみとなる。そのため補足給付の基準額を変更する必要があり、補足給付の対象期間8月〜翌年7月に合せて改正を行う必要があるために、実施時期が8月にずれ込んでいるのだと思われる。(負担段階を決定する所得は住民税で用いられる前年度所得データであるため、6月頃まで確定できず、対象期間を8月〜としているため。)
※平成 27年度介護報酬改定の概要(案)52頁『現行の光熱水費相当分に加え、室料相当分の負担を居住費として求める。ただし、「低所得者を支える多床室」との指摘もあることを踏まえ、低所得者に配慮する観点から、利用者負担第1段階から第3段階までの者については、補足給付を支給することにより、利用者負担を増加させないこととする。(短期入所生活介護についても同様の見直しを行う。)』とされている。
これは在宅生活を送る人々が居住費を負担していることとの不均衡を是正するという理由から設けられたルールであるが、今回の変更は特養の既存型多床室利用の方のみに適用されるもので、老健の多床室利用者については適用にならないルールである。
その理由について国は、「特養は事実上の生活の場として選択されており、入所者の平均在所期間は、約4年となっており、他の介護保険施設と比べて長くなっている。加えて退所者の60%以上が死亡を理由として退所している。このため自宅と変わりなく、家賃相当分を負担しないことで、在宅で生活する方との負担の不均衡が生じている。一方で老健は滞在期間も短く、死亡退所も少ないことから生活の場とは言えないから、多床室の居住費負担をしないことは、在宅者と比べて不均衡とは言えない。」としている。
(※介護療養型医療施設も終の棲家となっていると思うが、それが対象から外れている理由は明らかにされていない。)
ただし(第1段階を除く)特養・老健・療養型の多床室利用者は、4月から共通して増える費用がある。下記をご覧いただきたい。

この表でβで示された費用は、前述して現在負担している多床室の光熱水費分について、平成25年の家計調査の結果、現在の設定を上回る11.215円という結果をうけて(設定時は、9.490円であった。)自己負担標準額の上限の引き上げが必要とされたためで、50円/日の金額の上乗せが行われるものである。
このように4月から1割負担が減っても実際の負担金は減額にならないだけではなく、8月からさらに自己負担が増える人がいるというということになる。そのことに不満を抱かないように、施設の担当者は、丁寧な説明をする必要があるだろう。
なおこの50円/日については、施設収入の上乗せ費用であり、減算で厳しい施設にとっては大切な増額財源ではある。
利用者が混乱しないように、懇切丁寧な説明が必要で、そのための準備も今からしていく必要があるだろう。
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第4段階だけではなく、第2・3段階の方にも自己負担増加となるのでは?
特養多床室の標準費用額840円。第2・3段階の自己負担額370円と読めます。
老健多床室は標準費用額370円。第2・3段階の自己負担額も370円。
関数化してるのは今後の変更への根拠にするためでしょう。