4月からの報酬改定では、厳しい減額の嵐が吹き荒れる中、小規模多機能型居宅介護に看取り介護加算の算定を新たに認めるほか、特養と特定施設、認知症対応型共同生活介護の看取り介護加算は増額の方針が示されている。

特養の報酬は削減されるなかで、看取り介護加算は若干増えることになるが、経営的にみるとそれは報酬減を補うようなものにはならない。しかし国の考える施設機能の強化という面からみれば、それは確実に算定していかねばならないものである。

算定についての要件案では、あらたに看取り介護の体制構築と強化に向けたPDCAサイクルが示されている。

PDSAサイクル
この図の赤字でアンダーラインが記された部分が、新たに求められる項目になるわけである。(それ以外は現在の算定要件に入っており、加算算定施設の場合は、すでに実施されているという意味。)

このうち、家族への悲嘆感の支援は、ソーシャルワーカーの責務に含まれる部分であり、実際にはそのことを配慮した看取り介護支援が行われているのが当然だと考える。利用者又はその家族への情報提供は、単なる説明ではなく新たな情報提供ツールを使った文書による情報提供が必要とされるのだから、これは各施設で、入所者の日々の変化の記録とともに新規作成する必要がるだろう。

これについては日々の変化の記録を複写して手渡すという方法であってもよいように思う。それが一番利用者の家族が求めている情報ではないだろうか。

そのほかに肝となるのは、「看取り後のケアカンファレンス」であろう。これはいわゆるデスカンファレンスであり、当施設では「看取り介護終了後カンファレンス」と称し、すべての看取り介護のケースについて事後評価を行うために開催している。

このカンファレンスを開催するに当たっては、当該ケースの状況がどうような経過をたどり、何が良くて、何が課題として残ったのかを、各セクションが事前に評価した内容を、コンピューターの共有ファイルに記録し、その内容がカンファレンスで話し合われる。この際には必ず、遺族となった家族等の意見を聴くことが重要で、会議への直接参加、もしくはアンケートへの記入という方法で、利用者の死後に感じた様々な意見を取り入れている。

そしてこのカンファレンスでの話し合いの中で、職員のストレスも明らかにすることを心がければよいのではないだろうか。そうして明らかにされたストレスに対して、カンファレンスの中でどう考え、どう対応すべきかを話し合い、ストレスを感じた個人の意見に十分耳を傾け、心理的支持を与えることが精神的支援につながっていくと考えられる。そして議事録の中に精神的負担の部分を記載しておき、その対策を示すことで、職員の精神的負担の把握と支援にもつながっていくだろう。

こうした内容を含めて、看取り介護の個々の評価ができておれば、それらのケースの中からどれかを取り上げて、地域の中で事例報告をすることも可能になるし、啓発活動にもつながっていくだろう。現に当施設では、看取り介護終了後カンファレンスで抽出された課題を、一つ一つ克服することが「あきらめない介護」の原点であるとして、カンファレンスの方法や、カンファレンスで評価されたケース発表などを、地域の老人福祉施設研修大会などで、職員が報告発表している。

このようにPDSAサイクル構築のスタートは、看取り介護終了後のカンファレンスをどのように開催するのかということが重要になるのではないだろうか。(参照:緑風園の看取り介護システム

このカンファレンスは、当施設ではトップダウンで実施することを決めて、自由に意見を出し合って、結果の批判のためではなく、今後につなげるための方法論を見つけるための話し合いという方向に発展してきた。その経緯については僕の著書、「人を語らずして介護を語るな2〜傍らにいることが許される者」の18ページ「傍らにいることが許される者であるために」に詳しく書いているので、興味のある方はそちらを参照していただきたい。

どちらにしても今後の特養は、PDCAサイクルを構築して、看取り介護を実践しながら、最期まで安心して過ごすことができる終生施設としての機能をより強く求められるのであり、それは社会的な要請ともいえ、その実践にたえうるように、職員の資質を向上させた体制づくりが求められるであろう。

それはすでに特養が、看取り介護ができるかどうかを問われているというより、看取り介護だできなければ特養の看板をおろさねばならなというほどの状況下で、その質がますます問われていくということではないだろうか。

今後は、デスカンファレンスの実施方法などを含めたPDCAサイクルの視点を盛り込んだ、「看取り介護研修」が全国各地で求められるのではないか。僕も3月に秋田で、11月には札幌で、看取り介護研修講師を務める予定があるが、新たにその内容を加えていきたいと思う。看取り介護講演をご希望の方は、是非ご相談いただきたい。

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