僕たちが勤務する介護施設や介護サービス事業所では、様々な形で「介護トラブル」が発生する。それは介護事故に起因するものだけではなく、ちょっとしたコミュニケーション不足から生ずる誤解や行き違いであったりする。しかしそれを放置しておくと、予想外に問題が大きくなって、場合によっては訴訟に発展するケースも少なくない。
僕たちはそうしたトラブルを防ぐために、日頃から利用者や家族、関係者等との円滑なコミュニケーションに努め、信頼関係を作るための努力を惜しまないようにしているわけであるが、それでもトラブルは発生するのが人の世の常である。そのときどうしたらよいのだろうか?
特に介護施設などでは、悪意はなくても介護事故が発生することがある。それがサービス提供側の過失である場合は、当然のことながら損害賠償責任が発生するのだろうが、過失のない事故である場合でも、当事者間できちんとした意思疎通ができないことで大きなトラブルになる例は多い。その時、その解決の手段として訴訟以外の方法はないのだろうか。こうした問題に有効なヒントを与えてくれる本を紹介したい。
東京都内で介護・福祉系法律事務所おかげさまを経営している、外岡潤弁護士の「介護トラブル相談必携」が民事法研究会から発刊された。僭越ながら、その本のカバーに推薦の言葉を書かせていただいた。断っておくが、僕が推薦の言葉を書いた理由は、あくまで本書が介護サービス関係者にとって有益な情報と知識を与えてくれるものであると考えたからであって、何らかの利害関係に基づくものではない。(勿論、著者である外岡氏とは、かねてより知り合いの関係であったという前提があるのは当然のことである。)

皆さんは、「メディエーション」という言葉をご存じだろうか?一般的にはこの言葉はまだ馴染みの薄い言葉であろう。その意味はごく簡単にいえば、「介護トラブルを平和的に解決するための方法」であろうか。その意味理解も含めて本書を是非ご一読願いたい。著書名に張り付いたリンクから、本書の内容が読み取れるので、そちらも参照していただきたい。
外岡氏はご自身が立ち上げ主宰している、介護・福祉系トラブル専門のADR(裁判外紛争解決機関)「てるかいご」の活動を通して、対立関係に陥った利用者と事業者に対し和解のための話合いの場を提供し、調整人(メディエーター)が双方を仲介し対話を促進することで、裁判によらない柔軟かつ円満な紛争解決を目指しています。そこでは外岡氏自身が、調整人(メディエーター)として介入しているが、その活動はすべて無償のボランティア活動である。(てるかいごの活動については、過去記事介護福祉系弁護士・外岡潤さんがやろうとしていること。を参照していただきたい。)
俗人の僕が考えると、この活動に行うことによって弁護士を依頼する顧客が減るような気もするが、そういうことを一切顧みず、社会のための奉仕活動を継続している点がすごいと思う。
張り付いた文字リンクから、本書の主要内容を見てもらえばわかるが、ここでは介護施設での転倒事故など、実際のケースが数多く取り上げられており、メディエーションの解説にとどまらず、メディエーションや訴訟につながらないようにするためにはどうしたらよいのかという考え方も示されている。僕は推薦の言葉に「介護関係者必読書」と書いたが、それは粉飾のない心からの言葉である。
僕と外岡氏の関係についてご紹介しておきたい。現在僕が連載コーナーを持っている、ヒューマンヘルスケアシステム社の、「シニアコミュニティ」という雑誌に、外岡氏も「弁護士直伝!介護トラブル解決塾 おかげさまです外岡です」という連載をされておられる。

シニアコミュニティ2015年1・2月号の目次。連載コーナーは僕と外岡さんのほかに、当施設の看取り介護を紹介する記事を書いてくれたこともある介護ジャーナリストの甘利てる代さんや、切れ味鋭いレポートで問題点を抉り出すジャーナリストの藤ケ谷明子さんなどが名を連ねている。
参照:「藤ケ谷明子さんの切れ味」
こうしたことが縁となって、僕が同社から後にシリーズ化された著作本の第1作となった、「人を語らずして介護を語るな〜masaの介護福祉情報裏板」の出版記念シンポジウム(平成23年6月・東京都港区芝・女性就業支援センター)に外岡氏が駆けつけてくださってお逢いしたのが最初の出会いである。
以来、様々な形で情報やアドバイスをいただいており、このブログでもその情報の一部を紹介している。例えば2013年1月に書いた、『「疑惑のグループホーム」を視聴して。』は、外岡氏の活動が2012年12月26日のフジテレビ・スーパーニュースで特集として取り上げられたものである。
こうした関係から、今回外岡氏が本書を出版するにあたって、事前にゲラを読ませてもらう機会を得て、推薦文を書かせていただいたものである。僕も現在、この本を熟読して、あらためて勉強している最中である。
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