昨年国会を通過した介護保険制度改正に関連する法案は、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための整備に関する法律案」という形で審議され法律となったものである。
ここではなんと19の法律を一括処理している。数多くの法律を時間をかけずに承認を得る方法として一括処理という方法を取ったのだろうが、そうであるがゆえに、一つ一つの法律が十分精査されたのかという疑問が残る。
特に実際にこの法案に賛成した国会議員が、その中身をどれだけ知っていたかは大きな疑問だ。とにもかくにも「地域包括ケアシステム」の構築のための法案だということだけで、地域包括ケアシステムの中身もよく理解しないまま、一括して法案を通した感は否めない。
ところで介護報酬は制度創設時の関係者合意により、3年に一度の改定となっている。一方で診療報酬は2年に一度の改定とされているため、介護報酬より早いサイクルで改定が行われる。このため診療報酬改定の中に、より速く国の施策が影響し、その先に介護報酬の改訂があるという流れになる傾向にある。
そうであるがゆえに、今年4月からの介護保険制度改正や介護報酬改定には、昨年4月の診療報酬の改定が強く影響してきていると言えるだろう。
つまり医療制度改革の流れの中での介護保険制度改革という意味で、給付の重点化・効率化に向けた制度改革とは、入院から、できるだけ早く家に戻ってもらうという流れが強化された医療制度改革の流れの中で、在宅重中度の要介護者等に重点的に費用をかけようとするものであり、そのための地域包括ケアシステムの構築という姿が見えてくるのである。よって地域包括ケアシステムが、「ニーズに応じた住宅が提供されることを基本とした上で、生活上の安全・安心・健康を確保するために、医療や介護のみな らず、福祉サービスを含めた様々な生活支援サービスが日常生活の場(日常 生活圏域)で適切に提供できるような地域での体制」というふうに、住まいの確保を前面に出した概念変更が行われた意味も、診療報酬が在宅復帰を推進する流れで再構築されたという先にあるものだということが見えてくる。
特に昨年4月の診療報酬改定では、急性期病棟の条件が厳格化され、亜急性期病棟が廃止され、地域包括ケア病棟が新設され、さらに療養病棟の在宅復帰加算も設けられたというふうに、在宅復帰率が報酬算定の大きな要素になっているという点に注目する必要があるだろう。国資料の下記のイメージ図を参照いただきたい。

いわゆる7:1病棟等の高度急性期病棟については、自宅等退院患者割合が導入され、その割合が75%以上が求められるわけである。
また亜急性期病棟に替わる、「地域包括ケア病棟」でも、自宅等退院患者割合は70%以上が求められ、療養病棟でも在宅復帰率に関する加算を算定する際には、自宅等退院患者割合は50%以上が求められわけである。また地域包括ケア病棟の入院日数は最長で60日と、亜急性期病棟の90日より短縮されているのだから、入院患者は早期退院が求められるわけである。
自宅等退院患者割合に該当するの退院先は、次のように示されている。
・自宅
・回復期リハビリテーション病棟入院料
・地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料)
・療養病棟(在宅復帰機能強化加算の届出病棟に限る)
・居住系介護施設等
・介護老人保健施設(いわゆる在宅強化型老健施設、在宅復帰・在宅療養支援機能加算の届出施設に限る)
特養は「居住系介護施設」であるから、地域包括ケア病棟から特養に入所した場合も、在宅復帰率の計算に含むことは可能になるわけである。しかし前述したように、急性期病棟から地域包括ケア病棟を経て、(さらに在宅復帰機能強化加算を届け出た療養病棟を経る場合も考えられる)特養に入所するというケースも増えてくるわけで、そうした方々の維持期の機能訓練のあり方を再度考えていく必要があるかもしれない。
自宅やサービス付き高齢者向け住宅に戻るケースも、今までより短い入院期間での在宅復帰という面を考えれば、そこで介護サービスを受けるため居宅サービス計画を立案する介護支援専門員には、必要な医療や看護を適切に結びつけるための専門知識が、より求められるであろう。
それにしてもこれらの一連の流れを見ると、このシステムを支えるには、有能なセラピストの存在が今以上に必要とされるように思え、セラピストの人材確保の問題が、今後表面化してくるように思う。
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