今週に入ってすぐの12/15(月)、報道機関各社は次期介護報酬について、政府が約3%(3.000億円)引き下げる方針を固めたと一斉に報道した。

削減の中身については、一律の削減ではなく、メリハリをつけて収支差率の高いサービスを削減するということであるから、厚労省の調査でその数字が高かった通所介護、特定施設、グループホーム、特養等が削減のターゲットになることが予測される。

それにしても介護給付費分科会の審議が終わっていない段階での新聞辞令である。なんのために専門部会の審議・議論があるのか・・。まさに専門部会は、単なるアリバイ作りの場に過ぎないという証である。

このことに関連して、全国老施協は12/16、関係国会議員247名に対し、介護報酬の削減反対と、処遇改善の拡充のための財源確保の要望書を提出するとともに、直接交渉にも入っている。

そして今日午後から行われる介護給付費分科会に先駆けて、12:30〜厚生労働省記者クラブで、全国老人福祉施設協議会と全国老人保健施設協会と日本慢性期医療協会との介護保険3施設団体・合同記者会見を行い、介護報酬引き下げについて、介護業界の総意として反対を表明する予定になっている。

そのことによって政府の削減方針なるものが変更されるかどうかはわからない。しかし手をこまねいているわけではないということは言えるだろうし、この部分では、全国老施協は頑張ってくれていると評価したいし、我々も現場でその運動を支えたいものである。それにしても、この厳しい状況で、全国老施協を支持母体にした力のある国会議員を失ったのは残念でならないし、同時に(裏事情があるにしても)全国老施協を支持母体にした国会議員をなぜもう一人作っておかなかったのかという点については、疑問と無念の思いが強くなる。小異を捨てて、介護を支える報酬を守り確保するという一点で、力を一つに結集してほしいものである。

勘違いしてほしくないのは、厚労省の介護事業経営実態調査の数字が、介護事業者の実態を表しているとは言えないということだ。そもそも厚労省の経営実態調査は諸団体の調査とずいぶん違いがあることを認識してほしい。あの数値が正しいと言える何ものもないのである。社会福祉法人の内部留保批判にしても、そこには現金をともなわない額面上の数値が積みあがっていることに留意が必要で、財務省予算執行調査で2500万円から5億円まで差があることが明らかになっている。この状況での一律の報酬削減は、法人経営に深刻なダメージを与えかねない。

特に今回の報酬改訂では、地域区分の再見直しが行われ、20%加算の地域ができるなどの影響で、加算率0%の「その他」に該当する地域は、報酬削減がない場合でも、0.7%減となるわけであり、これに加えての報酬削減は大きなダメージとなる。

そのような状況で、介護職員の報酬は1万円以上アップするという意味は、処遇改善加算はアップさせるという意味であろうが、事業経営が厳しくなるなか、この加算を全額算定して、介護職員だけの給与をアップさせるようとする事業所は、現行より少なくなるのではないか。処遇改善加算の対象とならない、看護職員、相談援助職員、給食関連職員、事務職員等を蚊帳の外に置いて、介護職員だけが給与改善されるということが可能なのだろうか?

事業経営に支障を来たす収入減の中では、あらゆる方法で経費削減が求められるであろうから、仮に給与が上がった事業者でも、その皺寄せは職員にもたらされ、様々な面で今より悪い状況が生まれると予測できる。例えば職員の教育にかける費用も削減が求められるだろうから、事業者負担での研修参加機会が減り、スキルアップに努めたいという動機付けを持つ職員は、自己負担で研修参加するという機会を増やさざるを得ないかもしれない。

そうすると給与が上がっても、しわ寄せにより支出が増えるという状況で、実質待遇は低下するという事態が生じかねない。

そうした状況では、スキルアップの動機づけを持つ職員の方が待遇低下し、そうした動機づけは生まれにくくなり、サービスの品質の低下することになっていくのではないかと懸念される。これは国としての損失なのである。

また現場の職員の絶対数は、募集しても必要数が集まらないことで少なくなり続けているが、応募する人間の側から見れば、処遇改善加算を算定して給与が一時的に高くなっている事業所であっても、事業経営自体が単年度赤字の自転車操業状態であることを知れば、自分の将来を考えるとそのような事業者の職員応募には怖くて応じられないということになるのは小学生でもわかる論理である。報酬を下げる中で、処遇改善加算だけを引き上げても人材確保にはつながらないという理由は、そういう意味なのである。

介護報酬の減額ということは、そういう意味でも、新たな人手不足の要因にしかならないのである。そのことを政府は真剣に考えてほしいと思う。

介護人材の確保は、事業経営と一体的なものである。処遇改善加算だけを手厚くすれば給与が上がって人材確保が容易になるという、短絡的で馬鹿げた考え方は、どこから出てくるのだろうか。介護事業を経営する側の視点、介護事業の人材募集に応ずる側の視点をきちんと持った政治家がいないということなのか?はなはだ疑問である。

国も政府も政治家も官僚も、もっとこの国の将来を担う介護サービスという面を真剣に考えてほしいものである。

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