一昨日に引き続いてサ高住について考えてみたい。

建設補助金等が優遇され、地域包括ケアシステムの一翼を担う「住まい」として創設されたサービス付き高齢者向け住宅は、国の普及促進の施策と相まって、順調にその数を増やしてきた。

しかし同時のそのことは、一部地域における居住者確保の過当競争という現象を生んでいる。

北海道でも都市部では、サ高住の数は月単位で見ても増え続けているように思われるが、建設されたサ高住の部屋が埋まらずに、空き部屋を多く抱えて経営状態が悪化している事業者もあると聞く。建設間もないサ高住の「身売り」という噂話も耳にする。

もともとサ高住は、「暮らしとケア」が分離しているのが特徴で、それが分離されているからこそ、利用者の暮らし・利用者ニーズに合わせたサービス提供がされるというのがうたい文句であった。

これに対して特養などの介護施設は、「暮らしとケア」が分離しておらず暮らしの場で介護サービスが一体的に提供されるために、施設側の都合が優先され、利用者ニーズを無視した集団的ケアが中心となっていると批判され、「サ高住」のケアの品質はそれよりも上であると指摘する向きもあった。

しかし実際には、「暮らしとケア」が分離されていると言っても、8割以上のサ高住が、併設の介護サービス事業所を持ち、併設事業所のサービスを受けることを入居要件にしていることも多い。その結果、暮らしに合わせたサービスよりも、巡回の都合に合わせたサービスが優先され、利用者にとって選択制のないサービスを受けるケースが増大している。このように「暮らしとケアの分離」という言葉が事業者の都合の良いように使われ、利用者中心の暮らしが画餅に帰しているケースが多くなっているのである。

こうした状況を考えると特養は、「暮らしとケア」が一体的に提供されるからこそ、最期の瞬間まで専門職が安心・安楽の看取り介護支援を行うことができる体制も作れるわけで、暮らしとケアの分離が必ずしもデメリットにはならいことをアピールする必要がある。同時に「地域包括ケアシステムに潜む盲点」で指摘しているような問題もあることを考慮に入れたうえで、それを経営戦略に取り込んでいくべきだ。

なぜなら一部の地域では、特養とサ高住の顧客確保競争が行われ、特養の空床が増えて経営状態が悪化しているという現象が起きているからである。補足給付の見直しにより、特養入所に減額メリットのある利用者が減る中で、特養が選択されるためには、「暮らしとケアの一体化のメリット」を前面に示して、入所から看取り介護までの質の高いサービスを創っていくしかないのだと思う。

そんな中で、空き部屋が埋まらないサ高住では、収益率を揚げるために、あるいは空き部屋を生活保護受給者で埋めるために、一昨日の記事で指摘したような「囲い込みモデル」、「貧困ビジネス」がふえているわけであり、これに対して、介護報酬改定ではサ高住に架けていたはしごを外すような減額ルールが導入されたわけである。

つまりサ高住のこの3年間は、自らの首を絞めるようなサービス提供モデルを少なからず作ってきたという評価ができるわけで、ここの反省と変革が求められるであろう。

しかし今後のサ高住のサービス展開は必ずしも暗いとは言えない。「医療制度改革の流れの中での地域包括ケアシステム の影響」で指摘したように、国の施策はできるだけ医療機関での入院期間を短くして、在宅に戻そうとするものだ。この時に受け皿としてサ高住の必要性は、さらに増すだろう。

特養の入所要件が、原則要介護3以上になったことも追い風になりこそすれ逆風にはならない。

その中で地域住民から選ばれるサ高住のあり方を、外部サービスの利用方法とセットで考えていく経営戦略が求められるのではないだろうか。「囲い込みモデル」や「貧困モデル」が一時的に利用者確保・収益確保につながったとしても、それは多くの批判の対象となり、製薬と制限の元凶になるであろうことを考えた場合、長期的にはそれはサ高住の経営の圧迫要因にしかならない。

住み慣れた地域社会の中で、身体状況や精神状況等を考慮したニーズに応じた住み替えが推奨され、実際に住み替えが必要になる人が増える社会なのである。そうであればサ高住は、もっと積極的に住み替え場所としてアピールしたほうが良い。住み替えることのメリットを前面に押し出したほうが良い。

そうであるがゆえに本当の意味で選択されるサ高住という経営視点と戦略が求められているのではないだろうか。

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