今月は金沢、大阪、京都での3講演を予定している。
このうち大阪市老連主催の講演は、「介護保険制度改正」について解説する120分講演であるが、こちらは申し込み受付開始の初日に、受講定員に達してしまい、以後すべての人の申し込みをお断りしているそうである。
講演内容はまだまとめていない。この時期であるから、「制度改正」と言ってもそれは、「報酬改定」を無視した内容にはできないので、ぎりぎりまで講義内容を決められないでいる。120分で制度改正と報酬改定の内容をすべて話すことは不可能なので、受講予定者の所属事業等の属性を見ながら、話す内容を絞り込んでいる最中である。
報酬改定率について、あまり話題になっていないので、あえて指摘しておくと、今回の報酬改訂では、報酬等級地域区分を現在の5段階から7段階に細分化し、1級地の加算率を20%に増やし、その他に属する地域については、現行(見直し前の地域区分)の費用額で除して影響を算出すると約0.7%マイナスとなるという考え方が示されている。大多数の事業者が属する「その他」地域は、最初からこの分のマイナスベースから始まるわけで、それに加えたマイナス改訂で、その他の地域に属する特養や通所介護事業者は大きな打撃を受けると言ってよいだろう。
制度改正・報酬改定については2月にも京都や福岡で講演を行う予定である。厳しい状況を愚痴るだけではどうしようもないので、今回の制度始まって以来の大改正の意味、そこで構築が目指された地域包括ケアシステムの実態と課題、報酬算定上注意すべき点、(実際にあるのかどうかわからないが)厳しい時代の経営戦略に関する部分について、自分なりの解釈を示そうと思う。
ところで今月の京都講演は、制度や報酬の問題とは全くお隣「施設ケアマネジャーに求められる仕事力、期待される役割」でという施設ケアマネ実務に関するテーマである。
この講演は、京都府介護支援専門員会さん主催であり、同会には平成25年の3月に初めて講演依頼を受けてから3年連続でご招待を受けている。前回は「看取り介護における介護支援専門員の役割」についてお話しし、前々回は「施設サービス計画の作成の視点」を法令ルールに沿ってお話ししているので、今回はそれらとは少し異なり、施設ケアマネジメントに必要な視点、アセスメントしなければならないことについて、より具体的にお話ししようと思う。120分なので、作成に関する法令ルールにはあまり触れることはできないと思うが、一昨年講演受講した方が、再受講しても同じ内容ではないので問題ないと思う。
その前に、今年最初の講演となるのは石川県金沢市講演である。石川県は僕がまだ云ったことがない県の一つで、初訪問であり楽しみにしている。今回は石川県老人福祉施設協議会主催の生活相談員研修会の中で、「生活相談員の役割と実務」をテーマにお話しする。受講対象者は、特養・通所介護・特定施設・認知症対応型共同生活介護等の相談員の皆さんである。
京都の「施設介護支援専門員」向け研修と同様に、相談援助職に求められる視点をお話しすることになるが、両研修に共通しているのは、施設サービスの中で、介護支援専門員と相談員の棲み分けがわからないという問題である。それぞれの仕事の区分はどうするのか、連携をどのようにとるのかという問題について悩んでいる人が多く、特に介護支援専門員の資格を持っていない相談員の場合、自分の専門性はどのように発揮すべきなのかという部分で悩んでいる人が多い。
しかし介護支援専門員も相談員も、ソーシャルワーカーであり、社会福祉援助技術を酷使して、利用者の生活課題を克服する際の「頭脳」の役割を持つことに変わりはない。よって基本部分で両者の区分は不可能である、というのが僕の立場である。ただし介護支援専門員の場合は、実務5年以上を経て(この実務が相談援助の実務に限っていないことが問題の本質として存在するのであるが、そのことはまた別の機会に論ずるとする。)資格試験に合格してその職務に就くことができるものであり、相談援助職の中で、ケアマネジメント技術についてはスペシャリストとしての訓練を受け、技術を獲得とした者と位置づけられ、相談援助症の中でのリーダー役と、スーパーバイザーの役割を担うことができる人材と考えるべきであると思う。
逆に言えば、介護支援専門員の資格を取得したとしても、そういう役割を担えないのであれば、あえてそういう人を介護支援専門員として任命する必要性はないとも考えている。(これはあくまで個人的な考え)
そもそもケアマネジメントは、社会福祉援助技術では「関連援助技術」にふくまれるものであり、相談員であれは当然ケアマネジメントを展開できる技術を持っている必要があり、何もその技術は介護支援専門員の専売特許ではないのである。
ただし介護保険制度の中では、老企43号解釈通知で、特養の施設サービス計画の作成について、「作成に関する業務の主要な過程を計画担当介護支援専門員に担当させる」とされ、「計画担当介護支援専門員は、解決すべき問題の把握(以下「アセスメント」という。)に当たっては、必ず入所者及びその家族に面接して行なわなければならない。」と規定されている。さらに省令39号で、サービス担当者会議開催や照会、計画書の説明同意も施設介護支援専門員の役割としており、」この部分は資格のないものが同等の業務を担えることにはなっていない。ここには注意が必要である。
同時にこのことを、「施設サービス計画を作成することが、施設介護支援専門員の仕事である」と限定的に考えてしまうことで、本来ソーシャルワーカーであるはずの介護支援専門員が、ケアプランナーで終わってしまい、利用者の暮らしぶりをよくしないという結果に終わってしまう場合があるのだ。
そういう意味で、他職種との兼務が認められ、他職種と兼務しても常勤専従規定から外れないとされる介護支援専門員であるが、事実上その機能を発揮し、ケアプランナーではなく、ソーシャルワーカーとして機能するためには、相談員との兼務はあり得ても、それ以外の職種との兼務は不可能だし、好ましくないという点をかいつまんでお話しすることになるだろう。
これは金沢でも、京都でも、共通してお話しすることであり、それによって両者の関係性や立ち位置が見えることになって、さらに金沢では、そうであるがゆえに相談員として、どのような役割を持つのか、京都では介護支援専門員として、どのように相談援助職全体を束ねるのかというお話になると思う。
どちらにしても忘れてはならないことは、ソーシャルケースワークという仕事は、一括処理である制度のはざまで、影となった部分に光を届ける仕事だということだ。法律や制度を軽視することは許されないが、同時にそれは所詮人が作るものなのだから、すべての人に光を届ける完ぺきなものは存在しないという理解が大事だ。そこには必ず瑕疵(かし)が存在する。僕たちはそうした瑕疵をみつけて、修正のためのソーシャルアクションを展開していく責務があるのと同時に、瑕疵があるからと言ってあきらめないで、その中で、誰かが闇の中に沈んで見えない涙を流していないかを探り、そうした人々に光を届けるために手を差し伸べる使命があるのだ。この部分の矜持をしっかり胸に抱いて、日々の業務にあたっていただきたい。
金沢と京都の講演ファイルは、すでに完成していて、金沢分は事務局に送付しており、京都分は最終校正作業にかかっている。あとは当日を待って、移動中の天候が荒れないことを祈るのみである。
それでは金沢・大阪・京都の会場でお逢いする皆様、どうぞよろしくお願いします。
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